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まじかるタイム  作者: 匿名
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第49話:嵐の前も静けさとは無縁

「はぁ……世界の終わりが見える……」


「げ、元気出してよ翔君。二人が見惚れたのは女装した翔君になんだから、ねっ?」


「ほ、ほら翔殿。会長殿達も準備期間からの女装は止めにして、メイド服を着るのは本番だけで良いと言っていたではないか」


教室の端っこで体育座りをしている鬱モードの翔に、澄と命が左右から慰めにかかる。先程の化粧室での一件から翔はずっとこの調子だ。そして、その理由は単純明解である


「……メイド服を着れば男からそういう眼で見られるんだよな、あのスカート丈で……仕事中ずっと……男だって分かってるのに……」


「あ、あはは……」


つまりは、『男女逆転コスプレ喫茶だと分かって来ている客に、そう言う眼で見られる』事に嫌悪感を抱きまくっているのだ。最初は男だと分かっていれば大丈夫だと翔も思っていた。しかし白夜、そして暁の反応が決定的になったわけである。取り分け、暁の様な人間があの様な反応を示した所が大きい


「でも翔君、気持ち悪いとか言われるよりは……」


「ふふふ……男から愛を囁かれるのが良いと……?」


「そ、それは……」


澄は言葉にツマった。翔の言っている事が自意識過剰でない事は澄も分かっていた


「俺、当日休もうかな……」


翔が俯いたままそう言って溜息をついた。二人共お手上げである。先程までは琴と優が慰めていたのだが、その二人でも無理だった。二人がどうしたものかと考えていると、料理組の話し合いを終えた美里が近付いて来た


「あの、翔さん。宜しければ私と変わりませんか?」


「……え……?」


「ですから、私は料理組であんまり人目につきませんし。翔さんのウェイトレスと交換と言う事で、きゃっ……しょ、翔さん!?」


「ありがとう……ありがとう美里……」


美里が言い終わる前に翔が美里に抱き付くと、美里は驚いた様に身を震わせたが抵抗しようとはしなかった。それと共に、男子生徒からの嫉妬の視線と、翔の後ろから澄のむっとした視線が刺さったが、今の翔は感動するのに忙しく、それに気付かなかった


「ん……翔さん……」


「……あ、す、すまん、つい衝動的に……」


「いえ、その……後もう少しこのままでも構いませんよ?」


段々と体が弛緩していっている美里の発言はとても魅力的な提案だったが、この状況でそれをやると、男はともかく澄が不機嫌になるので翔は自重した。だが、体を離すと美里がちょっと不満そうな表情をしたので、翔は苦笑した。


「とにかくありがとな、お言葉に甘えさせて貰う」


「は、はい。それで……お願いがあるのですが……」


「お願い?」


翔がそう聞くと、美里は少し恥ずかしそうに頷いた


「当日の一日目の午後は私達の当番ではないので、私と回って頂けませんか……? あ、でも誰かと回る予定があるなら断って頂いても……」


「いや、特にそう言った予定はないな、一緒に回るか」


「ほ、本当ですか!?」


「ああ」


翔の返事を聞いて、美里は明らかに嬉しそうに笑った。澄はまだ不機嫌そうだったが、美里なら仕方ないと思ったのか何も言わなかった


「ふむ、そうなると私はどうしようか」


「ごめんなさい、命ちゃん。お詫びに今日は一緒に寝ましょうか」


「うむ、そうしよう♪」


隣りで行われる百合色めいたやり取りに、翔は聞こえないフリをしておいた







「節操無し」


「自分から来といてそれは酷くないか?」


「むぅ……」


今翔と澄がいるのは生徒会メンバーの一人一人に割り当てられた部屋である。放課後に、翔が自分に割り当てられた文化祭の書類を整理していたら澄が訪ねて来たのだ。普段は生徒会の事務室で仕事をするのだが、そこにいると琴がからかって来たり、琴が騒ぎ出したりで仕事にならないので、たまには自室で自分に割り当てられた仕事をするのが生徒会メンバーの習慣になっていた


「今さっきまで美里ちゃんに抱き付いてたのに、今は他の子を膝に乗せてるなんて、どれだけ女の子が好きなの?」


自分から座っておきながら、さも翔がそうさせたかの様に澄は言った。翔に寄り掛かる様に座る澄は先程の不機嫌な表情ではなく、体からも力を抜いている。本人曰く、なかなか心地良いらしい


