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まじかるタイム  作者: 匿名
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第5話:パートナーの選び方?

「えーと、貴方達が行った地下室の事だけど。」


 翔と澄は理事長室に来ている。奏も担任として同行している……が、なにやら理事長室にある本に興味がいったようで、理事長を含めた3人からの視線にも気づいていないようだ。


「奏先生? はしゃぐのは止めていただけませんか……?」


「えぇ〜……。」


 奏はつまらなそうな顔をして理事長の方を振り向いた。手には既に1冊の本があるが、『この夏の新作BL徹底解明』なんて本が何故理事長室にあるのだろうか。そして奏は何故それを読む気満々なのか。という疑問は持たないことにした。


「でもでも、色んな本とかあって気になるんですよー……漫画はないんですか?」


「ああ、それならそこの右端に今月の最新刊が……じゃない。そ、そんな物はありませんよ?」


 この部屋からあんな題名の本が出てきた瞬間に漫画がある可能性は思いついたが、本当にあるらしい。


「理事長、続きを話してもらえますか?」


 そんな二人のやり取りに、澄が呆れつつ催促をする。早く本題に入りたい。


「え? ああ、ごめんなさいね。結論から言うとこの学校に地下室が造られたという記録はありませんでした。」


「え……でも、翔君も私も地下室に確かに。」


「はい、それは確かなのでしょう、体育館に続くワープポイントは存在しませんが、貴方達がワープをしたと言うのがその証拠です。あそこには結界が張ってありますから、それくらいでないとワープして来ることはできませんし。」


 理事長は疑ってません、というように微笑むと、そう言って澄をたしなめた。


「じゃあ、何故ですか? モンスターまでいたんですよ? しかもこの星にはいないはずの中級です、間近で見たのは初めてでした。」


「それに関しては調査中です、とにかく、わかってるはずですが口外はいけませんよ? 理事の私ですら把握出来ない事があったわけですし。」


「はい、了解しました、理事長♪」


 澄は理事長が調査をしていると言うのを聞くと、明るくそう言った。どうやら元々面識があったらしい。


「これで話は終わりですか? それじゃあ俺達はこれで。」


 翔がそう言って帰ろうとする。あんまり澄と二人でいると後が怖い気がしたのだ。


「あ、そうそう御島さん。生徒会に入る前にパートナーを見つけてくださいね。そのうち皆さんにも言わなければなりませんが……パートナーには同時に生徒会に入ってもらわなければいけないので。」


