家族で見る眺め
翌朝、高野一家は少し浮かれ気味の朝の時間を過ごし、クローバーランドへ向けて出発した。
車はいつもの町を通り抜け、ビルが立ち並ぶ都心に入った。近くを通るだけでワクワクするテレビ局、雲まで届きそうなくらい高いマンション。車窓から見えるそんな風景を、浩之は心を弾ませながら眺めていた。
クローバーランドに到着すると、浩之はすぐさま入り口で貰った最新のパンフレットを開いた。
「ダイナミックコースターがいい!」
浩之はパンフレットを開いてすぐ目についたダイナミックコースターに向かうことを決めた。
しかし、いざダイナミックコースターに着いてみると、そこには長蛇の列が浩之達を待っていた。ダイナミックコースターは今年完成したばかりのアトラクションなので人気が高いのだ。
「二時間待ちだって。どうする?」
係員の持つプラカードを見た延子が聞いた。
「ん~」
考え込む浩之と和彦。いくら人気のアトラクションとはいえ、二時間も待つとは予想していなかった。
「違うやつにしよう」
浩之は、まずは別の乗り物に乗っておいて、ダイナミックコースターが空いた時を狙う作戦に出た。
再びパンフレットを開く浩之。今まで何度かここに来た中で、一番並ばずに乗れたものを探す。
「これ!」
浩之が指差したのはファンシー観覧車。昔からある観覧車で、天辺から見る眺めは最高だ。
三人はファンシー観覧車の前までやってきた。思った通り、並んでいる人は少ない。
五分くらい並んでいると、浩之達の番がやってきた。浩之は、特に観覧車に乗りたいとは思っていなかったが、いざ乗り物に乗るとなると、自然と心が弾んでいた。
係員に誘導され、黄色のゴンドラへと乗り込む三人。
「ガチャ」
係員が扉にロックを掛けると、三人を乗せたゴンドラはゆっくりと上昇し始めた。
窓から見える地上の人達は、まるでフィギュアのように小さくなっていく。自然と気分が高揚していく三人。特に乗りたいとは思っていなかった観覧車、でも、そんなに悪いものでもない、浩之はそう思った。
三人を乗せたゴンドラが天辺まで到達すると、三人は窓にへばり付くようにして景色を眺めた。
都心のビル群の中にある、少し背の低い遊園地。それでもこの観覧車から見える景色は、都会にいることを忘れさせる。丁寧に整えられ、赤や黄色の美しい花々が園内を彩っている。たくさんの風船を両手に握っているマスコットキャラクターが見える。そして、先ほどまでフィギュアサイズに見えていた人達は、もう米粒になっていた。
家族三人で見たその光景を、浩之は心にしっかりと焼きつけた。
「観覧車もけっこう面白かったわね」
観覧車から降りた後、延子がニッコリ笑って言った。
「そうだね」
和彦も日ごろの疲れを癒す良い時間を過ごしたようだ。
「もうそろそろダイナミックコースターは空いたかな?」
浩之は和彦の顔を見上げた。
「まだなんじゃないか? パレードの最中が一番空くと思うよ」
「そうか~」
浩之は再びポケットからパンフレットを取り出した。
「ん~次は~・・・・」
「ちょっと待って、私トイレ行ってくるから」
延子は浩之と和彦を残し、トイレへ行ってしまった。
「そこで座って待ってようか?」
和彦が観覧車の傍のベンチを指差した。
「うん」
二人は三人掛けのベンチにゆったりと腰を掛けた。