「み、美里のは衝動的にやっちまったんだよ、感動し過ぎた、地獄の中で光を見た」


「まぁ……眼が潤んでたからね。そんなに嫌だったの?」


「当たり前だ!!」


翔が断言すると澄は苦笑した。料理係になってもクラスメイトの眼には触れるのだが、それは言わないでおいた


「それでもお姉ちゃんと真夕先輩の事は教えておいて欲しかったなぁ、黙ってるから私や美里ちゃんや優ちゃんだって怒るんだよ?」


「優は言っても怒るだろうし、突然拉致同然に連れ去られたんだよ。そんな余裕はなかった」


「ふふっ、……教える必要がない、とは言わないんだ……」


「ん、なんか言ったか?」


「んーん、何も言ってないよ♪」


クスクスと可愛らしく笑いながらそう言った澄に翔は少しむっとした。何を言われたのかは分からなかったが、話の流れから情けないとでも言われた様に思ったのだ。


「でも今日の翔君、なんか真夕先輩に優しくない? 真夕先輩の方も翔君にベッタリな感じだし。そう言えばお姉ちゃんにも甘くなった気がするなぁ……」


「……気のせいだ……多分」


「んー、そうかなぁ……」


澄はそう言いながら、後で真夕にコツを聞いてみようと思った。なんだか琴と翔の様子が微妙におかしかった事もあるし、翔と真夕が休みの前よりも明らかに仲が良い事は、澄もちゃんと気付いていた


「でも、やっぱり翔君も少し変わったと思うな。先輩やお姉ちゃんにだけじゃなくて、私達にもね」


「そうか……?」


「そうだよ。今だって、普通に私を膝に乗せてるじゃない」


柔らかく微笑みながら言う澄に、翔は確かにその通りだと思った


「なんかさっきから澄の発言を聞いてると、俺が爺ちゃん並みの最低野郎に聞こえるんだけど」


「お爺さんは良い人じゃない。それに翔君は何も考えない最低野郎じゃないよ、甲斐性なしで見境ないけど」


「……それは最低なんじゃないか?」


翔がそう言うと澄はまたクスクスと笑った。別に翔も自分を卑下するのが好きなわけではないので、何も言わずに嘆息すると、ドアからノックの音が聞こえて来た。それを聞いた澄は、スッと膝の上からどいて翔の隣りに座る。


「どうぞー」


「お邪魔しまー……って、本当にお邪魔だったかな?」


「い、いや、そんな事はないけど。魔夜ちゃんはどうしたの?」


ドアを開けて魔夜が中に入って来ると、ちょっといたずらっぽく笑う。魔夜が翔の部屋に来る事はあまりないので翔も少し戸惑ってしまった


「文化祭の二日目なんだけど、篠原君空いてるかな?」


「え? まぁ空いてるけど」


「本当に? 良かった、もう先約がいるかと思った♪」


魔夜は翔が答えると両手の指を組んで笑った。魔夜は御淑やかなイメージの美里や澄とは違い、明るく活動的な笑い方をするんだな、と翔は改めて思った


「でも唐突にどうしたんだ?」


「んー、優と回ろうと思ってたんだけど時間がずれちゃってね。澄ちゃんもみっちゃんも仕事でしょ? 折角のお祭だし、出来るだけ親しい人と回りたいじゃない」


「なるほどな」


「ふふっ、それじゃあ宜しく。澄ちゃん、邪魔しちゃってごめんね? では御ゆっくり♪」


納得した様子の翔を見て、魔夜はまた明るい笑みを作ると二人をからかう様に言ってから部屋を出た。魔夜が部屋から出るのを見て、澄は翔に寄り添う様に座り直して溜息をついた


「……少しは自重した方が良いんじゃないかな……?」


「は……はは……」


澄の言葉に何も言い返せない翔は、視線に耐えられずに顔を背けた

久し振りですね、八神です。 最近思いました、この小説を見てくれている方はどれくらいいるのだろうかと。 最近新しい「小説を読む」のシステムが出たのは皆様知っていると思いますが、そちらのランキングには四半期評価の低いこの作品はありませんし、更新もあまり早くはないので人目に触れにくいと言えます。 実際に、それによって確かにアクセス数は落ちました。 それでも、沢山の方が更新もしていない日に見に来てくれているのです。 ハッキリ言って驚いてしまいました。 そして同時に、とても感謝しました。 だからなんとか更新スピードを上げてみようとするのですが、なかなか自分の納得する文章にならないので、結局は遅くなってしまいます。 こんなに待たせてしまって、皆様には申し訳なく思っています。 でも自分で物語に妥協をしたくないのです。 もうすぐ50話、自分で作品を見直していて文章も変わったなぁと思いました、これも皆様のお陰です。 どうかこれからも、この八神に御付き合い下さい。 恋:「あ、八神!! なんで私を呼ばずに一人で進めてるんだ!!」 くそっ、一人で綺麗に纏めようとしたのに!! 恋:「あーもう、お前は本編書いてればいいんだよ。私の仕事を奪うな」 私だってたまには読者の方と話したいんですよ…… 恋:「却下だ。……まぁもう字数もないから今回は許してやるか。それじゃあ皆様、また次の後書きで会いましょう」 

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