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まじかるタイム  作者: 匿名
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第7話:それぞれのパートナー

「翔、起きろー? 遅刻するわよー?」


「いい、今日休む……眠いし。」


 小鳥囀る良き朝、起こしに来た優にそう言って、翔は二度寝に入った。


「あら、そう……。」


ドゴッ


「ぐっ……!」


「おはよー翔、良い朝ね♪」


 頭を本の角で強襲した優は再びにこやかに挨拶をした。


「いっ……毎朝毎朝なんなんだよ!! その内頭の形が変わるぞ!?」


「翔が起きないのが悪い!!」


「そうじゃぁ…腹減ったぞ翔坊……。」


 このジジイ…起きたばっかだっつーのに……偶には自分で作ったらどうなんだ。


「はぁ……今作るよ。」


 翔が着替えだすと同時に優と進が部屋を出る。ここまでがいつも通りの流れだ。


「ったく、朝っぱらから元気だよなぁ。」


 翔はそう言うと大きな欠伸をして一階への階段を降りていった。







「んじゃあ爺ちゃん、行ってくる。」


「いってきまーす♪」


「おぅ、行ってこい。」


 進に見送られて杖に跨がる。杖なしの翔と優だが飛行時には杖自体を魔法で作り、それに乗る。杖に乗らずに飛ぶ事も出来るのだが杖なし自体珍しく周りから奇異の目で見られるので大抵の杖なしはそうしている。杖を使わない方が大抵素早く魔法を使えるのでこういうのは飛ぶ時ぐらいなものだが。


「そういえばパートナーどうすんだ?」


「んー色々考えてるんだけどねぇ……魔夜と組もうかなぁって。」


「ふぅん。辰はいいのか?」


「辰と組んだら進級出来ないかもしれないじゃない……美里は誰か当てがいるみたいな事行ってたし、辰は問題なし。」


「まぁ辰はドンマイだな。」


 相変わらず辰の存在はどうでも良くなっている感じだ。恐らくあいつはあいつで上手くやるだろう。


「まぁそれなら良いか、誰とも組む予定無いなんて言われたら罪悪感わいちまうからな。」


「そうねぇ…っと、時間やばそうね……誰かさんが遅いから。」


「悪かったよ、んじゃ少し飛ばすか。」


 その後2人は、法定速度ギリギリで学園に向かった。







「魔夜ぁー、昨日のパートナーなんだけどさー。」


 優は教室に入ると既に来ていた魔夜にアプローチをかけた。


「ああ、OKだよ。優ちゃんなら安心だしね、進級とかも♪」


「優と魔夜は決定みたいだが辰はどうすんだよ?」


 そう聞くと辰は既に決っているらしく。


「ん? ああ、俺はカズと組む予定になってる。」


「そー言う事だよ。」


 横から話に入って来たのが羽丸(はまる) 和史(かずし)、辰からはカズと呼ばれている。情報通を自称していて、昨日の浮気者騒ぎについて話を聞きに来て仲良くなった、身長は低く眼鏡を掛けているが明るい感じがする男で、何故か俺を篠君と呼ぶ。どうやら辰とは昔から面識があったようだが……。


「にしても、篠君の噂も結構広がってたよ? 学年トップレベルの美少女が男と、それもパートナー説明前に組んでるんだもん。さらに葉山さんも男ってだけでも話題になるのにまるで彼女みたいに一緒にいるしね。愛沢さんと未倉さんと言う美少女とまで仲が良い見たいだし、そりゃあ噂にもなるよね。」


