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まじかるタイム  作者: 匿名
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第62話:美里と命(前編)

長らくお待たせいたしまして申し訳ありませんでした。度々励ましの感想やメールを送って下さった方には本当に感謝しております。

「えへへっ、翔さんとお泊りなんて素敵です……♪」


「えっと……美里? 喜んでくれるのは嬉しいんだけど、人前だし、ちょっと恥ずかしいというか……。」


「うぅっ、だって私もいっぱい心配したんですよ? 全部壊して私も死のうと思ってたんですよ? なのに翔さんと一緒にお泊りなんて、そんなの幸せ過ぎます♪」


「「「…………。」」」


来客用の客室。小波家の三人が見ている前で、美里は寄り掛かる様に翔に抱き着いた。そして三人は命を含め全員が美里の変容に絶句している。翔はそんな三人を見て軽く息苦しくなり、息を吐いた。


「これが、九条院の姫君……なのか?」


「えっとっ………み、美里? 翔殿、美里に何をしたらこうなるんだ?」


「……いや、何もしてないはず……だと思う。」


「ふふっ、翔さんは私にとても優しくしてくれていますよ? とても大事にして頂いて、恋人冥利に尽きると言うものです。今日だって幽霊屋敷で怖がってた時は寄り添って抱きしめて下さいましたし、慣れない洋服で周りの眼を気にしていれば庇うようにして下さいました。」


「今まで縁がなかっただけにこの反動ってわけね。……それとも、篠原君には人を惹きつける何かがあるのかしら?」


美里が熱弁(?)を振るうのを聞いて、立花は苦笑とも微笑とも言えない笑みを漏らした。翔は自分を見る目に先程と違う、少しの違和感の様な物を感じたが、立花を見つめていると、美里が少し不満気に唸ったので、苦笑しつつ美里に視線を戻した。


「……所で美里君、今回の件なのだが、一つ多めに見てもらえないだろうか? 確かにそちらに連絡もいれていなかったのはこちらに非があるが、それも君に自分が倒れた事を隠したいと言う篠原君の希望があっての事だ。……正直に言えば、君が他の派閥の候補者を全員蹴って、周りが諦めていた上での婚約だからね。やっと歴代随一の指導者が選んだ婿を、小波が誘拐したなど噂が流れたら、真偽はともかく我々にとってはかなり重大な信用問題になるんだよ。」


「それについては私自身は気にしておりませんよ? ………それに、結果だけ見れば寧ろ私にとって良い方向に向かいましたから。」


「うわ、愛されてるわねぇ。家宝者ね、篠原君?」


「ええ、まぁ、そうですね。」


良い方向と言うのがどういう意味なのか、今の美里を見れば誰にだって簡単に分かってしまうのは、翔だって良く理解している。それによって少しだけ緊張した空気が緩和されたのだから、特に問題はないと言う事にしておいた。先程に美里の誘いを断っていた手前、少しは批難されるのは当然と覚悟していたのだが……どうやら自分は本当に恋人に恵まれた環境にあるらしい。と、翔は苦笑した。


「さて、美里君まで泊まるとなると、ここで一つ問題が発生するわけだが。」


「……何か問題があるのですか、父様? 美里がこちらに滞在する事は翔殿が美里と行動を共にする条件で既に九条院に許可は取っている筈ですが。」


「……なんだ、それは初耳だぞ。あの親は何でそんなに俺と美里を一緒に居させたがるんだ? というか今日もついて来てたし、まさかもうこの家に侵入してるんじゃないだろうな。」


「ふふっ、安心してください翔さん。先程お母様と御祖母様が侵入して来たので、全身を麻痺させてから強制送還しました。少なくとも今日中に動ける様にはならない筈です。……えへへっ、翔さんとの時間に外野は要りません。」


「……そうか。」


哀れだな、というか心配なら外泊に許可なんて出さなきゃ良いのに。……いや、本当はただ興味があって覗きに来ただけなんだろうなぁ。やっぱり美少女の親御さんは残念な人が多いな……。とか思って翔が溜息をついていると、何を勘違いしたのか美里が考えるように唸った後、翔に向かって笑いかけた。


「やっぱり次からは絶対に邪魔をされないように、家を出る前に魔法を掛けてきますね?」


「………いや、そこまでやらなくてもいいんじゃない?」


「駄目ですよ、甘やかしては。翔さんの優しい性格は私がちゃんと把握しておりますが、翔さんの時間の邪魔をするのだけは駄目です、私が許せません。結果的に私に構って頂く時間が減ってしまいますし………寂しいです。」


