第22話:戦に向けて ver澄
今回は澄の視点での物語です
澄達は翔達と別れてから商店街に衣装探しに来ていた
「優ちゃん?何作るか決まってるの?」
澄がそう聞くと優は首を横に振る。はぁ…やっぱり…まぁいきなりあんなプリント見せられても考え付かないよね…
「取り敢えず澄ちゃん、琴先輩の好みとか知ってるでしょ?そこら辺から攻めてみるってのはどうかな?」
魔夜ちゃんはなかなか的を射た事を言うなぁ。お姉ちゃんの好きな物…やっぱり猫かな…?
「やっぱり猫…とかかな…?部屋とか猫でいっぱいだし…」
こう考えるとお姉ちゃんって結構危ない人だよね…真夕先輩の猫耳もお姉ちゃんが付けたらしいし…付け続ける真夕先輩も真夕先輩だけど…
「ふっ…つまり猫耳は必須ね…それはそれとして…翔は猫耳とかどうなのかしら…?」
優が指を顎に当てて考える。翔君か…あんまり特殊な趣味はなさそうだけど…あ!そう言えば!
「翔君って真夕先輩を家に呼んだ事があったわ!」
「え…それって副会長の…!?」
澄が思い出した様に言う。この前は優ちゃんを捜してる間に怒りのせいで目的変わって真夕先輩に真実を聞きに行ったんだっけ…
「へぇ…翔…そんな事してたんだぁ…」
「ゆ、優、あのね?篠原君は多分無理矢理…」
「いいのよ魔夜…翔に弁護は不要…様子がおかしいのはわかってたから…ふふふ…」
優が怪しく唇を歪め、魔夜は、ごめんね篠原君…私にはダメだった…と呟いた。う〜ん…まぁ私の家に来た事を眩ませられたし翔君には犠牲になってもらおう…私も一緒に連れてってくれなかった罰よ
「やっぱり翔を美里と命側に付けたのは失敗だったかな…今頃何やってるんだか…」
「さすがに翔君も鬼畜じゃないし大丈夫じゃないかな…?」
大体そんなことされたら隣りで寝たり抱き付いたりしたのに何もされなかった私の立場がないし…紳士なんだか意気地無しなんだか鈍感なんだか…って、こ、これじゃあ私が何かして欲しかったみたいじゃない!?確かに起きた時には拍子抜けしたかもしれないけど…でもでも!
「澄ちゃん…?顔赤いよ…?どうかしたの?」
魔夜が心配そうに覗き込んでくる。いつの間にか顔に出てしまっていたらしい
「あ、いや、何でもないよ?うん♪」
「そ、そう?」
慌てて返すと声が少し裏返ってしまった。もう、全部翔君のせいよ…今度皆の前で甘えて困らせてやるんだから…!と結局そんな結論に至った。怒りつつも少し顔がニヤけてしまう。そんな澄を魔夜と優が少し心配そうに見ていたと補足しておく。
「話を戻すけど…衣装…本当にどうしましょうか?」
魔夜にそう言われて澄が現実に戻ってくる。
「猫耳…今は猫耳メイド喫茶とかあったわよね?」
頭の隅にあった知識に猫耳メイドというのが在ったので提案してみる。勿論教えたのは琴で、制服を手に入れるためにバイトに入ってくれと頼まれたのが出所だ。軽くお仕置したけどね…
「うーん…それは他の誰かと被りそうじゃない…?もっと違う…在りそうでも普通出来なさそうな…そんなのが良いんだけど…」
優の意見はわかるがそれは結構難しいと思う…何か良いアイデアはないかな…
「そう言えば衣装をそのまま戦闘服として使うって聞いたんだけど…二人は大丈夫なの?」
優の強さは何となくわかっていたが、取り敢えず澄が聞いてみると、優は大丈夫よ。と笑った
「私にはそう簡単に触れさせないわ…勿論魔夜にもね…取り敢えず翔や奏先生が乱入してこない限り大丈夫だと思うわ」
うーん頼もしいなぁ優ちゃん。事実翔君に撃ってる魔法も無詠唱であの密度だし。かなりの魔力と技術の持ち主だろう。
「だからとにかく可愛い衣装が欲しいのよ。…もう全身クリームとかじゃダメかしら?」
優が危ない事を言い出す。うーんそれは先生に止められ…ないだろうなぁ…あの先生だし。私だったら速攻で却下だけどこの二人ならやりそうだなぁ…魔夜ちゃんも以外と大胆そうだし…そう思って止めようとすると
「ねぇ、そこの君達。俺達と向こうのカラオケ行かない?奢ってやるからさ」
そう言って5、6人の男達が囲むようにナンパしてくる。私も前にやられた事がある逃げられないように大人数で迫る悪質なタイプだ。私の時は全員の首から下を石に変えてから警察に突き出したんだけど…
