第33話:お泊まりGW(その1)
「ほら、翔!待ち合わせに遅れるわよ?」
「…ね…むい…」
優の怒鳴り声を掛布団に潜って聞きながら翔は睡魔と闘っていた。昨日優と殺意満点な鬼ごっこをしたせいで疲れが…
「今日は…あ、この本なんて角が丁度良い感じね♪」
「…!?」
そ、それは反則だろうが!!
「はぁ…優、おはよう…」
「はいはい、おはよ♪相変わらず朝弱いわねぇ…。ほら、着替えた着替えた!」
寝ぼけた翔に任せたら目茶苦茶な服の組み合わせになる事を理解している優は、手早く服を取り出して翔の前に置く
「人の部屋に何があるか完璧に理解してやがる…」
「あら、翔の部屋だもの♪机の上からクローゼットの中まで完璧に把握してるわ♪」
優が当たり前でしょ?と笑いかけて来る。こ、こいつは…。と言うか発言がストーカーだぞ…
「はぁ…でもこの流れって…かなりダメ男だな…俺…」
「大丈夫、将来も私が面倒見てあげるから♪」
嬉しそうにそう言って、優は部屋を出て行った
「本当にそうなりそうで怖いんだが…?」
翔は起き上がり着替えながら寝ぼけた様な顔でそう言った
「ようこそ翔様、そして初めまして優様♪私はメイドの灯と申します。現在澄お嬢様は昼食の準備をなさっていられますのでご了承下さい♪」
チャイムを鳴らすと御島家のオンリーワンメイドの灯が♪を語尾に乱舞させる程御機嫌な様子で出て来てそう言った。今日は昼から御島家にご馳走になる事になっている。横を見ると優が呆然と灯を見つめていた
「え、え…?め、メイドさん…?」
「はい♪」
優の問いに笑顔で答える灯。まぁそれが普通の反応だよな。俺も驚いたし。
「ささ、どうぞ御入り下さい♪」
翔達は灯に連れられて門の中に入る。優は周りをキョロキョロしながらついて来る。うん、何度見ても広い家だな
「翔、澄の親って何やってる人なの…?これ、尋常な広さじゃないわよ?」
「あ〜知らん…俺だって知りたいよ。…後で聞いて見るか…」
聞いて後悔しない事を祈ろう…。そんな話をしながら長い玄関を歩き家の中に入る。ちなみに翔は少々警戒しつつ。と言うのも前回琴が危険な格好で出迎えてきたからなのだが…
「ふぅ…今回はいないみたいだな…優もいるのにあんな格好されたら堪らないし…」
優の前であんな格好で出て来られたら大変な事になるだろうし。翔がホッとして靴を脱ごうとした時
「翔〜ちゃん♪」
ギュッ♪
プチッ♪
「…今日は後ろですか…琴先輩…」
「うふふ…甘いわ翔ちゃん…、にしても猫に劣らぬ抱き心地♪癖になりそう♪」
琴は翔を後ろから抱きすくめながら言った。服はこの前とは違う猫がプリントされているTシャツだ。だがやられている事の危険度は倍以上だ。ちなみに最初の擬音は琴が抱き付いた音、2番目の擬音は…
「…翔…?もしかして、この前もこんな事を…?ふーん…うふふ♪私の見てない所でねぇ…?」
「え…あの、優さん…?」
く、口は笑ってるのに!眼…眼が怖…っ!