まるで世界の終わりの様な悲しそうな顔をする美里を見ていると、本当に自分は美里に何をしてしまったのだろうかと思う。なんだか付き合い始めよりも確実に自分への好意とか愛情が深く重くなってるし。いや、確かにデートのスタンダードな行為はしたし、雰囲気も悪くなかったのも認めるが………そろそろ女ったらしの烙印を受け入れる時がきたのかもしれない。その前に寧ろ、真夕に二股を許された時点で受け入れるべきなのだが……。


「……まぁ、ちゃんと手加減するんだぞ?」


「はい、翔さんがそうおっしゃるのでしたら。」


美里が翔に寄り添い、翔の手を自らの両手で大事そうに包んだのを見て、翔は苦笑しつつも、それを握り返してあげているあたり、自分も相当美里にやられてしまっているな、と自嘲した。それを真向かいで見ていた命は、翔と美里が別世界に行っているのを見て呆れ混じりだが、何だか複雑そうな表情をした。翔はそんな命の表情が気にかかり、ふと、顔を向けた。


「命、どうかしたのか?」


「……ふっ、いいや、何でもない。少し呆れてしまっただけだ。」


「呆れたって……俺はそんなにあからさまか?」


「今の自分達の姿を鏡で見れば分かるんじゃないか?」


翔は少し思案するようにした後、周りから見たら自分と美里がいちゃつき合っている以外の何物でもない状況だったのに気付いた。


「話の続きをしても大丈夫かい?」


「あっ、すいません。」


「いいや、構わないよ。」


視線を正影(翔は改めて自己紹介された)に戻すと、正影は苦笑で答えてくれた。


「ええとだね、その問題と言うのも今の二人を見ている限りそこまで問題と言えないかも知れないのだが……。」


「……どういう事です?」


「まぁ、簡単な事さ。………実は先程の魔法で母屋の客室の大半が壊れてしまっていてね。直ぐに修理が完了するなんて事にはならないし、御両親にも了解はとれている。まぁ、そもそも二人は実質婚約者なんだし。二人には同じ場所で寝てもらおう、とそういう事さ。」


ああ、さっきの一撃で壊滅的に壊れてたからな、あの場所。まぁ、かなりの人数抱え込んだ家みたいだし、そうなるだろうとは思ってた、と言うかこんな感じのパターンにも既に慣れたし。それに、美里を一人にするのは何となく落ち着かない。誤解とは言え、あんな事の後だし。


「翔さんと一緒に、ですか? 私は最初からそのつもりでしたが……その、翔さんがお嫌でなければ。」


「別に嫌じゃないし、俺も美里を放って置くつもりは元々ないよ。……と言うか、前々から思ってるんだが、こういうのって普通逆じゃないか? 俺よりも美里が嫌がる物だと思うんだけど……。」


「ふふっ、翔さんが相手でそんな事は絶対にありえません。私は冗談でも、一生添い遂げようと思う方以外とこんな風に触れ合おうとは思いませんから。」


美里はそういうと正影と立花に視線を送って、正影はそれを了解と受けとった様だ。実際美里となら何も問題はないだろう。と言うより、逐一美里にあんな不安そうな顔をされたら些細な問題は問題じゃなくなるな、うん。………さて、ここで問題とする物があるとすれば……。


「そうかそうか、では命。今日はお前の部屋で三人で寝てもらうからそのつもりで。」


「………なっ!?」


「命ちゃんもですか?」


「……この流れはそう来るよなぁ、やっぱり。」


「ななななっ、何を言っているのですか父様っ!? そんなの問題大有りに決まっているではありませんかっ!! 遂にトチ狂いましたか!?」


……うん、美少女両親残念論は見事に証明された。何故あの命の父親と母親の筈である人間は娘を男とを同衾させようとしているのだろうか? まぁ今回は命が正常な反応をしているだけましか。


「神斗もまぁ、やり方はどうあれ頑張ってくれた様だし、少しは報われても良いのではないかと思ってね? ほら、二人切りと言うわけではないのだし、美里君が一緒なら何も問題はないだろう?」


「私は構いませんよ。他の方ならお断りですが、命ちゃんなら。と言うより私はいつも命ちゃんの部屋に泊まっていますし、翔さんも一緒なら今更嫌がる理由がありません。」


「美里まで一体何を血迷った事を!? それに父様、何故そこで神斗が出て来るのですか、意味が解りません。そして問題が無いように見えるなら今すぐ病院に行った方が良いですよ!?」


