第9話:創造空間での出来事
学校案内が終わり教室に帰るなり優が近付いてくる、戻るまでの間に散々周りから嫉妬と興味の視線を感じまくってたのだが、それ以上に優が発するオーラは強かった。
「ねぇ翔。さっきの人。」
「優、俺そろそろ生徒会行くな。」
「ち、ちょっと、怒らないから聞きなさい!!」
「嫌だ!!」
「ふふっ、甘いわ。」
子供の様に駄々を捏ねて逃げようとする翔に対し、優は平然と回り込み笑みを深めた。
「逃げちゃダメ。」
優の右手に魔力が凝縮した球が生まれる。流石優、とても密度の高い魔力の塊です。
「翔に頼みがあるのよ、うふふ……。」
「…………。」
翔は悪寒と言うのはこういう物なのかな、と若くして感じる事になった。
その後、翔は澄と共に生徒会室に向かっていた。途中カズに生徒会長との関係とか聞かれたが…なんだかなぁ…。翔がそんな過ぎ去った平凡を懐かしく思っていると、隣にいた澄が溜息を吐いた。
「翔君がお姉ちゃんの事助けてくれたなんてね……でも、お姉ちゃんもいい加減に魔法具くらい携帯して欲しいなぁ……危ないわよ。」
「あー、家の爺さんも携帯電話くらい持って欲しいんだけどなぁ……。」
ハァ…と2人して溜息をつく。どうやら嫌な所が似てしまっているらしい。
「そう言えば、まだ翔君の番号教えてもらってなかったね?」
「ああ、んじゃ教えとくよ。」
翔は電話はあまり使わないが、まぁパートナーの番号くらい知っておいた方が良いだろう。
「うん、それじゃあ私のはメールで送るから。」
翔達は番号を交換して生徒会室に繋がるエレベーターに乗り込んだ。
「「お帰りなさいませ、旦那さま♪」」
エレベーターを抜けたら、そこはメイド屋敷でした……。
「澄、幻覚が見える。俺帰るわ……。」
「まって翔君、これは現実だよ!!」
なんだかなぁ…もうホント、なんだかなぁ……。
「キャーッ!! 琴先輩、男の子ですよぉ〜♪」
「うわっ、澄ちゃんの旦那さん、結構レベル高いかも♪」
「……琴、このマフィン食べても良い?」
「まゆまゆ、食べちゃダメ♪ そして翔ちゃん、生徒会にようこそぉ〜♪」
「ああ、どうも……。」
翔は気が抜けた返事をした、生徒会長も生徒会長なら構成員も構成員だな……。なんだか濃そうな人がいっぱいいる。
「今季の男の子の生徒会役員は翔君が初めてだしね。というか理事長が生徒会と言ったら先輩がお姉様と呼ばれる秘密の花園とか偏見を持ってるからね……。」
なるほど、立候補するまえに潰されるのか。なんだか理事長も色々勝手な人らしい、分かってたけど。
「………生徒会推薦が決定してる澄ちゃんについて来るなんて……ハーレム狙い…?」
先程マフィン食べて良い? 発言をした少女が唐突にそう言って、翔を真っ直ぐに見つめてくる。百四十センチ程度に見える小柄な体躯に神秘的な水色の瞳、綺麗な水色の長い髪をした美少女なのだが、何故か猫耳を装備している。何故なんだろうか? 何故猫耳?
「……どうなの…?」
「いや、別に狙った訳ではないですけど…と言うかハーレムって……そんな事ないでしょ。」
「……ふーん……。」
「……………。」
この少女は何となく独特のリズムを持っていて、翔も反応に困ってしまった。と言うかいきなりハーレム狙いとか言われてもどう反応していいか分からない。
「翔ちゃん、紹介するね? まゆまゆだよ♪」
「いや、わかりませんよ。」
「渚 真夕です…。一様は琴のパートナー…。」
「へぇ、貴方が琴先輩のパートナーの副会長さんですか。澄からは天然系って聞いてましたが、そんな事もないみたいですね。」
「ちょっ、翔君!?」
翔の発言に、澄が慌てた様に遮った。
「澄ちゃん……ちょっと来る。」
「………はい。」
と、澄が奥に連れて行かれる。もしかして変な事を言ってしまっただろうか?
