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青春日記  作者: 小口袖
2/2

でぇと♡

取り敢えずその日はまた会う約束だけして帰宅した。

図書館でいきなり声をかけてきて驚いたものだったがどうやら同じクラスだそうだ。

僕は家に帰るとすぐに自室のベッドに横たわり、今日の事について記憶の整理を始めた。言えば寝てしまったのである。


7/25

かなり早く寝てしまったせいか真夜中に目が覚めてしまった。時刻はまだ0時を回ったばかりだ。

僕はふと思いつき枕元に置いてあったスマートフォンに手を伸ばす。例のアイツに電話でもかけてやろうと思ったのだ。

今日僕を必要以上に疲れさせてくれたのは考えるまでもなくアイツだし、ついでに言えばアイツが何も考えずに話しかけてきたせいで図書館の司書さんにも怒られた。結構親しみやすくお気に入りの司書だったので軽くショックだった。

だからこんな時間に電話するくらい罰は当たらんだろう。

という訳で僕は帰り際に(勝手に)登録された番号に電話をかける

3回コールが鳴って、彼女の声が耳に入る。

思った通り部屋で暇を持て余していたらしく、夏休みという事も手伝って僕達は2時間余りも意味の無い会話を続けた。

最初はこんな時間に迷惑だとかグチグチと言っていたが、少し経つとそんなこと忘れたように色々な話題を繰り広げてくれた。

そして僕達は、明日映画を見に行く約束をして通話を終えた。

確かに明日会う約束をしていたが、僕はてっきりまた彼女が図書館に来るものだと思っていた。

いくら僕に友達がいなくとも、常識くらいには知っており会って2日目にはハードルが高いと反対したのだが、こんな可愛い子にデートに誘われてるんだから即OKが当たり前という彼女の暴論に押し切られしぶしぶと映画に行くことを了承した。


7月25日 10︰25

朝早く、僕はけたたましい着信音にうなされていた。

昨日夜遅くまで話していたおかげで、携帯のディスプレイに表示される数字は待ち合わせへの遅刻を示していた。

無視し続けて帰られても困るのでしぶしぶ電話に出る。


「あっ!やっと出た。ねぇ今どこにいる!?まさか家じゃないよね!?私もう着いてるのに!女の子待たせるなんて君らしいけど流石に失礼だよ!」


矢継ぎ早にでる言葉に気圧されながらも、彼女の機嫌を直す言葉を瞬時に考える。


「可愛い女の子とデートできるのが楽しみでなかなか寝付けなかったんだよ」


「えっ、あの。えっと。そんな...あ、ごめん!ゆっくりでいいからね?それじゃあっ!」


そう言って電話は切れた。どうやら後で誤解を解かないといけないようだ。

結局、僕を待ってる間に誤魔化された事に気づいたようで、待ち合わせ場所に着いた時には少し不機嫌だったが、売店のソフトクリームでそれも直った。

その後僕らは手軽に昼食を済ませ、県内屈指の映画館へと向かった。

彼女がセレクトした映画は今大人気の恋愛もので、あまりそういうのに興味が無い僕も普通に楽しめた。彼女はというと、隣の座席で恥ずかしげもなく音を立てながら鼻をすすって大泣きしていた。

だが彼女にも多少の良識はあるらしく、僕の提案でカフェに入ると少し静かになった。

この店で一番安価なトーストを頼み、落ち着いてきたところで目の前でクラブサンドを頬張っていた彼女から話しかけてきた。


「ひみふぁあ、ひょへいふぁふぉおおもっふぁ?」


「口の中にあるものを飲み込んでから喋りなよ」


「君はあの映画どう思った!?」


なんか言い返してくるかと思ったが、案外素直に言う事を聞いたので僕も素直に受け答える。


「まぁ結構楽しめたよ。人気なだけあって代金分の面白みはあったんじゃない?まぁ面倒だしああいう恋をしたいとは思わないけど。そういう君は?」


「ふっふっふ、「言葉で表し切れるという事はそのものの本質を理解していないのである。」だよ!」


「君が言うとどんな言葉でも一気に重みを失うね。ところでそれ誰の言葉?」


「私!」

思いっきりのドヤ顔が少し癇に障った。


「偉人のフリをして自分の主張を押し付けるなんていい趣味してるね。」


「でしょ!私よくセンスいいって言われるんだ!」


「今のは僕の精一杯の嫌味だったんだけど、気づかなかった?」


「細かいことはどうだっていいの!私はセンスがいんぎゅ!!」


何を言っても無駄そうだったので、残っていたトーストを口に押し込んで無理矢理黙らせた。

そして彼女が食べ終わるのを待って僕らは店を出た。

帰り道に彼女がふとぼやいた。


「今日は楽しかったね~」


「まぁ。それなりに楽しかったんだろうね」


「もぉ~、君はどうしてそんな他人事みたいに言うのさ!」


「「自分を客観的に見る事が出来るなら、世界は極限まで広がるのである」だよ。」


「よく分かんないけど深いね!それ、誰の言葉?」


「僕。」

精一杯の返しに彼女は満足したようで、わっはっはと豪快に笑ってくれた。

半日ぶりの真っ白な家は、いつもより静かで寂しく感じた。


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