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第91話 『 王の交替 』
「 酷い有り様だな 」
……俺は既に原形を留めていない広い部屋を見渡し、そんな感想を呟いた。
〝氷水呼〟が〝氷龍天華〟を乱発したせいで部屋の中は荒れ果て、幾つかの氷の華が咲き乱れていた。
「……しかし、早計だったな」
結論を述べれば〝氷水呼〟は殺すべきではなかった。俺はこの宮殿の設計もわからないし、どこに〝クリスティア〟が居るのかもわからなかった。
「生かして、痛めつければよかったな」
とはいえ、死人は蘇らない。それは仕方の無いことだった。
まあ、この城内のどこかに居ることは間違いないだろう。ならば、歩くなり、〝氷水呼〟の部下を脅せばいずれか見つかる筈だ。
俺は玉座に背を向けて歩き出す。
――カツッ……。
……足音が聴こえた。
「……どうやら、向こうから来てくれたようだな」
耳を澄ませる。
……足音は二人、か。
俺は踵返して、玉座に座った。
「……今度は殺さないようにしないとな」
……俺はそう呟き、彼の人を待った。