表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まじかるタイム  作者: 匿名
41/101

第41話:人が消えた夜の悪夢

「…う……ん…今何時……?」


深夜3時48分。澄の枕元にある時計を見ると時刻はそう記されていた。まだまだ朝日が登るには早過ぎる時間だと言うのに珍しく起きてしまったらしい


「……なんでこんなに早く眼が覚めちゃうかなぁ…いつも通りに寝たのに……」


澄は時計を恨めしそうに見る。外は真っ暗。二度寝しても良いが、体は完全に覚醒してしまっているようで眠れそうもなかった


「こんな朝早く起きてもやる事なんてないよね。皆寝てる時間だし…読書でもしようかな……」


澄はそう言って起き上がり、部屋から少し離れた書斎へと向かう。まだ日が出ていないので電気をつけたが、自分以外はこの家には誰もいないとでも言うような静寂があって澄はなんだか不安になった


「何か…やだなぁ…」


澄は基本的に一人でいる時間や暗い場所が嫌いなので、あまりこういう雰囲気の場所には長く居たくはない。端的に言えば怖がりなのだ。そして通路を抜けて書斎に着いたのだが……


「……うっ…なんか怖いな……」


書斎もいつもとはまるで雰囲気が違う。こんな所では落ち着いて本なんて読めないだろう。澄はそう思って溜息をついてから書斎から出た


「…しょうがない、部屋でおとなしくしてよっと……」


澄はそう言うと部屋までの道を少し早歩き気味に戻っていく。通路には何の音もない。そして自分の部屋の扉を開く


「……おとなしく寝かせてくれると有り難いんだけどなぁ……」


澄はそう言って身震いした。澄の部屋の奥には、学園の入学式前に見た時以来見ていなかった地下への階段が現れていた。なんでこんな所にこんな物が、と言う疑問は直ぐに消えた。翔が以前裏界で急に現れたと言っていたからだ。


「……行かなきゃ駄目なんでしょうね……。多分、誰も居ないんだろうし」


先程からこの家からも人の気配がしなかった。一人で進むしかない。元より選択肢などなかった


「……行かなきゃ会えない。翔君にもお姉ちゃんにも……なら…行くしかないか」


もしもの事もある。澄はそう思って自分の杖を手に取り動きやすい服に着替える。途中、翔がプレゼントしてくれた真っ白なワンピースが眼に止まった。無意識の内にそれを抱き締める。そして暫く経って自分が何をしているかを自覚した


「……なっ……わ、私何やってるの…!? ……もう…翔君が悪いわ……」


澄は顔を真っ赤にしてそう言うとワンピースをクローゼットに戻してから制服にもなっている魔法服に着替える。再び緊張が澄を包んだ


「…それじゃあ、行こっかな……」


深呼吸して気持ちを落ち着けてから澄は階段を降りて行った







「この数…この前より多くないかしら?」


澄はそう言いながら杖に乗って高速移動しつつ隙を見ては杖を薙刀に変えて敵を排除。また杖に戻して高速移動と言う行動を繰り返して奥へと進んで行く


「翔君一人の時には何もなかったみたいだし。私は排除しようとしてるのかしら、やっぱり目当ては翔君なの?」


澄は敵を倒しつつ考えた。


「でも、これって何処まで続くのかしら」


中に入ってから結構な時間が経っているし、戦い続けるにも限界がある。澄は少し焦りながらも進む


「くっ…数が多すぎる……」


澄は大蛇おろちの攻撃を避けたが直ぐに次の大蛇が突っ込んで来て反撃に出る事が出来ない。だがそれでも隙を見付けて進む、奥に進むにつれて敵の数も増えて来て澄の行く手を阻んだ。そして暫くその調子で進むと前方に光を発する場所を見付けた


「……一方通行のワープポイントか…都合が良過ぎるわね……あれ?」


澄は大蛇や土人形がある一定のラインを堺に入って来れない事に気付いた。そしてある推測にたどり着く、簡単な事だ


「このワープポイントは最後の砦ってわけね。今までは一本道だったし、つまりこの奥に……」


何かがあると澄は確信した。翔には無茶をするなと言ったが、これは原因を探るチャンスかもしれない。この問題は確実に翔と自分に害を及ぼしている。澄はそう思ってワープポイントを無視して先へと進もうとした。しかし、一歩踏み出した瞬間に澄の頭に激痛が走る