「ああ、そう言えばそんなのありましたね、うーん……。」


「パートナーねぇ、まぁ頑張れ。」


「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!!」


 翔がそういって部屋を出ようとすると澄ががっしりと翔の腕を掴んで引き止めた。


「……な、なんだよ……。」


 澄が翔をじぃーっと見つめてくる。澄にこんな風に熱い視線を送られたらかなりの数の男子が惚れてしまう事だろう。


「私自慢じゃないけどこの学園で親しい友達いないのよね。」


「……だから?」


「イベントの時とか依頼の時とか授業の時とか、それなりに腕が立つと便利だしね?」


「そ、そうか。」


「うん、そうなの♪」


 つまり、そういう事かと納得した。


「…………。」


「ねぇ…ダメ…?」


 今まで翔は女性に上目使いをされて逃げ切った覚えがない。だがここで了承したら確実に後が大変だ。優的な意味で。


「んんー、でもダルそうだしなぁ……。」


「大丈夫大丈夫、平気だよぉ……ねぇ、お願い♪」


「……てかパートナーって途中で変更出来ないんだろ? そんな簡単に決めて良いのかよ?」


「無問題!! 翔君が良いなら……ね?」


 期待した眼で翔を見つめる澄を見ていたらなんだか断るのが馬鹿馬鹿しく思えてきてしまう。そんな自分の単純な思考回路に溜息を吐きながら、翔は苦笑した。


「わかったよ、まぁ部活も入る気なかったしな…ちょうどいいか。」


「やったぁ♪ さすが翔君、理事長、決まりました。」


「はいはい、篠原君と御島さんね……よし登録完了♪」


 こっちが了承する前からパソコンを叩いてなかったか? と言う疑問は置いておく。もう決まった事だ。


「あ、篠原君、御島ちゃん! 私、皆に配るプリントあるんだけど運ぶの手伝ってくれないかな? まぁ拒否権ないけど♪」


 隣で話を聞いていた奏が思い付いたように言う。


「……拒否権無しですか、まぁ良いですけど。それでは理事長、失礼しました。」


「失礼しましたぁ♪」


 一番失礼していた奏はそう言うと本を抱えて扉を開いた。本が2,3冊増えているようだが気にしない。そうして、翔達は理事長室を後にしたのだった。







「それじゃあプリント持ってくるから待っててね♪」


 奏に連れてこられた職員室の前で待っているように言われたがなかなか出てこない。プリントくらいちゃんと管理しとけよ…と思ったがあの先生じゃ仕方がないかと言う気もする。


