第0話:あの日の想いで 救いの語り
それは ある 孤独の色に染まった一日から 始まった
夕焼けの空が眩しく光る。ほんの少し見方を変えれば、芸術的な赤が支配するその空は、少女にとってはただの孤独でしかなかった。真っ直ぐに物を見ることしか出来ない心には、恐れが真っ直ぐ写ってしまう。だから少女は泣いてしまったのかも知れない。
「……うっ………くっ……。」
公園に一人。誰も来ないし誰も居ない。徐々に、少しずつ闇に落ちていく空が少女の心に写っていく。そして……。
「………誰かいるの?」
「……ひっく…………えっ?」
「………誰か、居たんだ。」
少女の前に現れたのは、年端もいかない少年だった。顔を上げて初めて気づいたのは、もう辺りが真っ暗だった事。その少年の顔が、少し不安そうで、少し嬉しそうだった事。そして、その少年の周りだけ、少女に取ってはとても明るく見えた事だった。
「だれ………?」
「………え?」
少女は嗚咽交じりの舌足らずな声で問いかけた。少年はいきなり問いかけられた事にびっくりした様子で暫く沈黙していると、やがて、歳不相応な微笑みを浮かべて言った。
「………翔だよ。名字は……分からないから。君は?」
「わたしは…………すみ。みょーじ、は………ない……の………うくっ……。」
少女はそう言うと再び嗚咽を漏らした。だが少年は、優しく微笑んで、一言で少女を救ってしまった。
「そっか、僕と一緒。一緒だね、澄ちゃん。」
「えっ………?」
「僕もただの翔で、君もただの澄。一緒でしょ?」
「そう……かな……?」
一緒と言われて嬉しくなった。最初に孤独がなくなった。
「泣いてたら悲しいよ。だから笑った方がいいんだよ。」
「ちがうよ? かなしいから、なく………のかな?」
「ううん、違う。泣くから悲しいんだよ。笑えば嬉しいよ。」
そう言って少年は笑う。次に消えたのは悲しさと涙だった。
「なんでここにいるの? もうおそいよ?」
「うーん、でも澄ちゃんだって居るじゃない。それと、僕は遊びたいから此処に居るの。」
「………あそぶ……いまから?」
「……うん、そうだよ。…………澄ちゃんも一緒に、遊ぶ?」
「あ………。」
少年は何故か躊躇いがちにそう言った。でも少女には関係がなかった。少年から差しのべられた手を掴むと、少女の周りから、暗闇はなくなった。
「それじゃあ、何して遊ぼうか?」
「えーっとね………ブランコ!!」
その出会いから始まった。
それは1人の少女が救われた物語。
それは1人の少年が救われた物語。
それは1人の少女が裏切られた物語。
……れ……人……年が……て……った……