「会長ぉ〜私達も紹介ぃ〜♪」
「人数多いんだもん省くね♪」
「ひ、ひどいよ琴ちゃん会長…。」
「それじゃあちょっと案内するからおいで♪」
翔は生徒会室というには広すぎる生徒会室を案内して貰うことになった。
個室などの奏から聞いていた場所を説明してもらって翔と琴は創造空間発生装置の前に来た。
「翔ちゃん、生徒会には毎年入る子にこれ使って実力を見る事になってるの。澄はもう終わったから翔ちゃんの力見せてもらって良いかな?」
「それはつまり、琴先輩と戦うって事ですか?」
「うん、そう。本当は生徒会でもそんなに強くない子が相手になるんだけど。昨日見た限りでは翔ちゃん強そうだし。」
正直、創造空間でも人に魔法を使うのは気が引けるのだが、それが決まりなら仕方がないだろう。翔は琴に言われるまま配置についた。
「よし、準備はおっけー。翔ちゃん、行くよ?」
翔の答えも聞かず、そう言って琴は機械のスイッチを押した。
ここは、どうやら何処かの渓谷のようだ。創造空間では比較的に使われやすい感じのフィールドである。
「女の子と戦うのは気が引けるけど、仕方ないよな……おっと。」
翔が不満を漏らしていると、後ろにピリピリとした魔力を感じた。
「いきなり、ですか。」
「先手必勝だよ、翔ちゃん♪」
翔が振り返った先に立っていた琴は、ペロッと舌をだして笑う。それと同時に、琴の周りの空間が歪み、そこから光の束の様な物が翔に向かって伸びて来た。翔が咄嗟に飛び退ると、その次の瞬間にはその地面はえぐり取られていた。
「なんて危ない攻撃を……。」
そんなことを言いながら、翔はその束を飛ぶ事で避ける。中学では優の容赦ない攻撃を避け続けて来た実績がある。この程度ならなんて事はないだろう。
「まぁ、仕方ないんで行きますよ、先輩。」
「かかって来なさい!!」
琴が翔の言葉に応じると同時に、翔は自分の周りに透明なフィールドを作り出した。一見すると、唯の防御用の膜の様な魔力の壁。
「壁? そっちが来ないなら私から行くよ、翔ちゃん!」
琴は、自分の杖を澄が使っていた薙刀によく似た薙刀に変え。翔に向かって魔法で一気に距離を詰めて来た。
「くらえぇぇぇぇぇ!!」
真正面からと思わせたフェイントから、素早く後ろに回りこんでの攻撃が翔の頭上に降ってくる。だがその攻撃は、翔のフィールドに阻まれて弾かれる。
「くっ、流石に硬いわね。」
「……昨日見せたレジストがあるから、接近する理屈はわかります……けどっ。」
翔がそう言うと、防御用の様に見えたフィールドが白く輝き、濃密度の衝撃波を全方位に放った。そして、琴の体はそれに当たって大きく吹き飛んだ。
「う…っ、そ、それ狡い……。」
琴の顔が困った様に引きつる。
「狡いって……、勝負に情けは無用ですよね? 先輩。」
翔はそう言うと、空に手を掲げて魔力を溜め始めた。それはかなり密度が高い魔力の柱となって、現実で触れたら天国に逝けそうな代物へと変化した。そしてその柱をそのまま琴に放出……しようとしたのだが。
「……翔ちゃん、酷いよ…私女の子なのに……。」
琴が悲しげな声と眼で翔を見つめてきて、撃つに撃てなくなってしまった…。
「翔ちゃんはその怖いの私に撃つの…?」
「怪我も痺れももちろん痛みもないですよ…。」
「そっか、でも心の傷は残るんだよ。」
「えー………今更そんな事言われても…。」
「わ、私だって好きでしたんじゃないもん……。」
「さっきの攻撃かなり本気じゃなかったですか?」
「えー? それなんだっけ?」
「……わかりました、もう良いです……。」
琴の反応に翔は溜息を付いて、翔ちゃんは優しい子だね♪とか言って尻餅をついている琴に手を差し出した。
「翔ちゃん……紳士的だね。」
琴の眼が潤む
「えっと、取り敢えず終わりですよね?」
翔が確かめるようにそう言うと、琴はニッコリと笑ってこんな事を言った。
「…うん、今終わるよ♪」
