表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

逆ハーエンドのその後

大嫌いだと、ただ叫ぶことしか出来ない

作者: 黒井雛(空飛ぶひよこ別PN)

「私のこと、好きになった?」


 俺を面倒事に巻き込む度に、そう尋ねてくる糞女が、俺は大嫌いだった。


 乙女ゲームだか何だかしらねーが、たくさんの男をたぶらかすだけたぶらかして、面倒になったからと切り捨てようとする、最低女。

 自業自得の面倒ごとを、ゲームの隠れキャラだという、無関係な俺に押し付けようとまとわりついてくる、自己中女。


「――誰がてめぇなんか好きになるかっ!!」


 そんな性格悪ぃ女、好きになるはずがない。

 好きになるはずが、ねぇのに。


「……あぁ、やっぱり好きだな。そうやって私を拒絶してくれる君が、大好きだ」


 心底嬉しそうに、そう口にする糞女が、どうしようもなくむかついた。

 大嫌いだ。こんな性悪。

 なのになぜか、気が付けばいつも、糞女のことを考えてしまう。近寄れば、視線で追ってしまう。


 糞女は、たぶらかした奴らの執着の強さに日に日に窶れ、どこか壊れていった。

 自業自得だと嘲笑いだからも、放って置けなくて、俺の権力で何とかなるなら助けてやると手を差し伸べてやろうとした。

 しかし糞女はいつも、差し伸べた手をけして掴もうとはしない。


「―…なに、カイザーまで私のこと好きになっちゃった?いやん。モテる女は辛いね」


 茶化すようにふざけた返事を返す糞女に俺が苛立って、いつもそこで会話が終わる。

 真剣に心配してやっているのに、真面目に取り合わないことに腹がたったわけではない。

 ふざけたように笑う、糞女に隠しきれない脅えと拒絶が見てとれたから、腹がたった。

 俺のことを好きだとほざくこの女は、その癖俺が近付くことを嫌がる。好きだと言いながら、俺に好かれることを拒絶する。繭のような目に見えない防御膜を全身に纏い、けしてその核心に触れさせようとはしない。


 ――ふざけるな。

 どこまで人を心を弄べば、気が済むんだ、この糞女は。



 好きだとほざくなら、求めればいい


 全てを晒して、助けて欲しいと泣きついて俺にすがればいい。


 そうすれば、


 そうすれば、俺は――……





 糞女が、糞女に一番執着をしていた生徒会長と共に消えた時、堪らなく嫌な予感がした。

 単なる駆け落ちだと、糞女が会長を選んだのだと、必死に思い込もうとしたが、無理だった。

 俺は実家に頭を下げて、ありとあらゆる情報網を駆使して糞女を探した。


 会長が持つ、山奥の別荘。巧妙に入り口を隠す細工がされた、その地下牢に、糞女はいた。

 幸せそうに微笑み眠る会長の腕の中で、物を言わぬ骸になっていた。

 何かを求めるように、その右手を遠くに向かって伸ばしながら。

 俺はその場に屈みこんで、糞女の顔を覗きこむ。

 糞女の目蓋と、唇はうっすらと開いていた。指先で、そっとその死に目蓋を閉じる。

 その死に顔は、悲痛の表情を浮かべていたが、けして醜くはなかった。美しいとさえ思える、綺麗な顔だ。会長は心中に、苦痛を感じないような特殊な気体を用いたらしい。

 頬にはまだ乾ききっていない涙の跡が残っており、先刻まで糞女が生きていたのが、分かった。

 もっと早く駆けつけていれば、と思う反面、俺が駆けつけてくる時間ですら、恐らく会長の計算のうちだったのだろうとも思う。俺が、この場所を見つけたことを察知した上で、けして救助が間に合わないタイミングで事に及んだのだろう。確実に糞女を連れて逝けるように。天才と称された会長なら、そんなこと簡単だったはずだ。


 伸ばされていた、糞女の手を両手で握りしめる。

 握りしめた手は、まだ完全に冷たくなってはおらず、微かな熱が伝わってきた。

 まるで、ただ、眠っているだけみたいだ。少し揺らせば、目を醒ますんじゃねぇか。

 そして、目を醒ました糞女は、何でもないような顔で、いつものように俺に聞くのだろう。


『私のこと、好きになった?』と。




「――い、だ…」


 唇が、震えた。


「…っ大嫌いだよぉぉっ…てめぇなんか、大嫌いだよぉぉぉっっ!!!!!!」


 吼えるような叫びが、狭い地下牢の中、木霊する。

 視界が霞んで、何もかもが滲んで見える。



 大嫌いだ。



 大嫌いだ。



 俺を振り回すだけ振り回して、勝手に死にやがった、糞女が大嫌いだ。



 ――俺の心を連れて逝きやがった糞女が、殺してやりてぇくらい、大嫌いで仕方ねぇ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 最初はヒロインの自業自得だよなー、攻略者可哀そう…だったんですが、何というかそれぞれの葛藤とか想いとかが絡むと、単純に言い切れない。 どうにもならなくて悲しくて、心にズドンと響いた凄いお話で…
[良い点] 五作全て読みましたが、何回も読み返したくなるお話です。 私は、ヒロインがその中でも一番好きですね。彼女なりに深い罪悪感と三つ目の作品での共有は、本来というか普通の女の子ならきっと発狂して、…
[一言] うるってきました 中々興味深い作品でした
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