第7話 『 迷宮砂漠を攻略せよ! 』
「……ここが〝迷宮砂漠〟か」
……俺は目の前に広がる赤い砂漠に圧倒された。
〝迷宮砂漠〟の砂は赤く、又灼熱の太陽によって熱せられた地面は陽炎を揺らめかせていた。
「その灼熱は体力を奪い、陽炎や蜃気楼によって旅人を惑わせ、多くの命を奪った死の砂漠です」
ギルドが丁寧に説明してくれる。
「更には魔獣〝人喰いワーム〟に〝鬼サソリ〟……とっても狂暴な魔物が生息しております」
……なるほど、そいつらはギルドに任せよう。
「〝人喰いワーム〟や〝鬼サソリ〟ほど強くはありませんがミノタウロスも油断は大敵です」
……そいつもギルドに任せよう。
「レッドスライムも生息していますが弱いです」
よしっ、そいつは俺に任せろ!
……そんなわけで俺とギルドは〝迷宮砂漠〟に一歩踏み入れた。
「……暑っ! 砂漠、暑っ!」
……〝迷宮砂漠〟は暑かった。それはもう死ぬほどに。
上は照りつける日射し、下は灼熱の砂、容赦なく俺とギルドに襲い掛かる。
「……大丈夫です……こうやって心頭滅却すれば……砂漠もまた涼し――……」
「おいっ、ギルド! 倒れるな、倒れると死ぬぞ!」
ギルドは〝迷宮砂漠〟の暑さに倒れた。
ギルドは俺よりもレベルは遥かに高いが肉体は女の子だ。しかも、無駄に暑苦しい魔女のマントでその身を包んでいる……そりゃあ暑いわけだ。
「……もう無理……暑いの無理……魔女のマント無理」
ギルドは魔女のマントを外して、四次元収納袋に仕舞った。
「……はうぅ、これで少しはましになったです」
「……」
……俺は魔女のマントを脱いだギルドを初めて見たのだ。
ギルドの格好は極めてエロスティックであった。
……漆黒の魔女装束の胸元は大胆に開いており、
……更に、背中も露出しており、
……留目に、チャイナドレスようなスカートのスリットから覗ける太股と腰。
「……………………エ」
俺は思わず膝を着き、青空を仰ぎ見た。
「……エ? 何ですか?」
一瞬の静寂。そして、一挙に解き放たれる――……。
「 エロスティック・ファイナル・エクスタシーーー……! 」
……俺の熱いパトス。
……おっぱい、万歳。
……鎖骨、万歳。
……太股、万歳。
――魔法少女、万歳……!
「……えっ?」
……当然ながら、ギルドは少し引いていた。
――ズザッ……! 何者かが砂漠を踏みつける音が聴こえた。
『――っ!』
俺とギルド、同時に音のする方へと視線を走らせた。
……そこには赤く、巨大なサソリ――〝鬼サソリ〟がいた。
「〝鬼サソリ〟……!」
俺は音よりも速くギルドの背後に回った。
「ダサっ! タツタさん、格好悪っ!」
ギルド、更にドン引き。
〝鬼サソリ〟がギルドに襲い掛かる。
俺はもの凄いバックステップで〝鬼サソリ〟から逃げ出した。
しかし、ギルドは動かない。
〝鬼サソリ〟がその凶悪な形をした鋏をギルドに叩きつけるべく、高く高く振り上げた。
「ギルドッ……!」
しかし、ギルドは動かない。
「……確かにタツタさんには〝鬼サソリ〟は危険だと言いました」
――ニコッ、ギルドが朗らかに笑んだ。
「でも、所詮はLv.40クラス」
〝鬼サソリ〟の凶悪な形をした鋏が勢いよく振り下ろされた。
「わたしと戦うにはあまりに力不足ですよ♪」
『――っ!』
〝鬼サソリ〟が自身の躯に起きた異常に気がつく。そう――……。
……振り下ろした筈の鋏が無くなっていたことに。
「さようなら、サソリさん」
ギルドは〝太陽の杖〟を〝鬼サソリ〟に向けた。
切 り 裂 く 閃 光
――一刀両断。光の斬撃が〝鬼サソリ〟の頭から尾までを真っ二つに引き裂いた。
「悪いけど、わたしが行かないといけない場所はもっと遥か先にあるから」
〝鬼サソリ〟が崩れ落ちる。
「こんなところで手こずっているわけにはいかないの」
ギルドが悲しげに呟いた。
「……ははっ……すげぇや」
俺は目の前で行われた戦闘に圧倒されていた。
「タツタさーん、もう敵は倒しましたから大丈夫ですよー♪」
ギルドが満面の笑みで俺に手を振った。
「おう」
俺もそんなギルドに手を振り返した。
「お疲れさ――」
「タツタさんっ……!」
――俺の背後から影が差した。
……目の前のギルドは酷く慌てていた。
……俺は背後を振り向いた。
「……嘘……だろ?」
……巨大な〝人喰いワーム〟がそこにはいた。
そして、それから一秒後。
「タツタさーんッッッ……!」
――バクッッッ、俺は〝人喰いワーム〟の巨大な口に呑み込まれた。