「なっ…!? ……くっ…なんなのよ…これぇ……」


澄はよろめき壁に手をついて寄り掛かった。あまりの激痛に呼吸は乱れて、焦点は定まらない


「…うっ……え…?」


ゾクッ


突如澄は激痛を一瞬忘れる程の悪寒を感じた。このまま死ぬかもしれない事への恐怖ではない。もっと別だが同等以上の何かを


「……あ……翔…君っ……」


悪寒を感じながらも澄は意識を失い、地面に倒れる。そしてその様子を、誰にも気付かれないように背後から一人の少女だけが見ていた。







「……ん…あれ? 私……」


澄が眼を覚ますとそこは自分の部屋のベットの中だった。


「3時48分…」


時計は先程と同じ時間を示している。来ている物も寝間着で、地下へ続く階段などはない。杖もいつも通りの場所に置かれている。時計の針が1つ進む音が聞こえた


「……夢…だったの…?」


澄はそう言って起き上がると、服が汗でグショグショに濡れている事に気が付いた。気持ち悪いので着替えを取り出して着替える。着替え終わると、先程と同じく白いワンピースが視界に入った


「……翔…君…」


澄に先程のひどい悪寒がよみがえる。着替えたばかりだと言うのに背中に嫌な汗を感じた。そして翔に会いたくなった、翔に会えば悪寒が和らぐ気がした。澄がそう考えた時には体が勝手に動き出していて、翔の家へと向かっていた







「……ん…?」


翔は窓の外に魔法の気配を感じてベットから体を起こした。優の気配ではなかったのでこんな朝から誰がなんの用だろうかと思い、カーテンを引いた


「…澄…!?」


「…っ…翔君っ!!」


翔は顔が真っ青になって泣きそうな澄を見ると直ぐに窓を開けた。途端に澄は部屋の中に入り翔に抱き付いた。それを翔は困惑しつつも受け止める


「……あ…翔君…」


「澄、どうしたんだ? 何があったんだ?」


「……分かんない…現実かもしれないけど夢かもしれない。夢かもしれないけど不安なの……」


澄は翔の胸に顔を埋めるようにしてそう言った。そんな澄を安心させるように翔は澄の頭を撫でながら聞く


「どんな夢だったんだ?」


「……学園の地下の時と同じ階段が私の部屋に出て来たの……」


「…………」


翔はそれを聞いた時、多分それは夢なんかじゃないと思った。理由は翔にも分からなかったが、何故かそうとしか思えなかった


「……中に入ったら翔君と一緒の時みたいに敵が沢山いて…ワープポイントもあったけど…私…原因を突き止めようとしたの…。でも…いきなり頭が痛くなって。……悪寒がしたの……凄く…嫌な感じがしたの…何なのか分からないけど……そのまま気を失って……」


「起きたらベットの中だったんだな?」


「……うん……それで…翔君に会いたくなったの……」


「……そうか…」


澄は翔に撫でられながら地下での話を終えて安心したように力を抜き、翔に身を任せた。


「……ごめんな、その時助けられなくて…」


「ううん…良いんだよ…だってこうしてくれてるだけで安心出来るんだもん……なんで悪寒がしたのかも分からないのに、こうされてるだけで……」


「澄…」


澄は微笑して眼を閉じた。しばらくすると澄から穏やかな寝息が聞こえて来た。翔はそれを聞いて微笑んだ、そして下の階から誰かが上ってくるのを感じた


「翔坊、どうしたんじゃ? こんな朝から来客かの?」


「ああ、まぁそんなとこだ。起こして悪かったな」


翔が苦笑すると進は翔が誰かを抱くようにしているのに気付いた


「その子は誰じゃ?」


「ああ、学園でパートナーやってる澄だ。ちょっと色々あって今に至るんだが余計な勘ぐりはしないでくれ。優に言うなんて以ての外だからな」


「澄…とな? ほう…この子が…」


進は興味深そうに澄を見た。しばらく見た後、ふむ、と頷いて言った


「美人じゃな」


「いや、まぁ確かに澄は美人だが…おい、今頭の中で何考えた」


「いや、二人の子……いや式は早めにとな」


「言い直した意味はあるのか? そこに正座しろ」


結局説教は1時間に及び途中で枕を持った優が進入して来て翔に抱かれた澄を見て翔に激怒したり、それのせいで眼を覚ました澄が優の枕を見て翔に激怒したり、澄が消えて大騒ぎになっていた御島邸から琴が来て翔をからかったりしたせいで、翔は寝不足でしたとさ


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