「……このクラスで噂があるのはわかるが…なんで他のクラスまで…?」


「…愚問だね、学年トップ美少女が全員同じクラスなんだもん。先生にも隠れファンついた見たいだし、皆注目してるんだよ。」


「俺は目立つの嫌いなんだがなぁ……。」


 そんなことを言っている間に噂になる一番のキッカケが教室に入ってきた。


「おはよー翔くん♪」


「ああ、澄おはよう。」


「御島さん知ってる? 篠君との噂。」


「え…? 何それ?」


「澄と俺がパートナーになったって噂になってるらしいよ? まぁ男女ペアだから珍しいのかもな?」


 と言うよりも澄の容姿による物が大きいのだと思うが。本人を前にしてそれを言うのは躊躇われる。噂を嫌う人だっているのだ。


「やっぱり私達カップルとかに見えちゃうかな?」


「ん〜? まぁそのうち違うってわかるだろ?」


「………まぁ、そうね。」


「ん、どうした?」


「な、何でもないわよ。」


 二人でそんな事を話している内にチャイムがなった。


「皆さんおはようございます。HR始めますよ〜♪」







「はい、それでは今日はパートナーを決めるのと、学校案内をします♪取り敢えず決まっちゃった人は窓がわに寄っちゃって下さいね♪」


 そういわれて窓側に来たのはクラスの3分の1程度だった。つまりまだ半分以上が決まっていない事になる。


「まぁ、昨日の今日だしなぁ。」


「昨日の内に決まっちゃった篠原君が言う事かな?」


 そんな翔の呟きを拾って、魔夜が翔を茶化しにかかる。


「まぁ翔君なら安心だしね♪凄く強いし人格的にも信頼出来るしね♪」


 澄はそう言って照れ笑いをする、そんなこと言われたらこっちまで恥ずかしくなる……前に優の反応が気になる翔は優へと視線を向けた。


「まぁ人格は良いとして、翔が強いなんて何で知ってるの? 小さい時から翔はケンカなんてしないし、戦う事なんて授業の創造空間内くらいだし……。」


 優に訝しげな表情で問われて、澄と翔は背筋が冷たくなる。ここで下手な事を言ったら、理事長の言いつけを破る事になってしまう。奏も心配そうに見ているし………。


「え…それは、えっと…私が変な人に絡まれてる時に助けてくれちゃったりしてね? レジストの魔法を杖なしで使ったの見たのよ!! 凄かったなー、あれ!!」


「そーそー、初めて合った時になっ!!」


 ヤバい…少し演技っぽかったか…? というか、そんなことが昨夜あった気がする。


「そうなの? まぁ翔はそういうの放っておけない質だしね。不良どころか中級や上級のモンスター出て来ても簡単に倒しちゃうくらい強いし。」


 翔の実力の事を褒められ、自分の事の様に喜ぶ優に二人はほっと胸を撫で下ろした。迂闊な事は言わない様にしなくては。


「創造空間かぁ、私の中学ではやらなかったからなぁ。私は県立中学だったし。」


 創造空間と言うのは科学によって作り出された空間、バーチャルリアリティの模造空間の事で、データを入力すると現実さながらの体験が出来る物だ。色々な魔法実験や魔法による模擬実践に使われる。中で何かあっても無事に戻って来れるので危険性は無くダメージを受けると痛みと言うよりは痺れがくる、ちなみに外の様子はリアルタイムで探る事も出来るので非常時の対応もかなり早い。


「まぁこの学園にはあるみたいだし、今度やってみたら? 多分自由に使っても良いんじゃないかな?」


「じゃあ優ちゃんに鍛えてもらおうかな♪」


「良いわよ? じゃあ今度一緒にやりに行きましょうか。」


 優達がそんな話をしていると、翔の視界にパートナーらしき人と談笑している美里が入って来たので、話しかけようと傍に寄った。


「おはよ、美里のパートナーってその人か?」


「あ、翔さん、おはようございます。私のパートナーを紹介しますね? 小波(さざなみ) (みこと)ちゃんって言いまして、魔法瓶で一緒に働いているんです♪」


「……えっと……あ、貴方が翔殿か。み、美里から良く伺っている、その……宜しく頼む。」


「………あ、ああ宜しく?」


 その命と言う少女は真っ赤なロングヘアーをポニーテールにしていて、剣のような特注らしい杖を腰に指していた。意思の強そうな大きな深紅の瞳が真っ直ぐにこっちを見つめていて、凛とした印象を受ける美少女だ。なんだかやたら緊張している様だが、何かあったのだろうか? そんな翔の心配が伝わったのか、命はコホンと咳払いをすると、一つ小さく深呼吸をした。


「翔殿、私の事は呼び捨てで構わないぞ、美里が心許す相手なら警戒もいらぬしな。」


「み、命ちゃ〜ん、心許すなんて、そんなぁ…♪」


 美里は一体何を創造してるんだろうか……って、カズはさっきから何をメモしてるんだ?


「ちょっとクラス内の交友関係を把握しておこうかとね……聞いた所に寄ると、小波さんは男友達とかいないみたいだったから、さっき緊張してたのはそのせいじゃない?」


「ふーん、そうなのか………。」


 なんだか男に緊張したりとか、そういうタイプの子には見えないんだけど。そんな事を考えている内に、カズは横で新たに恋愛勢力図を書き出したが興味が無いので美里達の方へ戻る。


「翔殿、今の男は…?」


「え? ああ、あいつはカズって言って……まぁ、情報通ってやつだよ。俺も良く知らないけど。」


「命ちゃん……。」


 美里が心配したように命をみる。


「あいつは入学して初日だと言うのに皆の事を色々嗅ぎ回っていたからな、少し警戒していた。まぁ。翔殿が友人と言うのなら心配ないか。」


「はは……まぁあったばかりなんだけどな。」


 それにしても、自分はどうやら命の中ではそこそこ信頼できる人間に位置しているらしい、美里のやつは一体何言ったんだろう? まぁ、その事は置いておくとして。


「に、しても珍しい杖だよな? やっぱ特注なのか?」


 翔は命の腰に差してある刀の様な杖が気になっていたので素直に聞いて見る事にした。


「ふふっ、よくぞ聞いてくれた。これは我が家に昔から受け継がれている杖でな。保有する魔力もかなりの物だ。これ単体で魔法を使う事も出来る。言うなれば、私の家の長たる証の様な物だ。」


 翔が質問すると、命は嬉しそうに剣の様な杖の事を話してくれた。余程愛着があるのだろう。


「へぇ、是非とも性能を見て見たいな、授業の時を期待してるよ。」


「ふふふ、翔殿にそう言って貰えるとやる気が出るな。……美里? どうした?」


「え? いいえ、何でもないのですけれど………。ただ命ちゃんが私以外の人とそんな風に話すの初めて見ます。」


「……美里、普段の私はそんなに愛想がないか……?」


「そ、そう言う訳じゃないですけど……。」


「それじゃあ俺は多少は命に認められてると認識してもいいのかな?」


「もちろんだ、魔法瓶で美里を助けてるのもしっかり見たしな。」


「ああ、あれ見てたのか?」


 成程、命に信用されているのはそれが理由だったらしい。些細な事だが、命に取っては大事な事なのだろう。


「なら助けてくれてもいいと思うのですが……。」


「ううっ、すまん。少し考え事をしていてな、出て行くのが遅れたんだ。」


 そんなことを話している内にチャイムがなる。パートナーも決定した様だし、授業も終わりだろう。


「それじゃあ皆さんパートナーが決まりましたので、これまでとします。次の時間はパートナーを組んで予定通りに行きますからね?」


 奏がそう言うと、クラスの人間がばらばらになって動き出す。こうして、全員のパートナーが決まり、翔の学園生活は正式にスタートしたのだった。

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