第27話:生徒会の椅子をかけて!! (美里、命編)
「四人ともベスト4に残ったわね…」
「ああ…」
優、魔夜、美里、命の全員が生徒会に入れれば良いと思っていたが、何より優、魔夜ペアと美里、命ペアが当ってしまってはしょうがない。願わくば今回も当りませんように…
「でも4人が勝てば暁と白夜が落ちるんだよな…暁は勿論、白夜もウザイとこがあるが悪い奴じゃないし。ロリコンだけど一線は越えてないし」
「あはは…」
翔の発言に澄は渇いた笑みを零した
「やっぱり俺って狡いんだろうなぁ…何の苦労もしないでって…」
はぁ…と翔は溜息をつき、澄はそれを見て言った
「それを言ったら私だってそうよ。…と言うより私が翔君を誘ったんだし、翔君が入らなきゃあの4人は入ろうともしなかっただろうし。魔夜ちゃんと命ちゃんは優ちゃんと美里ちゃんに引っ張られる感じで、引っ張る二人は翔君が入ったから入ろうとしてるわけで…」
う…澄を責めてるみたいになっちまったな…
「またそう言う事を…。俺は澄と組めて良かったって思ってるんだから澄が気にする事じゃないって、運命なんだろ?なら尚更澄が気にする事なんてないだろ?」
「…うん…ありがとう翔君…」
翔がそう言って笑うと、澄も笑った。なんか、凄い恥ずかしい事言ってる気がする…。そう思って澄から視線を逸らすと琴がニヤニヤ笑いながらこっちを見ていた
「流石ジゴロの翔ちゃん♪なかなかの殺し文句じゃない?あ〜あ、録音しとくんだったなぁ…。ねぇもう一回言ってくれない?」
「断固拒否します…」
これからはこういう言葉は避けよう…。録音されて学校中に配られたりしたら…お、悪寒が…。休憩時間が終わり次の競技を開始すべく奏がホールの真ん中に移動する
「お待たせしました♪それでは、次の競技、『戦闘』を開始したいと思います!それではステージへーんけいっ♪」
パチンッ
今度は創造空間発生装置が奥から出て来る。ちなみに奏の衣装は巫女装束、杖もしっかり玉串に変わっている。まぁ似合っているから無問題だ。最後に巨大モニターが幾つか出て来てセッティングされる
「さぁ準備も終わりました!一回戦は愛沢美里、小波命ペアVS南千尋、南千歳ペアだぁ!それでは両者装置の前へ!」
美里と命が装置の中に入る。どうやら4人が上がる舞台は調った見たいだな。とにかく美里と命が勝ってくれる事を祈ろう。…にしてもあいての南ペアって双子なんだろうな。目茶苦茶似てるし。揃いも揃ってバニーだし…
「今回のステージは森林です、4人共頑張って下さいね♪それではスイッチオン♪」
奏の明るい声がゴング代わりになり4人の精神は創造空間へと飛んだ
「ふむ、森林か…悪くはないな。」
命は周りを見渡して言った。森林に学ランサラシと言う異様な組合せだ。だが、それは隣りにいる美里も同じだった
「向こうはバニーさんの格好でしたねぇ…翔さんはやっぱりあっちの方が好きなんでしょうか…。やっぱり後で聞いてみた方が良いですね!何なら二人の時に天津さんから衣装を借りて見せる事も出来ますし…。あぁ、でも二人なんて…♪」
美里は何だか違う世界に行ってしまっている。ただでさえ本物の空間では無いのにこれ以上何処へ行くつもりなのかは美里しか知らない
「美里、戻ってこい…早く捜索して殲滅するぞ…。…っ…!」
「…捜す手間が省けましたね?命ちゃん」
命が瞬歩で何かを避ける。命が今までいたその場所には大きな火柱が立っていた。その奥から二人のバニーガールが姿を現した
「あれを回避するなんて…なかなかの反射神経じゃない?」
黒髪ボブカットのバニーガール二人の内の一人はそう言って杖を構えた。二人の姿を見て命はフッっと笑う。
「分身の術だと?そんな物で私達の注意を引けると思ったか?さぁ!もう一人は何処だ!」
命は周りを見渡して警戒を強める
「くっ…気配を消すとは…やるな…」
「私達が双子だって言う考えは浮かばないのかしら…」
もう片方の少女が呆れて溜息をつく。そんな様子を見て美里がクスクスと笑う
「そこが命ちゃんの魅力でもあるんですよ♪…命ちゃんは分身の片方をお願いしますね?私は余った方の御相手を致します♪取り敢えずもう一人は棄権した様なのであの方を2対1で確実に倒しましょう」
笑みのまま表情を変えずに美里は言った。ちなみに双子の少女達もバニーガールの衣装の色で見分けがつくようになっていて、白が姉の千尋、黒が妹の千歳なのだが、命はどうしても分身の術と思い込みたいらしい
