第23話:決戦間近!苦労人教師の災難!?
「それでは出場生徒は控え室の方で待機していてくださーい♪」
奏が大ホールのアナウンスを使って全校生徒に呼び掛ける
体育館でやるのかと思ったが、なんと光明には大ホールまであるらしい。競技をやる場所が中心に有りそれを取り囲む様に観客席がある。どっかの料理漫画の決戦に使われたりしそうだな…あれ?料理対決もするんだっけ?
「あ、澄、翔ちゃん♪生徒会メンバーは特別席用意しといたから♪」
琴が特別席だと指を指したのは審査員席らしき所の後ろだった。何故審査員席だと判ったかと言うと、テレビでよく見る点数が表情される画面が台に付いていたからだ。まさか生で本物を見る機会が来るとは…
「何だか、えらい本格的ね。流石は光明…」
澄が呆れた様に言った。それに対しては物凄く同感だ…思い付きのイベントを実行してしまえるなんて…翔がそう思ってホールを見回していると不意に後ろから声をかけられた
「あら、貴方が篠原さんですね?」
「え?はい、確かに俺は篠原ですけど…」
翔は声のした方を振り返った。そこのいたのは眼鏡を掛けて、黒いスーツを完璧に着こなした知的な感じの美人だった。背は翔より少し高く見える。顔の右側でアップにしてあるオレンジ色の髪に少し吊り気味な瞳。歳は20前後だろうか
「生徒会に男性が入ったとは聞いていましたが、こうしてお会いするのは初めてですね。私は皐月司と申します。奏と共に生徒会の顧問をさせて頂いております。どうぞ宜しく」
司がペコリと頭を下げる。翔の司に対する第一印象は奏とは真逆で大人っぽい人と言う物だった
「あ、宜しくお願いします。司先生」
司に習って翔も頭を下げる。そう言えばこの学校に来てから校章の説明をしてくれたのは司って名前だったな…
「それにしても…奏を止めるのは私の役目だというのに今回の不祥事…私もまだまだ修行が足りませんね……はぁ…」
司が暗い顔で溜息をついた。この人とは厄介な人間を止めるという点で深くわかりあえそうだな…優も色々とやらかすからなぁ…
「翔君も司先生もそんな暗い顔しないで下さい……でも、私も何かとお姉ちゃんのストッパーやらされるのよねぇ…ふぅ…」
澄も加わり、三人でネガティブなハーモニーを奏でる。同じ辛さを経験している人がいるって何か良いね…頑張ろうって気分になるよ…
「まぁまぁ♪そんな暗い顔してても良い事なんて何もないわよ♪」
琴がそんな三人に一人明るく言った。いや、その三人の内の澄は貴方のせいで暗い顔してるんですよ?と言っても気にしないんだろうなぁ…
「ふぅ…あ!そろそろ一般生徒の誘導をしませんと…それではまた後で…」
そう言って背中に挿してあった羽の様な形状の杖に乗って入口の方へ飛んで行ってしまった
「何だか苦労しそうな人だなぁ…」
「そうね…前に一度だけ会った事があるんだけど、その時も奏先生絡みの事で忙しそうだったし…」
奏先生か…何か繋がりでもあるのか?学校の先輩とかかな?まぁ奏先生が司先生に迷惑をかけている姿は容易に想像できるな…。翔が、奏が魔法で学校を目茶苦茶にする隣りで先生に謝る司、と言う何とも理不尽な事を想像していると突然に琴が腕時計を見て言った
「あ〜っ!私もかなちゃんと約束あったんだった!翔ちゃん、澄!生徒会の皆の誘導宜しく♪」
そう言って琴も控え室の方へと行ってしまった。打ち合わせ…なーんか嫌な予感がするな…光明の生徒&先生トラブルメイカー夢の共演だ。何か帰りたくなってきた…。隣りを見ると澄も同意見の様でこっちを見て頷いてきた。…まぁ、それはひとまず置いておいて…
「やっと二人になれたな…今週はもう無理かと思ったぜ…」
「え…二人って…?それってどういう…」
澄が仄かに顔を赤らめる。
「どういうって言うか…ちょっと月曜日に別行動してた時の事で話しておきたい事があってな」
「なんだ、そういう事か…。そうだよね…翔君だもんね…はぁ…」
