耳障り
窓の外から聞こえてくる子供達の笑い声。風に揺られたカーテンが壁に擦れる音。何という名前か知らない鳥の鳴き声。何時だかわからないけど聞こえる秒針の音。嫌でも聞こえてくるそれら全ての音が、浩之には耳ざわりだった。
「コンコン」
誰かがドアをノックする音が聞こえた。
「浩之、ママよ」
ドアをノックしたのは浩之の母親、延子だった。
ここは大きな病院の中にある、一つの病室。小学校三年生の高野浩之は、大きな怪我をしてここに入院している。寝返りを打つだけでも体に痛みが走るほどの怪我だ。
「あっちいってよ」
「そんなこと言わないで。せっかく浩が好きなアニメのCD持ってきてあげたんだから」
「いらないよそんなの!」
浩之は布団を頭まで被った。
「そう。じゃあここに置いておくから後で聴いてね」
延子はベッド脇にある小さなテーブルの上にCDを置いた。
「早く出てけよ!」
「はいはい、後でまた来るからね」
延子は愛情たっぷりの笑顔で浩之の顔を見た後、静かに病室から出ていった。浩之はドアが閉まった後、布団から顔を出した。
浩之の体に痛みが走るのは、骨が折れたりしているからではない。体の大部分の皮膚が爛れてしまっているからだ。何故浩之の体がこんなことになってしまったのか、その原因はある日の事件。