第 3話 『 』
……世の中、目に見えなくても、ちゃんと存在しているものは沢山あります。
例えば、空気
例えば、心
例えば、小説のタイトル
それは見えないことが当たり前で、けっして、嘘つきだから見えないとか目が悪いから見えないとかの話ではありません。
ただ、それは最初から誰が見ても見えないのです。
――昔々あるところに、何も持たない空っぽな男がおりました。
男は何に持っていませんでした。
家族も、
恋人も、
友達も、
趣味も、
生きる意味も、
……何一つ持っていませんでした。
そんな男はある日、不思議な世界へ連れていかれてしまいます。
不思議な世界で男は勇者として冒険を始めました。
旅の途中で沢山の素敵な仲間と出逢います。
魔法使い、
妖精、
ガンマン、
召し使い、
盗賊、
大悪党、
……沢山の仲間と出逢い、男は空っぽではなくなりました。
仲間と共に過ごす時間は幸せで、心はいつも満ち足りていました。
それでも、旅は険しくて、仲間も一人また一人と死んでしまいます。
最初は妖精が、
続いてガンマンが、
その次は?
……男はとても悲しみました。しかし、男は歩みを止めませんでした。
長い長い旅を経て、男の心はとても強くなっていたのだからです。
そんな男の旅もいよいよ終わりが近づいています。
男は目的を果たすことができるのでしょうか?
……その〝未来〟は誰にも見えません。しかし、いつか必ず訪れることでしょう。