そういうと澄は溜息をついた。なんだ?何を期待してたんだ?翔が訝しげな顔をすると澄はハッとして続きを促した
「まぁ…その時の事何だが、俺達は闇市に行ったんだよ」
そう言うと澄の表情が固まった。さっきから表情がコロコロ変わるなぁ…まぁ気持ちは分かるけど…俺も初めて聞いた時はそうだったし
「…えーっと。翔君…闇市って…あのヤが付く職業の人達が買い物する…?」
まぁ俺もそう考えたけどな…何か響きが危険な感じだし
「いや、闇市って言ってもそんな所じゃなくて…確かに法律はないらしいけど…」
「そうなんだ…でもまさかそんな所に行ってたなんて…何かあったらどうするのよ…」
澄は呆れてるんだか心配してるんだかよく分からない感じで言った。でもそこに普段も出入りしているらしい美里と命は何なんだろう…
「まぁ闇市に行ったんだ…そこでちょっと…いや、かなり不思議な体験をしたんだよ」
「不思議な体験…?」
澄は首を傾げた
「ああ、実は…少し街中を見物して巡ってたらいきなり人が全くいなくなったんだ」
翔はその時の状況を思い出しながら続けた
「跳び上がって見たけど全くいなかった。世界単位で俺を中心に人払いの結界を張られた様な感じだ。だが、全くそんな魔力は感じはしなかった。」
あの時は焦った。それと共に怖かったってのが大きいか…まさかこの歳になって怖がるなんて思わなかったけどな…。澄はさっきとは打って変わって真剣な表情で話を聞いている
「どうしたのかと考えてたんだが。いきなり後ろに気配を感じたから振り返ったんだ。そしたら澄と一緒に学園で入ったのによく似た入口が現れたんだ」
「え…?あの地下室の…?」
澄が驚いた様に言った事に翔は頷いて返す
「それで中に入ったは良いんだが…あの時とは違って何も出て来なかったし、ワープポイントも無かった。勿論そこでも魔力は感じ無かった。世界単位で魔法がかけられたのかと思ったよ」
あの時は澄や爺ちゃんの事まで疑ってしまった。認めたくないがそのくらい動揺していた
「でも…翔君は今ここにいるし…出られたんでしょ?」
澄が疑問をぶつけてくる。
「その事なんだけど…何かよく分からないんだなぁ…これが…」
「は、はぁ…?分からないって…」
真剣な顔をしていた澄が再び呆れた様に言った
「よく覚えてないんだよ…夢だったって方がまだ現実実があるけど…凄くリアルだったし…まぁ澄には報告しといた方が良いと思っただけだからな」
「…でも翔君が無事で良かった…勝手に危ない事しないでよね?心配になるじゃない…」
そう言って澄が寄り添ってくる。あの状況では入る以外に手段が無かったのだが…まぁそれは言わないでおこう。絶対反論されるしな。そう思って寄り添って、と言うかしがみついて泣きそうになっている澄をどうしようかと考えていると、いきなり袖を引っ張られた
「…翔君…澄ちゃん…何してる…?」
「げ…!真夕先輩!?何でここに…!?」
澄と翔は驚いて、サッと距離をとった。後ろから声をかけられたので見られてはないようだ。あんなの見られたらまた変な噂が…
「…こんな所で…抱き合うなんて…」
しっかり見られてました…
「えーっと、あれはですねぇ…」
…ギュッ…
何かこの状況を打開出来る魔法のワードはないものかと考えていると、いきなり前から抱き付かれた
「せ、先輩…?」
そ、そんな無表情に抱き付かれても
「ちょ…真夕先輩!?何してるんですか!?」
「…澄ちゃん…やった事…」
「…なっ…!?」
ちらっと澄の方を見たかと思うといきなりパッと離れた。
「…そろそろ…皆…来る…澄ちゃん…今みたいの…だめ…」
そう言って真夕は自分の席についた
澄が真っ赤になっている横で翔は呆然とその場に立ち尽くしてしまった
更新が遅れて誠に申し訳ありませんでした。テストが終わり次第ペースを上げようと思うので、宜しくお願いします。読者の皆様には大変ご迷惑を御かけします