第25話:ナルシー宣戦布告!聖人君子の苦労
「さぁ盛り上がってまいりました!!第2回戦の種目は『料理』です♪参加者には美味しい料理を作ってもらいます♪」
優達四人は難無く一回戦を勝ち抜いた…いや、俺自身あの内容に難が無かったと思うかって言えば嘘だけどさ…。まぁ受けてたし良いよね。俺も八つ当たりされずに済むし。
「審査員だけでは公平に試合を運ぶ事が出来なくなる事があるので、先程外来の方に立候補を取らせて頂きました♪それでは会場の準備が調うまでしばしお待ち下さい♪」
パチンッ
ゴゴゴ…と会場がまた変形しだした。何段変形なんだろ。最後は巨大ロボになったりするんだろうか…?巨大ロボのパイロットをして街を破壊する奏先生が容易に想像出来るな。あと壊した物の修理費を見て鬱になる司先生も…
「はぁ…」
溜息をつく司。巨大ロボに変形しなくても心労は十分見たいだな。ドンマイ先生。
「変形完了♪さて時間が無いので調理は一気に行います!選手と審査員の方は対戦番号毎に持場について下さい。応援は自由ですのでどうぞ選手の邪魔にならない程度に御立ち歩き下さい♪」
流石は先生になるだけあって気配りと効率を考えた指示だ……と思ったが司先生の書いたカンペを読んでるだけか…見直しそうになったのに…。
「それではぁ…フードファイト!!れでぃご〜♪」
奏の間の抜けた合図と共に生徒の手が動き初める。
「翔君、私達はどうする?どっちの応援に行くの?」
澄が調理を開始したらしい四人を見回しながら言った。
「うーん…両方共心配要らない気がするけど、行かなかったらそれはそれで怒られるんだろうな…美里達も無言で非難してきそうだし」
「あー…確かに…」
翔の予想に澄は苦笑して答える。あの優以外の3人の性格も大体分かってきたし、多分間違ないだろう…本当にあの4人には当たって欲しくないな…どっちの応援したらいいんだか分からなくなるし。
「さぁ、どうしようかなぁ」
そう言って、翔も会場を見回すために立ち上がろうとした瞬間に何処からか白い薔薇の花びらが舞って来る。何だこれは…?何処から来てるんだ…?
「フッ…篠原翔よっ!!!」
口に白薔薇を咥えた何だか色々な意味で危なそうな男に声をかけられた。
髪は鮮やかな金髪。瞳は青く、制服は白のスーツっぽいのに紅いネクタイをつけている。恐らく一年生だろう、あの制服はリストにあった気がする。何ていうか美形なんだけど何となく近寄りたくないなぁ…澄も同感見たいだし。さて何処から見て回ろうかなぁ…
「なっ…篠原翔よ!無視をするなっ!!」
「……はぁ…はいはい、何だ?変人なら間に合ってるぞ…?自慢じゃないが、俺はまともな友人の方が少ないからな」
何だか必至っぽいので取り敢えず返事をする。と言うか、自分で言っておいて何だが俺のダチって変人ばっか何だよなぁ…闇市の件で美里と命もそっちの方と再認識させられたし。
「フッ…変人か…、まぁ確かに僕のこの美しさは他の者とは全く次元が違うしね…変わっていると言う点では変人と言えなくも無い…」
薔薇の花びらの量が増える。本当にどっから来てるんだ?そして、こいつは何が言いたいんだ?俺は変人にはカテゴライズされてないつもりだから全く意味が分からないのだが…
「はぁ…で…?その変人が何の用事だ…?怪しい宗教の勧誘なら御断りだぞ…?」
翔は投げやりな感じで言う
「僕の名前は桜院 白夜…人の認知できる限りにおいて最高の美の化身さ…君には白夜と呼ばせてあげよう…我がライバル、篠原翔よ…」
うわぁ…何かイッちゃってるよこいつ…美の化身って…大丈夫か?哀れみすら感じるぞ。それにライバル宣言とか困る。だってこいつとこれ以上関わり合いたくないし…
「おい白夜…何で俺がお前のライバルなんだ…?迷惑極まりないぞ」
「この僕のライバルとして認めたのだ。本当は嬉しいのだろう?素直じゃないな篠原翔よ…」
ウゼェ…何だか言い表せない程ウゼェ…てか下が花びらだらけじゃねぇか…さっさと消えて欲しいな。掃除する人の為にも…
「ライバルと認めた理由は単純な事さ…君が僕が認めし美の結晶と親密な仲だと噂になっているのを聞いてね。ちょっとした宣戦布告さ…」
「…親密…?美の結晶…?えーっと…」
澄の事か?と思い。澄の方を見ると澄が『え…私…?』と明らかに嫌そうな顔をした。しかし…
「御島穣ではないよ…彼女もかなりの美の持ち主ではあるが…彼女には届くまい…我が麗しの姫君…渚真夕には…」
