曰く竜を見よ
「ええと、そうですね・・・」
話のテンポが滞ってしまったのか、
青年は少し、躊躇いがちに話を再開した。
「村の人たちから聞いてみた、のですけど、
ここの氷竜は、主のようですね。主というのは、
便宜上、自分がそう使っているだけですけど。
要するに、ここの氷竜は」
がちゃ、と戸が開かれ、
副村長が両手に籠を抱えて戻ってきた。
テーブルの真ん中にある菓子受けをどかし、
それが中央に置かれた。
籠のなかに目をやる。
中には、金魚鉢の底を浅くしたような、
奇妙な、ガラス製らしき透明な器が置いてあった。
中には水が入っており、本当に小さな、
おたまじゃくしよりも小さい魚が
数匹泳いでいた。
明らかに不自然な行動ではあるが、
さぁ話を続けて、という雰囲気を
纏う二人に急かせれるように、
その籠の事には触れず、また話を
続けた。
「ええ、まぁあれです。
聞いた話や自分の体験からの推測で、
ここの氷竜はととどのつまり、
あまり自分の場所を動かないわけですね。
・・・大体の氷竜と呼ばれている竜達は、
獲物をとるためとか、縄張りを守ったりとか、
嫁候補を探すためとかで、結構飛び回っているわけです。
若い竜は特に。
それで、そういう中でも、強い奴とか、
頭がいいやつとかは、まぁもっと言えば、
凶暴であったり、狡猾だったりするやつですね。
そういう奴は、結界を張るんですよ。」
二人はぎょっと目を合わし、
すぐさま、籠に目を向けた。
籠は、籠の中の水は、揺れることなく
静かな水面を形どっていた。
中にいる魚も、ほとんど動いていないように見え、
そういう固まりであるかのようであった。