命が本気で蔑む様な眼で正影を見たが、本人は全く気にしていない様に笑っている。うんまぁ、これが普通の反応だ。普通はいきなり部屋に男を泊めろと言われたら嫌がるに決まっている。他の皆が妙に積極的過ぎるのだ。……多分にこっちが何もしないからと言うのもあったかも知れないが……。とにかく、美里も命と一緒ならまぁ良いだろうと思う。個人的にも安心だ。


「流石にいきなりですし、俺も男なので、命が嫌がるのも当たり前「い、嫌なわけではない!!」ですよね………?」


………あれ、なんだ? 俺がおかしいのか? 予想していた答えと違うんだが。何か予想と全く違う言葉を速攻でまくし立てられた気がする。


「い、いや、だがやはりこういうのには順序があると………で、ではなくて、翔殿には美里がいるし、私なんかと一緒では不愉快になるのではと……。」


「……いや、こちらこそ不愉快ではないけど……。って、気遣ってくれるのは嬉しいけど、そこまでする必要はないんだぞ? 美里だって、美里の家から一緒に居ろとは言われたけど、別に眠る時までピッタリ一緒にいる必要は………美里?」


そこまで言った時点で美里の顔色が悪くなっているのに気付いた。なんだか少し身体も震えている。翔が不審に思って声をかけると、美里は恐る恐ると言った感じで答えた。


「………翔さん、まさかそれは本気ではございませんよね? 翔さんが近くに居るのに御一緒出来ないなんて、私にとっては拷問に等しいです、絶対に耐えられません!!」


「……あー……そうか。」


まさか美里に拒否されるとは思っていなかった。というか拷問って……まぁ、愛されてるのは純粋に嬉しいんだが。でも流石にはいそうですか、とはいかないよなぁ。命も嫌がってるし。自分一人が一夜の間悶々とするのを我慢すればいいわけじゃないし。


「命ちゃん、他の方を知らないのにこんな言い方はいけないとは思いますが、翔さんは命ちゃんが思う様な他の男の方とは違います。それに不愉快だなんて思うような心の狭い方ではありませんよ? ………それに翔さんなら大丈夫だと、そう最初に言っていたのは命ちゃんじゃないですか。」


「み、美里!? それは言わないようにと……。」


「ですが……。」


「………ん? どういう事だ?」


「あ……うっ、しょ、翔殿には関係の無い事だ………。」


「…………?」


何か聞いちゃいけない事だったのかも知れない。自分の名前が出ていたので気になったが、聞かれたくない事のようなので取り合えずスルーをする。

翔がそんな事を考えている間に、命は美里の説得で陥落寸前だった。


「美里、お前は良いのか? 私も一緒で。」


「はい、勿論です。私が翔さんや命ちゃん以外の方と一緒になるのは周りが気になって眠れませんし、体裁的によろしくありません。だからと言って私達が客室を二人占領して眠る事は今の状況的に出来ませんし。でも翔さんを他の信用出来ない人がいる部屋に放置なんてしたくはありません。……それに、私の希望抜きにしても、この方は一人に出来る様な方ではありませんので………私、もうあんな思いはしたくありません。」


「………分かった。美里がそこまで言うなら私の部屋でも良いだろう。」


「いや、本当に良いのか? さっきも言ったが俺は男なんだし……。」


「………翔さんは私と一緒に居たいとは思っては下さらないのですか?」


「いや、それは…………まぁいいか。」


もう命も了解を出したんだから、自分が渋る理由はない。……取り合えず意識しないように頑張ろう。……いつもの様に。


「ふふっ、決まりですね翔さん。これで今日はずっと一緒です。勿論、命ちゃんも。」


「ん、ああ……。」


命を見て微笑みながら言った美里の態度と、先程から少し様子のおかしい命に、多少の違和感を感じつつも翔は頷いた。取り合えず今日は風呂にでも入ってゆっくりするとしよう、と翔はそんな事を考えながら、今日はこれからまた何かありそうな予感を感じるのだった。