そんな二人を見て琴はあちゃーと言う顔をして翔から離れた
「翔ちゃんごめんね♪ちょっとした御茶目よ♪……え、あれっ…?身体が…動かなっ…!?…まさか…」
琴の予想通り、後ろからはエプロンに杖と言う何とも奇妙な格好をした澄が琴に金縛りをかけながら歩いて来ていた
「お姉ちゃん…?私、ちょっと大事な話があるんだけどな…?お姉ちゃんの未来に関わるような…ね…?」
ゾクッ
あまりに冷たい澄の声に琴は金縛りをかけられているにも関わらず戦慄した
「翔君、優ちゃんいらっしゃい♪早速お昼御飯と行きたい所だけどもう少し待っててね♪今やらないと逃げちゃうから」
「ううん、平気よ。私も丁度今翔に事情聴取しようと思った所だから♪…ふふふっ」
二人は顔を見合わせてニッコリと笑った。その笑顔は翔と琴を恐怖させるには十分過ぎた
「…さぁて翔…?向こうで楽しいお話をしましょうね…♪」
「お姉ちゃん、私達も行こっか…♪ふふふ…」
「「ひっ…!?」」
澄と優はお互いの獲物を笑顔で自分のテリトリーまで引きずって行く
「ちょ…優、誤解だ!?いや、本当だって!止めて、顔が怖いってっ…!」
「す、澄。ごめんね!?もう悪戯しないからっ!!いやぁ、あ、天ぁっ!?助けてぇっ!!御仕置はいやぁっ!!」
ズルズル
絶望で顔が引きつっている翔と恐怖で悲痛な叫びを上げる琴、勿論二人は引きずるのを止めない
「だーめ…♪もう許さない…。大丈夫、死にはしないから。ただ、ちょっとは痛いかもね…?」
「ごめんねお姉ちゃん…天は私が邪魔しない様に言っておいたの。それにしても今日の悪戯はちょっと許せないかなぁ…?だから、期待しててね?今日は忘れられない一日にしてあげる…♪」
その後数分の間、御島家には男女の悲鳴が響き渡ったという
「うわっ!美味しい!澄って料理上手ねぇ…」
「口に合って良かった♪でも私なんてまだまだだよ…。私はこの前世界の広さを知ったの…」
優は少し豪華な昼食を食べながら澄を褒める。澄はそれを受けながら自分はまだまだだと苦笑した。
「それでも大した物よ。誰かに教わってるの?」
「私は灯さんに教わってるよ。お母さん料理ダメだから…」
そう言って前の席に視線を送る。するとそこに座っていた詩乃は少し何かを諦めた様に言った
「私、昔から料理がダメで…裕治さんを何度か実験台にしたんですけれどその度に倒れてしまいまして…」
「そ、それは…」
優は少し顔を引きつらせて苦笑した。一体どんな物を食べさせたのだろうか
「…所で…琴と翔君はどうしたんだい?さっきから生気が感じられないのだが…」
詩乃の隣りに座っていた裕治が魂の抜け殻状態の二人の姿を見て言った
「翔の休日の朝は大体あんな感じです。特に問題ありません」
「お姉ちゃんはいつも悪戯ばっかりしてるから神様が天罰を与えてくれたんだよ。翔君に食べてもらえないのはちょっと残念だけど、夜もあるしね」
優と澄がシレッとそう言うと裕治はそうなのか?と半信半疑ながら納得して二人から視線を逸らした。
「御馳走さま、美味しかったわ♪」
逸早く食べ終わった優がそう言って笑う。
「翔君もお姉ちゃんも回復しそうにないし…。優ちゃん、この後どうする?簡単なゲームもあるけど…」
「うーん…そうねぇ…あ、チェスの出来る?私強いわよ♪」
優がニヤリと笑って言った
「それじゃあ勝負と行きましょうか♪自慢じゃないけど私だってその手のゲームは強いんだからね、負けないわよ♪」
「あ、澄お嬢様、片付けは私がやっておきます♪」
灯がそう言って片付けを始める。
「ありがと、灯さん♪それじゃあ行きましょう優ちゃん♪」
「ええ、楽しみだわ♪」
「詩乃、私達も久々にどうだい?」
「あら、良いですね賛成です♪」
スッカリ盛り上がる皆から外れて翔と琴は死んだ様にうなだれていたのだが、もう既に気にしている者は居なかった
こんにちは八神です。とても寒いですが、皆様はいかが御過ごしでしょうか? 恋:「私の家ではコタツが出ているぞ?」 うわぁ良いですね。私はコタツ面倒で出してないんですよ…羨ましいです… 恋:「だが、ついついコタツに居座ってしまってな。とんでもない魔力だよあれは…」 あー、分かります。出れなくなっちゃいますよね。私はそれもあって出してないんですけど…。皆様も頑張って寒い季節を乗り切りましょう! 恋:「それで上手くまとめたつもりか?ダメ作者だな。」 うるさいですよ…。慣れてないんですから…。さて、実は今ホームドラマ系のコメディーを書こうかと思案中です。もし出たらそちらの方も宜しくお願いしますね♪それではまた逢いましょう