「よしわかった、私は白い方をやる。ふふふ…分身Aめ、焔の力…篤と見るがいい」
「ぶ、分身A…私には千尋って名前があるわ!!大体双子だって気付きなさいよ!!」
命は剣に手をかけ、千尋は依然杖を構えたまま、お互いに睨み合う。
一方美里の方はと言うと千歳に質問を投げ掛けていた
「…貴方は何故生徒会に入りたいのですか?」
美里の問いに千歳はフッっと笑い答えた
「何故かって…?それは琴お姉様への愛のためよ!千尋お姉ちゃんも同じ理由…そう言う貴方は何の為に?」
千歳は美里の眼を見据えて逆に聞いた
「私もまた愛の為に…この戦いが愛による物なら、きっとこの戦いの結果も愛の強さによる物…。愛の強さならば貴方に負けはしませんよ…」
異様な雰囲気の中、美里と千歳もお互いに杖を構えた。
『焔の炎よ、我に従い対象を包囲せよ!!』
命がそう言って焔を横に一振りすると、剣から出た炎が千尋を包囲すべく殺到する。千尋は直ぐさま防御をしようとを紡ぐ
「…っ!『樹木に宿りし精霊よ!炎を相殺し盾となれ!レ・アギナ!』」
千尋が命ずると共に木々が光りだしその光が千尋を包囲しようとする炎を打ち消す
「…ほお、分身Aも精霊に力を貸してもらうタイプか、だが私の様に固有の精霊に頼るタイプではないようだな…」
「そうよ、そう言う貴方は剣の精霊?随分と面白い戦いかたをするわね…?魔法で剣を創るならともかく実剣なんて」
命の見立てに千尋は体制を立て直した後に自分の見立てを言った
「焔は我が家に伝わる魔剣だ。ふふふ…確かにこの木の多さでは少々やりにくいな、ならば」
「何を言って…って!ちょっと!」
命は焔で炎を出して森を燃やし始めた。凄いスピードで森林が焼け野原に…
「こうすれば精霊の力を借りる事は出来まい!ふふふ…燃えろ!全て燃えてしまえ!」
「あ〜もう!現実じゃないからって森林破壊はいけないのよ!?自然は人類の共通財産じゃない!!やめなさーい!!」
千尋は半泣きになりながら命を止めたが命には届かず…森林は燃えて行く
「よし、ここまですれば強い力は使えまい…『焔の炎よ!我に従い対象を滅っせよ!!』っふはははは!!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
また焔を横振りすると炎が千尋に襲いかかる。千尋は力を使う事が出来ずに炎に包まれた。命の高笑いが焼け野原に響き、千尋の精神は現実に戻された
「向こうの勝負はついた様ですね?後は貴方一人です!分身Bさん覚悟!」
「くっ…!姉さんの馬鹿…!木までこんなにして、精霊仕えないじゃない…ならば!」
千歳は杖を刀状に変化させ、美里に切り掛かった。すると美里は懐から札を取り出した
『禁!!』
美里の言葉と同時に札が反応し、強靱な壁を創る。千歳の攻撃は壁に阻まれて無効化される
「…っ!陰陽道っ!?って、杖を持っている意味あるわけ…?」
「私の陰陽道は只の陰陽道ではありませんから、とは言っても魔法がメインな感じなのですが♪見せてあげます、複合陰陽道を…」
美里はそう言って札を取り出してばら蒔き杖を振ると、札が美里に従う様に美里の周りに集った
「本当にあんた達って珍しい技を使うわね…」
「ふふ、私は昔からこのスタイルでしたから♪さて、ではもう終わらせて頂きますね♪『破っ!!』」
「くっ…あーもう…負けちゃった…」
美里が札で千歳を包囲させ、全方位から攻撃をする。千歳に札が命中し、千歳の身体の自由を奪う。そして千歳の精神もリアルへと戻った
「ウィナー!愛沢美里、小波命ペアー!!素晴らしい戦いを見せてくれました!でも皆さん森林破壊はしちゃダメですよ?自然を大切にしましょう♪」
奏が勝者の名を上げ、会場から『はーい、奏先生!!』とか『森林破壊等は愚の骨頂です、かなちゃん先生!!』とかが聞こえる。愚の骨頂って…そうして生計を立ててる人だっているんだぞ!そう思っていると、隣りから澄が笑いかけてきた
「翔君、美里ちゃん達強かったね♪ちょっと驚いちゃった♪」
「そうだな、まぁ勝てて何よりだ。あいての人が琴先輩への愛の為とか言ってたしな…これ以上変人が増えて欲しくない…」
まぁ、あそこまで強いとは思ってなかった。何だか余裕って感じだな。闇市に行くくらいだから弱くはないと思っていたが。だが、優と当たっていなくて良かったと言えるな。優はちょっと次元が違う
「ま、次は優と魔夜か…」
どんな試合になるのか楽しみだな。と翔は思って、インタビューを受けている美里と命を見た