「ふふっ、私が誰かにこういう事をするなんて想像もしてませんでした……。」


「ああ、俺もだよ……数分前までは。」


翔はそう言うと、視線を美里から逸らす様に空を見上げた。

恋人から眼を逸らさなければならない理由なんてそうはないだろうと思う。おおよそ浮気をしてバレた時とか、やましい事がある様な場合だろうが、美里の場合は浮気は何故か公認で、やましい事が有っても全部許してくれそうな男を駄目にする感じの性格なので、もし上記であったとしても眼を逸らさなければならない理由にはならない。

まぁつまり解答は、露天風呂では空を見上げると言う選択肢があって良かったなぁ、と言うことだ。


「んしょっ、あっ、力が弱すぎると言うことはありませんか?」


「いや、それは大丈夫だけど。……なぁ、美里。」


「はい、何ですか?」


「いや………………そもそもなんで男湯に入って来てるんだ?」


「はい……? だって一緒に入らないと翔さんのお背中をお流し出来ないじゃないですか。」


「いや、確かにそうなんだけど……。」


何て言うか、背中を流すと言う行為自体は凄く嬉しいし、気持ち良いしで背中にバスタオル越しに当たる感触は何とも言えない幸福があるんだが……。


「しょ、翔さん……? そんな風に素直に言われると、凄く嬉しいのですが………恥ずかしいです……。」


「口に出てたか!?」


「えっと…………は、はい。」


美里の身体を見ないように視線をずらして見ると、美里が顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。どうやら自身でも羞恥心があった行為の様だ。


「……もしかして、また美里の母さんが……。」


「えっと………御祖母様が、バスタオル一枚で背中を流してあげれば殿方は一撃だとおっしゃって……。」


「今度は御祖母さんか……。何度も言うが、美里もあんまり信じるんじゃないぞ?」


やっぱりあそこも家族揃って残念だなぁ……。美里の話を聞く限り父親もみたいだし。


「でも、喜んで頂けたみたいで嬉しいです♪」


「うっ、た、確かに嬉しい事は嬉しいんだけど……。」


確かに、今回ばかりはかなりツボだった。うーん、御祖母様グッジョブかもしれない……って何を考えてるんだろうね、俺は?


「それにこんなこと、私は絶対に翔さんにしかしませんから、安心して下さい。……私は翔さんだけの恋人ですから。」

「……美里の一番やっかいなのはこういう所だよな……。」


「翔さん? 何かおっしゃりましたか?」


「ああ、なんでもない。」


翔の言葉に小首を傾げた美里に、翔は微笑みながらそう返した。……しかし、


「……もし俺以外が入ってたらどうするつもりだったんだ?」


「それなら大丈夫です。入る前にちゃんと気配を読んで確認しましたから。私が翔さんの気配と他の人の気配を間違える事は絶対にありませんし。特殊な結界を張ったので今から不審者に入られる心配もありませんから、翔さんは周りも何も気にせずゆっくりなさって下さい♪」


「……そうですか……。」


一応ここは専用の露天風呂でも何でもないのだが、美里はそんな事は気にもしてないらしい。……取り合えず、周りの迷惑にならない程度に早く上がるとしよう……。な、名残惜しいなんて思ってないぞ?


「翔さん。」


「え、な、なんだ!?」


「いえ、その………実はお話したい事がありまして……。」


「えっ、話って?」


美里にしてははぎりの悪い口調を多少不審に思いながら、聞き返すと、美里はこくりと頷いた。


「私と命ちゃんの事です。翔さんと出会う前からの事になるのですが……その、やっぱり話しておくべきかと思いまして。もしかしたら命ちゃんも私に遠慮してるだけなのかも知れませんし……。」


「……良く分からないけど、美里が話して良いと思うのなら話してくれ。」


……美里が言い渋るなんて、もしかしたら深刻な話なのかも知れない。でも命の名前が出ているのも気になるし、個人的にも美里が隠しておいた事なので、知りたくはある事だ。


「はい、翔さんがそうおっしゃるなら。実は、もしかしたら命ちゃんは……。」


ピシャンッ


「みっ、美里っ!!」


「……あら、命ちゃん?」


引き戸が音を立てて開けられたのを聞いて、翔と美里が顔を向けると、そこにはバスタオル姿の命が立っていた。


「命……ってなんでここに居るんだ!? ここは男湯だぞ!?」


「ひえっ!? え、ええと、私も美里に呼び出されただけで美里の結界も張ってあったし翔殿が居るとは思わなかったと言うか、確かに男湯に入ってるなんておかしいとは思ったけど入る以外選択肢がなかったと言うか……。」