「……はい?」
その瞬間、翔は完全に警戒を解いていた、もちろんフィールドもとっくに解除している。
「天、やっちゃえ♪」
琴がそう言った瞬間、腹部にピリッと痺れが走る。翔は何が起こったのか全く理解出来なかった。
「優しさに付け込んで背後から至近距離で一撃、琴さま…これ人として最低だと思うのですけれど…?」
「えっ?」
そう言ったのは、小さな手のひら位の大きさの天女だった。
「だって翔ちゃんのガード堅いんだもん♪」
「えーっと…。」
「ああ、ごめんね翔ちゃん、私の護の天だよ♪喋るんだよ?すごいでしょー?」
一人ではしゃぐ琴に、精霊クラスなら当たり前です…と天は溜息を吐いた。翔も溜息を吐きたい気分だったが。
「えっと、俺の負けですか……。」
「うん、私の勝ち♪翔ちゃん格好良かったよ、凄く。」
「それはどうも……。」
「そんじゃあ、そろそろ戻ろうか♪」
なんだかもう、何やってたんだろ俺……。結局琴先輩に遊ばれただけな気もする。
翔達が創造空間から帰ると、そこには生徒会の面々がいて、どうやら一部始終を見ていたらしかった。
「あー、皆見てたぁ? 私の華麗なる逆転勝利♪」
「「…………。」」
「皆どうしたの?」
「琴……私、何故琴とパートナーを組んだのか…分からなくなった。」
真夕が淡々とした口調で告げる。
「翔君ごめんね?お姉ちゃんったら演技無駄に上手いから……。」
皆声もなく、琴を失望した様な視線で見つめる。
「あー、えーっと。翔ちゃん、皆許してぇぇぇぇぇ!!もうしないからぁぁぁ。」
「……わかりましたよ。…まぁあれくらい予想しなくちゃいけなかったんですね…護の事わすれてましたし。」
「ううっ、翔ちゃんは良い子だねぇ、お姉さん感動しちゃったよ。」
「まぁ篠原君が良いならいいか……。」
「澄ちゃんいいなぁ優しいパートナーで…」
「琴…、いまから…パートナー解除できないのかな…?」
一部本気っぽい発言も入っていたが何とか静寂は破られた
「皆ありがとぉ〜パートナーは解除出来ないのでした♪ささ、今日は今から歓迎会ってことで打ち上げ行こうね♪」
琴は瞬く間に元気になり良さそうな店を皆と相談し始めた。そんな中、澄は一人溜息をついて翔に問いかけた。
「翔君、お姉ちゃんあんなだけど。本当に生徒会入ってもらっても良かったの…?」
心配そうに澄が訪ねる。自分の姉に向かってあまりと言えばあまりな言葉な様な気もするが。
「まぁ、たまには良いだろ?騒がしいのも。」
翔がそういうと澄は笑って
「たまには、じゃなくていつもこんな感じだよ♪」
「それは大変そうだな…」
「シャキッとしてね?私のパートナーなんだから♪」
「ああ、わかってるよ」
そんな会話をしながら翔は思い出した。
「そう言えば優の事、琴先輩に話さなきゃな、頼まれてたの忘れてた」
「優ちゃん…?なんだか騒がしくなりそうね?今以上に♪」
澄と翔はお互いを見つめて苦笑する。一方琴達、生徒会の面々はその様子を楽しそうにじーっと見つめていた。
こんにちは八神です。後書き書くのは久し振りですね。なんだか結構話数を書いた気がするのですがまだまだですね(笑) 恋:「まぁ更新をサボらないようにね?見てるわよ…?」 恋先生!久し振りですね… 恋:「皆、初めましての人もいるかな?後書き担当の恋です♪「おあしす!」からこの作者の監視をしているので。よろしくね♪」 後書き係とか誰が決めたんだよ…迷惑な… 恋:「私が今決めたんだ。に、しても感想が少ないなぁ…八神?」 そうですね? 恋:「そうですねじゃない…お前がしっかりしないからこういう事になるんだ…!皆さん♪まじかるタイムの感想評価をお願いします♪よければ「おあしす!」の方で私の事を見てくれるととっても嬉しいな♪」 この人アピールに来たのか…もうそろそろ、諦め… 恋:「八神何か言ったか?」 いいえ何も… 恋:「それじゃあ引き続き、この作者をお願いします♪」