「は…?」
「えーっと…それって…」
つまりそう言う事らしい。当の真夕は料理会場で何やら試食に勤しんでいる
「ちょ、ちょっと待て。真夕先輩と俺が親密…?何を証拠に…」
「…あっ!」
呆れる翔に澄が何か気が付いた様に手を叩く
「お姉ちゃんが撮った写真!!多分、あれが出回ったんじゃないかしら…?」
「そ、そう言えばそんなのあったなぁ…」
つまりまた琴先輩のせいで俺が厄介な事に巻き込まれようとしている訳だ。はぁ…
「あの完成された美…!まるでこの腐敗した世に迷い混んだ可憐な妖精の様だっ!嗚呼…」
陶酔する様に眼を細める白夜。真夕先輩が妖精にされちゃったよ。
「澄…このロリコン野郎どうする…?」
「一応年上だし、ロリコンになるのかな…」
澄とロリコンの定義について語り合う。って、こんな言い方すると俺らまで変態みたいじゃねぇか…。翔が軽く落ち込むと白夜が陶酔状態から現実に戻ってくる
「時に篠原翔よ…勿論僕もこのトーナメントに参加しているのだよ。それで料理を君にも味見してもらおうと思ってね…ふふふ…無論、僕こそが彼女に相応しい事を証明するためだが…」
「料理か…」
料理でそんな証明が出来るのか…?と言う疑問は取り敢えず放っておく。変人の考える事は俺には理解出来ないしな。料理の件も多分断っても聞き入れないんだろうなぁ。と思い澄に確認を取るとコクリと頷いた
「まあ…特に何処に行こうとしてたわけでもないしな。味見位なら良いぜ?」
そう言うとまた『フッ…』とか言って白夜は笑った。止めてくれ…
「それでは僕について来るといい!!我がパートナーと料理が待つ場所へ案内しようっ!!」
やっぱり断れば良かったかなぁ…と後悔をしつつも翔と澄は白夜の後に続いた。
「紹介しよう。僕のパートナー。才媛路 暁だ… 僕の幼馴染みでね、共にこの学園にきたのだ」
「暁と呼んで下さい。白夜君共々どうか宜しくお願いします。」
深々と頭を下げる少年、暁に習い翔と澄も頭を下げて自己紹介をする。
翔の第一印象は…こいつも大変だなぁ…と自分に近い物を感じると言う物だった。少年と言う言葉がピッタリな小柄な体型で金髪。白夜とは対象的に大人しめな印象だ。白夜と同じくらい壮大な名前なのに…
「それで暁よ。料理の方は…」
白夜はちらっと暁の方をみる。お前が作ったんじゃないのかよ…。僕が相応しいとかなんとか言ってたのに…。
そして暁…お前も苦労してるんだな。翔と澄が顔を見合わせてから暁の方を向くと、暁は静かに首を横に振る。苦労は感じていないと言う事だろうか。
白夜よ…この聖人君子の様な友人を大事にしろよ…。
「料理ならもう出来ますよ。審査員の方に先に審査して頂いています。余りならそこにあるのですが…篠原さん、御島さん、すいません…」
本当に申し訳なさそうに頭を下げる。本当に良い奴だなぁ…
「いや、いいよ。ちょっと味見させてもらうだけだし。」
「そうですか♪では早速♪」
そう言って取り皿にあまったスープをとって渡してくれた。あんなに嬉しいそうに…よっぽど料理が好きなのか…。そう思ってスープを口にする。次の瞬間、脳内がスパークを起こしそうになった。
「う、旨い!!」
「凄いわ…一体こんな物どうやって作ったのっ!?」
澄と同時に感覚を口に出す。旨い…何だこのスープは…もう暁がトーナメントの優勝者でも良いよ!!すげぇ良い奴だし!!
「作り方はナイショです♪あ…審査員の方達も喜んでくれてる見たいですね♪良かったです」
ああ、ヤバいよこの人…本当に良い奴だよ。隣りで
「旨い…?当たり前さ!!僕のチームの料理なのだからね!!」
とか言ってる奴とは大違いだよ…
「さて、まだ時間もありますし♪余り物だけでは何ですし、何か作らせて頂きますよ♪」
そう言って暁は再び料理台へ向かう。本当に料理好きなんだなぁ…と思いつつ、この後も澄と一緒に美味しく頂きました。食べてる途中で澄が、
「翔君が次家に来る時までに越えてみせる…」
と言っていたので、次に澄の家に行く時が楽しみだ。ちなみに暁の料理があまりに美味しかったので優達の所へ行かずに後で目茶苦茶怒られたのは言うまでもない…
そしてもう一つ余談だが、白夜がばらまいた白薔薇の花びらは後で暁が掃除して回っているらしい。それを聞いた時、白夜に対しての激しい呆れと暁に対する称賛が止めどなく溢れたとさ。