結界は美里が張った物だろう、だが確か先程は自分と翔以外は入れない様な事を言っていた筈だ。つまり命の言う通りなら美里はわざわざ嘘をついてまで翔と命を鉢合わせさせようとした事になる。


「翔さんごめんなさい、命ちゃんを呼んだ事を黙っていてしまって。お泊りの時はいつも一緒に入ってお話をするのが私達の普通なのです。」


「それは別に構わないんだけどな……。」


「……もしかして御迷惑でしたか?」

「別に迷惑とかではないんだけど。……美里は大丈夫なのか?」


「……それは私だって、翔さんと二人っきりが良いに決まってます。……でもこれは私なりのケジメなのです。私が横から掠め取る形になったのは事実ですから。」


「……すまん、良く分からん。」


翔の問いに迷わず答えた美里の考えが全く読み取れずに翔は唸った。というより自分の親友を婚約者と一緒に風呂に誘う理由なんて想像出来る人間は恐らくいない。だが、翔は少なくとも美里が悪ふざけでそんな事をするような人間ではない事は知っている。美里の表情を見ても、先程命が入って来た時の少し驚いた様な表情からいつも通りの笑顔に戻っていて、その表情からは全くその意図が読み取れなかった。


「そ、それより美里、先程の話は………。」


「命ちゃん、立ち聞きしていたんですか?」


「あ……うっ………だ、だがその話は誤解を生むから翔殿にはしない様にとあれ程……。」


……成る程、美里がちょっと迷ってたのは口止めされていたからだったのか。誤解されると言う意味が良く理解出来なかったが、聞かれたくない物のようだし、無理に問い詰める必要はない。


「そうでしたね。でも命ちゃん、それと盗み聞きとは別ですよ? 私個人にというならば、命ちゃんですし許せる範囲ではありますが……。」


「あぅっ、そ、それについては済まないと思っている……。美里に誘われたのに翔殿が居るとは思わなくて………気が動転してしまった。」


「そうですね、私が先に言っておくべきでした。私の気が利きませんでしたね、ごめんなさい命ちゃん。」


………なんだろうか、この美里からの感じは。何だか自然体ではないような違和感があって、まるで慣れない事をしている様な感じもした。


「さてと、命ちゃん? こっちに来て翔さんの背中を流してあげましょう?」


「なっ、そっ、それは美里がやれば良いだろう!? いや、そもそも私はここに居てはいけない筈だ。そもそも美里は何故私を呼んだんだ!?」


「うーん……翔さんのお背中を一緒に流す為でしょうか?」


「だから何故!?」


「ふふっ、最近命ちゃんとお風呂でお話したりもしませんでしたし、戯れにではいけませんか? 何も翔さんに肌を晒せと言ってる訳ではないのですから、タオルを巻いていますし。」


「ううっ……だがなぁ……。」


翔は、何やら空気が自分に対して喜ばしいと思ってはいけない様な感じになって来たのはいつもの事だと、深く考えない様にして、美里の目的についても何かは分からないが、あまり言わない我が儘と思って聞いてあげようと思った。美里の説得に懐柔されそうになっている命の事については邪念を振り払らうのは苦労しそうだが、取り合えず頃合いを見計らって先に上がれば良いだろう。そう思いつつ視線を逸らすのに便利な空を見上げたのだった。

こんにちは、こんばんは、お久しぶりです、八神です。

今回の更新は自分の知る限り一番長い期間を待たせてしまいました。本当に申し訳ありません。

携帯が壊れた時期があった事や、文章が纏まり切らなかった事、大学生活に慣れていない事等理由は色々ありますが、待ってくださいました皆様には本当に感謝しています。恋:「今回はかなり手を付け始めたのが遅かったみたいね?」

うっ……実はそうなんですよ。昔にやっていた異世界隠れんぼを読んでくれた方が続編を早く出して欲しいと言うことでリメイクして出してしまったのが原因ですね。

恋:「あーあれね、あっちの後書きも私が占領しようとしたのにマスターに邪魔されたんだったわね。」

そんな事もありましたね。

恋:「それはともかく、時間はしっかり確保するのよ?」

分かってますよ、頑張って書きますよ。書きたい事が無くなるまでは。

恋:「まぁこんな作者だけど見放さないで感想をくれると喜ぶわよ。」

時間はかかっても必ず返信はしますので、評価も感想もどんどんくれると嬉しいです!!

恋:「ま、そういうことで、じゃあね。」

それでは次の後書きで。

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