「ふぅ……。」


翔はドアに寄り掛かり溜息をついた。


「どうしたの?溜息なんてついて。」


「いーや? ただパートナー決めって、澄と組むとうるさそうな奴がいるんだよなぁ……。」


「えっ…え!? もしかして彼女? さっきの優ちゃんとか言う茶髪の…?」


「まぁ確かに優だが、彼女じゃない……と、いうかアイツは女装趣味の男だ。信じられないと思うが。」


「お、男!? あんなに可愛いのに……っていうか翔君ってホモ…?」


真面目な顔で聞く澄に、翔は軽く鬱になりながら否定する。


「違う、正常な恋をしたいと思っている正常な男子だ。」


「……私、信じてるから……。」


「…………。」


「まぁ冗談はこのくらいにして。」


そういって手を叩く澄にリズムを崩されながら視線を向ける。


「…なんか無理矢理やっちゃったけど…その…ごめんね? 翔君の都合だってあるのに……。」


「ああ、別に良いって、逆に澄がパートナーになってくれて嬉しいよ、こっちから頼みたいくらいだし」


 確かに本気でそう思った、澄なら話やすいし逆に自分で良かったのか? という感じすらする。より取り見取りだろうに……と言うのは失礼かもしれないが。


「そ、そう? そう言ってくれると私も嬉しいんだけど……。」


 翔の言葉を受けて澄は顔を赤くして俯いてしまった。どうやらあまり直接的にこういう事を言われたことがないらしい。そして暫しの沈黙……。


「ま、まぁこれからよろしくな。」


「え、うん、こちらこそよろしくお願いします。」


そして再び沈黙…


「遅くなっちゃいましたぁ♪」


「うわっ!!」


「きゃぁっ!?」


 奏にいきなりドアを開かれて、二人は何ともマヌケな声をあげてしまった。二人の間に気不味い沈黙が訪れる。


「あれ? 2人共どうしたんですか??」


「何でもないです……。」


 澄はそう言って溜息をつく、奏の不思議そうな表情に当てられ、少しあった緊張感が吹き飛ばされてしまった。


「まぁ良いです。プリント見つかったので教室に戻りましょうか♪」







場所は移って教室


「皆さんお待たせしましたぁ♪ ちょっと配布予定のプリント失くしちゃいまして。」


「プリント失くしたって、大丈夫なんですか?」


 怪訝そうな表情でそう言ったのは魔夜だ、それには翔も同意する。この担任は色々と危ない。


「大丈夫です、見つかりましたから♪」


 見つからなかったらどうするつもりだったのだろうか、そしてそれは大丈夫ではない気がするのだが、と翔は思ったが、口には出さない。きっと言っても無駄だろう。


「それじゃあ篠原君と御島ちゃんはチャッチャと配っちゃって下さい。」


「なんか仕事してない上司にこき使われてるみたいだ……。」


「翔君、相手は子供なんだから我慢我慢。」


「ちょっと!! 奏は十九ですよ!? 後、仕事はちゃんと司ちゃんがしてくれてます!!」


 とか言う明らかに給料ドロボウ兼迷惑係の先生を無視してプリントを配る。内容は…パートナーについての説明だ。自分はこれを読まずに決めてしまったが。


「パートナー……、ですか? それってどのようにお決めになるのですか?」


「ん〜決まらなかったら相性診断見たいなことやりますけど、基本的に自由です。あと委員会とかは2人共同じものに入ってもらいます。都合が良いので。」


 奏に促されてプリントを見ると、パートナーについての説明が書いてあった。パートナーは一度決めたら変更は出来ないだとかさっき説明された様な事だ。少し説明されていない事も書いてあったが、重要なのはパートナー同士は常に同じクラスである事、と言う事くらいで、つまり最初に同じクラスだった人間から選べと言う事になる。


「ふーん……。翔、パートナー組みましょうよ。」


「んー、実はなぁ……。」


 どう言い訳しようかと思案していると、澄が優に向かってニコっと笑って言った。


「翔君とは私が組んでしまいましたので♪」


 翔は逃げ出したくなった。一瞬にして、明らかな殺気が優から滲み出ているのが分かる。


「翔、いつの間に組んだの!? というかなんで翔とこの子が!?」


「……翔さん、お手が早いです…。」


「いやぁ、その……。」


「翔君は私と組めて嬉しいって言ってくれましたし、登録しちゃったので変更出来ませんよ? 早い物勝ちです。」


 先程と違う雰囲気の澄に軽くたじろぎながら、二人にちゃんと断ろうと言葉を考えた。


「あー、誘ってくれたのは嬉しいが先約がな……、ごめん。」


「翔、大丈夫よ。今から登録なんか解除してもらってくれば!!」


「い、いや、だから……。」


「魔夜さん、理事長の弱みとかって掴めませんか?」


「美里、お前まで……俺は約束した事は守りたいんだよ…だから…な?」


「…………まぁ、翔がそう言うなら……仕方ないわね。」


「はい、残念ですが仕方ないですね。」


「えーっと、今度なんか埋め合わせします……。」


 なんでこんなに一生懸命にならないといけないのかと思いつつ、周りから向けられる嫉妬の視線に嘆息する。どうやらクラスの中でそう言う人間だと認識されてしまったようだ。


「でも翔、浮気はダメだからね?」


「どさくさまぎれに彼女の立場で物を言うな。」


「翔君、一応生徒会の事も言っておいたら?」


 澄がそう言うと、翔も思い出したように相槌をうった。


「まぁそう言う事で澄のオマケで生徒会に入る事になった。これも変更出来ない。」


「…………。」


 優の沈黙、そういえば優からの誘いを断ったんだっけな……と今更ながら思い出す。これは……不味いかも知れない。


「篠原君、優ちゃんの誘い断ったのに。」


「私とはダメで他の子なら良いんだ……?」


「翔……頼まれたら弱いしなぁ……特に可愛い子に。」


 辰からの追い討ち、特別そんな事はないのだが、この場では何も言い返せない。


「翔君、私それちょっと嬉しいかも。」


「魔夜ちゃん、拷問器具とかないかしら……?」


「いや、さっきから私をなんだと思ってるのよ……?」


「まぁまぁ葉山さん、甲斐性なしの男の子より良いじゃないですか。ここは先生に免じて許してあげて下さい。」


「むう………まぁ、今日に始まった事じゃないしね。浮気も甲斐性の内としてあげますか。」


 予想外な人が助けてくれたので、何とか乗り切ることが出来たようだ。優のさり気ない発言には突っ込むタイミングを逃してしまったが。


「それじゃあ、期限は明日までなので。決まらなかった人はランダムになるのでよろしく♪」


そんなこんなで、翔の学園の一日目は結構波瀾万丈で終わった。

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