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栄光に挑んだ兎
「私は」
彼女が独り言のように語った。
それは、実際に独り言だったのだろう、
あえて聞こえないように声を出しては
ないだけだ。
「元は、契約人だった。」
その時の私には意味がわからなかったが、
契約人とは、特殊な事情を負った者
(ほとんどが、その時の国民や村人全員である)
が契約により、国などからその存在を
認められた状態の事を言う。
奴隷に近いが、似て非なるものである。
また、どちらが恵まれているのか
という事については何とも言えない。
「魔力を放出出来ない事と、故郷を出る事と引き換えに
自由が保証された。」
点景として揺れる炎はゆったりと列をなす。
もしかしたら、街には入らず、一夜を明かすのかもしれない。
「端から見れば、非常に幸運だったんだろう。」
彼女は過程や前置きを飛ばす癖でもあるのかもしれない。
どのような境遇で、どのようなブロセスを経て、
何故そのような条件で、そうなったのか、など、
理解しないと、何とも言えない。さらには
世間知らずな私が拍車をかけて明瞭な理解の
障害となっているのだ。
「ただ、何も無くなったから」
声は更に小さくなった。
「取り戻したい」
それは、ケトとなる前を指すのか、
私と彼女が会う直前の事を指すのか。
皆目、見当はつかない。




