第39話:名目上の…
「あらら、皆さん驚いちゃってますねぇ…。まぁ私も最初見た時はびっくりしちゃいましたけどね♪」
奏がそう言って楽しそうに笑った
朝のHR。いつもならそこそこ騒がしいこの時間だが、今日は誰もが教卓の横に立つ少女と黒板に書かれた少女の名前を見て固まっていた。
スラッと伸びた健康的な足に服の上からでもくびれがわかるウエスト、160前後の身長に平均は普通に越える発育具合と言った理想的スタイルであり、それに加えて艶がある茶髪のロングヘアー、意志の強そうな大きな瞳。少女は他人を魅了するには充分な容姿をしていたが、別に彼等はその美しさに見とれているわけではない。だが確かに皆が呆然としているのは少女の容姿に要因があった
「皆さんに名目上転校生を紹介しまーす♪ 葉山さんよろしく!」
「名目上転入して参りました葉山優です♪ まぁ理由はなんとなく分かると思いますので言いません。これから宜しくね♪」
「「「…………」」」
「……まぁそうなるよなぁ…」
翔は呆然とするクラスメイトと嬉しそうな優を見比べて呆れた様に言った。翔だって今朝この事を知っていなかったら呆然組の仲間入りだっただろう。
優の容姿は以前とは明らかに変わっていた。髪もここまで長くはなかったが髪は皆にとってもそこまで大きな衝撃を与えないだろう。衝撃を与えたのは優の女性的な部位、これは皆の頭に一つの結論をもたらすには簡単過ぎるヒントだった
「優、パートナー申請は理事長が全部やってくれるってさ。今迄の葉山優の枠に入る事になるみたいよ」
「あ、そうなんだ。退学扱いなんかさせるから面倒になるのかと思ったけど安心安心♪ にしても手続きにこんなに時間がかかるなんてね。住所が変わる様な物かと思ったら…」
魔夜の説明に優が返答する。魔夜があらかじめ全て知っていた様なこのやり取りに無事であった翔も混乱した
「ちょっとまて魔夜。もしかして優の事知ってたのか?」
「ええ、昨日の夜電話してね。まぁ優が心配で頭が回らなかった誰かさんとは違ってなんとなーく予想もついてたし。かな先生が戸籍って言ってたからピンと来たのよ」
魔夜が『誰かさん』と言う所を強調して言う。澄はそれを聞いてそっぽを向く翔を少し不満そうに見た
「なるほど、魔夜さん昨日何か知ってる見たいでしたしね。」
呆然状態から回復した美里が納得した様にいった。クラスメートも段々と衝撃による呆然状態から回復し、男子は翔に嫉妬、女子は優に羨望のまなざしを向ける
「そう言えばなんで私にまで内緒にしたの? 言ってくれればもっと効率よく行動出来たのに」
「ごめんね、でも魔夜から電話があった時はびっくりしたわ。もしもなんらかの方法で翔に知れちゃったら朝の作戦の効果が薄れちゃうし…ね…?」
「ぐっ…」
少し不満そうな魔夜の言葉に優が嬉しそうに微笑みながら翔の方を見て返答する。朝の作戦と言う言葉に顔を赤らめた翔の反応を見逃さず、翔の隣りにいた澄がピクリと反応した
「ふぅん…朝の作戦…翔君それなぁに…? ねえ、なんで顔を背けるのかな?」
「へ…い、いや、ナンデモナイデスヨ?」
澄に制服を掴まれ逃げられない状態で笑顔で睨まれて明らかに焦る翔。それを見て美里が翔からは聞き出せないと判断したのか優の方を見た
「優さん、その作戦ってどんなのですか?」
「ああ、そんなに大層なのじゃないわ、ただの夜這…」
「言うなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
翔は優が何を言おうとしているかを悟り、叫びながら魔法で優の言葉を書き消し、何やら不吉な予感がしてゆっくりと隣りを見た
「…は…はは……よ…ば……?」
「…し…翔さ…まさか……」
優の言葉から連想される物を想像し、澄と美里は凍り付いた。澄の制服を掴む力が強くなる。
「澄、落ち着け。美里も…な?いや、誤解だって、優の冗談だから…おーい聞こえてるかぁ…」
聞こえていない様子の二人に翔の顔が引きつり、優に助けを求めて視線を送った。それを見て優が頷く
「初めは無理矢理だったけど、二回目からは翔も承諾の上だから♪」
優の一言で教室が先程より深く沈黙する、翔は優が何を言い出すのかと困惑する。確かに二度寝はしたが皆にはそうは認識されないだろう
「翔…大胆だった♪」
「…そんな……もう優さんの魔の手に……」
「翔君の…翔君の馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
バッシーンッ!!
翔の頬に対して澄の思いっ切り力を込めた平手が炸裂する。後ろの席では美里が顔を青ざめていた。魔夜だけは優の表情からそれが嘘だと読み取った様で翔に哀れみの視線を送る
「澄、誤解だ、俺は何も疚しい事はしてないっ!!」
「何が誤解よ、翔君の馬鹿ぁっ!! どーせ私は魅力ないもん!! 私の下着姿見たり一緒に寝ながら抱き付いても何もしてくれないくせに!!! ……あ…」
「「「……は…?」」」
「な…なんて事を…」
澄の発言に翔が額に手をあてた。澄も冷静になり、自分が何を言ったかを思い出し真っ赤になった。
「一緒に寝るのは賭けに負けたからまだしも…抱き付いた? それに下着を見た? 翔…言い訳は要らないわよね…?」
「いや…優…本当に事故に不可抗力なんです……」
もう既に眼が据わっている優に冷や汗をかきながら弁明するが、優はまるで聞く耳を持たずに近付いて来る。少し時間が経つと澄も優の朝の作戦の事を思い出して翔を問詰める体勢に入った。美里はと言うと命の焔を鞘から抜こうとしていた
「美里!! 一体何をする気だ!?」
「あはは、良い事思い付きましたぁ……命ちゃん…焔借りますね…? あは…翔さん…私と死んで下さい…向こうで一緒になりましょう……♪」
「さぁ翔君……? まだ終わりじゃないからね…? どんな手を使ってでも洗いざらい喋ってもらうわ…うふふ……」
「翔…保健室に行きましょうか。大丈夫、優しくするから…ね…?」
翔は3人の鬼に囲まれて、クラスメイトの嫉妬と同情の視線にさらされながら取り敢えずどうやって誤解を解いて澄の発言を誤魔化すかを考えていた
こんにちは八神です。長期休暇が終わって鬱モードに突入しましたよ。 恋:「休暇中はずっと怠けていたからな、反動がきたか」 そうなんですよ、恋先生なんとかして下さい。保健室の先生なんですから鬱に効く薬とか便利な物だして下さいよ 恋:「そんな物はないぞ。私は未来から来たロボットじゃないからな。そうだとしてもないだろうけどな…」 うー…役立たず…。あ、いやすみません、調子のりました、その拳を開いて下さい 恋:「ったく…、まぁ更新だけは続けるようにな、3作品同時進行の責任は自分で負え」 分かってますよ、分かってても技術が追い付かないのです。ああ、そんな眼をしないで…、頑張りますから。さて、今日ここらで失礼しましょうか。それでは皆さん、感想をお待ちしております