「なぁ良いだろ?」
「うっさいわねぇ…考えて事してる時くらい静かにしなさいよ…」
優はそう言って相手を睨み付けた。その姿は最早歴戦の…じゃなかった!優ちゃんが暴れたら死人が出るって翔君言ってたし!こんな皆が見てる中で殺人事件なんて…でも簡単には開放してくれそうにないし…
「生意気な…お前らは素直に付いて来てれば『吹き飛べ…』ぐふっ…」
詰め寄って来た男が一瞬の内に壁の方に叩き付けられる
「なっ…」
優の言葉通りに吹き飛んだ男を見て、今まで調子の良かった男達が絶句する
「あ〜もう…あんた達のせいで折角出て来たアイデアを忘れちゃったじゃない…どうしてくれんのよ…こっちは翔と一緒に居られる時間が増えるかどうかの瀬戸際だって言うのに…」
「この魔法…貴方はまさか…!」
そう言って今度は全員の身体に呪縛をかけて全身を動けなくさせた。不良達が何か言っているが優は気にしない。アイデア…本当に出てたのかなぁ…それに翔君への執着も…なんだか少し複雑だなぁ…
「それじゃあ…アイデアが浮かぶまでサンドバッグになってもらいましょうか…?カラオケには行けないけどそれで我慢してね…?」
「「ひいっ…!」」
優がにこっと笑う。それと同時に男達の顔が戦慄に変わる。…なんだか翔君の気持ちがわかった気がする…優ちゃんの眼が笑ってないし…凄く怖い…これは絶対に殺人事件に発展する…
「ちょっと優…こんな所で殺人事件は不味いわよ…翔君にも言われてるでしょ?」
「う…」
魔夜の言葉に優の動きが止まる。流石は魔夜。まだそんなに時間は経ってないけどパートナーと言うだけある
「ほらほら、その魔法解いて」
「わかったわよ…はぁ…」
パッと呪縛が解かれる。それを見て魔夜は、うんうんと満足そうに頷いて不良達の方を見てにこっと笑いながら言った
「もうこんな事しちゃダメよ?」
「「「あ、ありがとう御座います姐さん方!!!」」」
そんな不良達の言葉にしばしの沈黙…えーっと…姐さん…?
「あ〜えーっと…姐さん…って?」
魔夜が困惑した様に聞く。
「お、御蔭で助かりました!姐さん方は俺らの命の恩人です…!」
「どうか姐さんと呼ばせて下さい!」
そう言って不良達は頭を下げる。姐さんって…ヤの付く職業の方じゃあるまいし…
「姐さん…ぷっ…良いんじゃない?うんって言っときなさいよ」
優が困る魔夜を見てクスクスと笑いながら言った。だが直ぐに不良達は優の方にも声をかけて来た
「そして!申し訳ありませんでした優様!」
「は…はぁ?何で私の名前知ってるのよ…?」
優はこいつら変態か?という眼で男達を見た
「この圧倒的な強さ…貴方の名前は有名です。そんな方とはいざ知らず、無礼な行動を御許し下さい!」
…有名なんだ流石は優ちゃん…と失礼な事を考えてしまう
二人の方を見ると二人とも困ってしまっているのが良く分かる。道の真ん中で土下座するんだもんなぁ…皆見てるし…。どう解決するか悩んでいると騒ぎを聞き付けた警官が向かって来るのが見えた。
それを見て優が顔をしかめる
「…不味いわね…いつもは翔が話をつけてくれるんだけど…私そう言うの苦手だし…」
「そ、そうなんだ…翔君…翔君の気持ち…察するわ…」
澄が額に手を当てて溜息をつく。どうすべきか考えていると魔夜が、そうだ、と手を立てた
「貴方達、姐さんって呼んでもいいから警察の人を何とかしてくれない?」
「い、良いんですか!?」
「ええ♪私達の名前は言っちゃダメよ?」
「「「御任せください姐さん!!」」」
そう言って不良達は魔夜達を隠す様に立った
「姐さん方!早く行って下さい!」
「ふふふ…ありがと♪」
そう言ってさっさとその場から退避する。魔夜ちゃんって意外と黒い人なんじゃないだろうかと、ふと思ってしまう。そして魔夜は走りながら言った
「ねぇ優…衣装…今思い付いたわ♪」
「本当!?もしかして姐さんスタイル!?」
姐さんスタイル…ってどんなのだろう…
「ち、違うわよ!まぁ…猫耳は付くんだけどね…?ふふふ♪」
魔夜は楽しそうに笑った。澄はこんな風に騒がしい一日もたまには悪くはないかな…と思って微笑を漏らした