幸せだった家族
五日前の晩、父の和彦がご機嫌な様子で浩之と延子の待つ家に帰ってきた。
「浩、明日はクローバーランドに行くぞ!」
父の和彦は、家に帰るなり大声で浩之にそう伝えた。
浩之の家庭は浩之と和彦と延子の三人家族で、母の延子はスーパーで働いていて、父の和彦は一般の会社員だ。
「クローバーランド? やったー!」
突然素敵な週末になることが決定した浩之は、飛び上がって喜んだ。
クローバーランドとは、都心近くにある大きな遊園地のことで、週末となればたくさんの家族連れが訪れるスポットだ。でも遊園地なだけにお金がかかる。そのためクローバーランドに行くことができるのは二年に一度くらい。久しぶりにそこへ行くことが出来るとあって、浩之は大喜びなのである。
「じゃあ今夜は早く寝なくちゃね」
延子は浩之の部屋へと浩之の背中を押していった。
「クローバーランド! クローバーランド!」
部屋の中でジャンプをする浩之。その横で延子は浩之の布団を静かに敷いている。
「クローバーランド! クローバーランド!」
「はいはい、どいて」
ジャンプしながら布団の上に乗ってきた浩之に、嫌そうな顔をして延子が言った。
「クローバーランド! クローバーランド!」
浩之は、延子が布団を敷き終わるまで大声を出し続けた。
「いいから早く寝なさい」
「は~い」
浩之は言われるがまま布団に寝転がった。




