表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪談回廊  作者: 黒猫王クロネ
2/3

贈り物

あん? 何見てんだよ? お前は誰かって?

見て分かんだろ。サンタクロースだよ。


え? サンタは赤いコートに白い髭のおじいさんだって?

馬鹿言っちゃいけねえ。


赤いコートなんてファンキーな格好、誰がするかよ。

それになあ、プレゼントぎっしりな袋下げるなんて作業。若者の方が重宝されるに決まってんだろ。


スーツでびしっと決めて、スタイリッシュな黒コートを羽織る。

営業行くなら常識でしょ。


仕事かって? 当たり前だ。

誰がボランティアで、知らねえクソガキに自前でプレゼントしなきゃなんねえ?

給料はちゃんと、天界のお偉い様から、頂いてるよ。


神信仰のためだか何だか知んねえが――オレには関係ねえ。

公務員として、一定の給料もらえりゃそれでいいのさ。


それに、サンタの証拠が欲しいならほれ、ちゃんとトナカイのソリで空飛んでんだろ。


――さあて、そろそろラスト1つ。

これを届けりゃオレの仕事は終わりだ。


あん?


オレの目標の家の前で誰かがこっちを見てやがる。オレが見えるのか?

普通の人間には見えねえはずだが――たまにいるんだよな特殊な奴ってのは。


その、白髪の黒い学生服を着た――よくわからねえ少年は、オレに対して手招きをしてやがる。


妙に気になる奴だ。

オレは一旦、その少年のもとに降りることにした。


「おい。ガキが真夜中に何やってんだよ? 他の担当のサンタが困んだろうがよ」



そうオレが注意すると、白髪の少年は――いえ。ぼくはお願い事はしていません。最近不景気ですから――と、ませた事を言いやがる。


まあ、いい。それはいい。

だが、その後こいつなんて言いやがった?

『そのプレゼントは届けない方がいい』だあ?


何いってやがんだ。これは俺の仕事だ――さっさと終わらせて一杯やるんだよ。

オレは少年に対し言う。


「馬鹿言っちゃいけねえ。これはそこの家のガキが欲しがってるもんだ――サンタクロースとしちゃあ届けねえわけにはいかねえ」


それに対し白髪の少年は、せめて中身を教えてくれと言いだしやがった。


「残念だが教えられねえな――個人情報だからよ」




とは言ったものの。実は、義務付けられているプレゼントリストの確認をサボっているだけだが。


こうして、オレは少年を無視し仕事を終え自分の家に帰宅した。


――数日後

オレはサンタクロースの職を失っちまった。


どうやら、最後に届けたプレゼントが問題だったらしい。


オレがプレゼントリストの確認を怠ったのが指摘され、責任をとる羽目になっちまった。

お偉いさんが言うには、最後にプレゼントを届けたガキが犯罪を犯しそうになり、今は少年院にいるそうだ。

くそったれ。


あの、白髪の少年の言葉通りにしとけばよかったぜ。

それにしても――あのプレゼントの中身ってのはなんだったんだ?




◆   ◆


――クリスマスの数日前。


ぼくは、黒猫塚白猫。

ぼくは、学校の帰りにある男性に出会った。

その男の人は気怠そうに煙草を咥えながら、一軒の家を見ていた。


黒い髪。黒いズボンに黒いインナーシャツ。そして、白いカッターシャツを羽織り、上から3つ目のボタンを止め後は全開の格好をした――たれ目の男性。


成人してるかしてないかくらいの年齢だけど、煙草を吸っているのだから20歳前半なのだと思う。

見た感じ、特に超能力のような霊能力のような――特殊なものは一切感じられない。ごく普通の人間。


男性はぼくに気付き、声をかけてきた。


「えーと。なあ、少年――少年はいつもここを通るのかな?」


はい。そうですよ。とぼくは素直に答える。


「そうか。俺はここの家の子がちょっと気になっててね。情報を集めてるんだ。少年は何か知らないかな?」


いえ何も――とぼくは答えた。

どうかされたんですか。とぼくは男性に訊く。


「まあ、ね――」


男性はある推理を聞かせてくれた。


その推理は突拍子もなくて、複雑で、妄想だらけで、ぼくには全部理解できなかったけど――この家の子供が、近々人を殺そうとしていることが分かった。


「結局。この推理には遠距離で殺傷力のあるものがなければ成立しないんだけれどね。たとえば――拳銃のような」


と、男性は補足する。


「まあ、なんとかするさ」


そう言うと、男性は煙草を携帯灰皿に押し込み、その場から去って行った。

消えるように、幻想のように、想像のように――まるで、妄想のように――



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