第15話:波乱の御島家!?(澄の過去編)
「うーん、良い天気ねぇ♪雲一つない晴天♪」
「……まだ雨だった方が奴等に会う可能性も低かったのに…」
翔が恨めしそうに空を見上げて溜息を付く
「もう…そんなことばっかり言ってないで楽しもうよ…私と居てもツマんないの?」
「そ、そんなことは断じて無い!神に誓って無い!」
「本当に…?」
「本当だって!」
だから上目遣いを止めてくれ…と付け加える
「そっかそっか♪上目遣いすれば翔君は言う事聞いてくれるんだね♪」
「いや…俺に限らずかなりの男が…って、おい!」
「なぁに?翔君♪」
「うっ…」
澄が上目遣いに翔を見上げる
また上目遣い…素で抵抗出来ない……何と言うか、私服の澄はいつもより可愛く見えるし、学園に着ていっている魔女のような黒い制服とは違って何だか新鮮な感じがする。制服も露出が無いわけでは無いけれども、今着ている服は澄の白い二の腕とか足とかが……だめだ、あれは男をだめにする…
「翔君…?何だか眼がえっちだよ?…もしかして、変な事想像してるの…?」
うっ…鋭い…
「イエ?メッソウモゴザイマセン」
うーん、怪しいなぁ?と言いつつ澄も楽しそうに笑う
「…まぁいいわ、翔君も男の子だし♪」
「だから、して無いって!」
「まぁ、そういう事にしといてあげる♪」
完璧に澄のペースだ。今日一日これだったら身が持たないな…そう思って少し反撃に出る
「それにしても随分と楽しそうだな?そうかそうか、そんなに俺とのデートが楽しみだったか」
「ふぇ!?な、何を言ってるのかな翔君は!?」
翔の言葉に澄は耳まで真っ赤にしてしまった
少し仕返しするだけのつもりだったんだが…予想以上に動揺してるな…
面白くなったので更に言ってみる
「だってこれデートだよな?午前中から2人で買い物に行くなんて普通は恋人くらいだしな?周りから見たらそう見えるだろうな」
自分で言っていてたしかにそうだよなぁ、と納得する。そして言われた澄の方はますます顔を赤くした
「だ、だって私達パートナーだし、パートナーは一緒だし、買い物はパートナーだし!!」
「いや、意味わからねぇよ」
翔が澄の反論を聞いて笑う
「だってだって、いひゃ!?」
舌噛んだな…
「きゅぅ…翔君のせいだょ…?」
「俺のせいかよ!」
「翔君が変な事言うからだもん!!」
口を押さえながら、じぃっと睨んでくる。いや、まぁ怖いと言うよりは可愛さが勝ってる感じなんだけど…眼とか潤んでるし…
「もう!行くよ!」
そう言って澄は翔の腕に自分の腕を絡めて歩き出す
一方の翔は絡められた腕を見てさっきの澄に負けず劣らず顔を赤くしていた。真夕の時とは全く逆の展開だった
「ここに居ると魔夜辺りが優を連れて出てきそうで怖いんですが…」
翔と澄が来た場所は先週に真夕と辰と来て魔夜にあったデパートの全く同じ階であった
「大丈夫よ♪そうそう何回も会わないから♪」
本当に自信満々だよな…根拠はどこにも無いんだろうけど…半ば諦めが入った眼で澄を見ると既に買い物モード全開で服を見比べていた
「うーん…やっぱり迷っちゃうなぁ…」
「道にか?」
「違うよ!気にしてるのに…」
澄が意地悪…と言って睨む、澄の方向オンチはそこまで酷いわけじゃないが気にしているようだ。少し気が晴れた、仕返しだ
「ああ、悪い悪い。で?どれとどれで迷ってるんだ?」
「これとこれとこれと、あ!これも良いなぁ」
次々と候補が増えていく、これじゃあ決まりそうにない。多少は優や男のくせに迷う辰で慣れているが…
「まったく…皆同じだよなぁ…」
翔が呆れていると、一着の服が眼に止まった。それは清楚な感じの白いワンピースで澄にとても似合いそうだった
「うーん…澄、これなんかどうだ?白いワンピースなんだけど…」
翔に差し出されて澄はそのワンピースを手に取ってみる
「わぁ…これ可愛い…」
「だろ?」
澄はそのワンピースを見つめて少し考えているようだ
「でも…私に似合うかなぁ…?なんだか逆に服に着られちゃいそうだし…」
可愛い服は似合わないと思っているのだろうか?澄ならどんな服でも着こなせる気がするのだが、本当にそう思っているようだ
「そんなことないと思うけどなぁ…澄なら凄く似合うと思うよ?」
「…本当にそう思う…?」
「こんな事で嘘ついてもしょうがないだろ?」
前から白も似合うと思っていたし、着てもらいたい感じがする。第一に似合うと思ったから薦めたのだ
「よし!じゃあこれに決めた!翔君も着て欲しそうだし♪」
「ぐっ…まぁそれは…多少…」
図星を突かれた、本当の事だから反論も出来ない。まぁ澄も喜んでるしいいか…
「それじゃあ、買ってくるからちょっと待っててね♪」
翔は澄がそう言ってレジに行こうとしたのを腕を掴んで止めた
「あ〜、なんつーか…俺が薦めたんだし買ってやるよ」
翔がそういうと澄は驚いたように翔を見る
「え!?い、いいの?女の子の服って結構高いんだよ?」
「値段なら優に付き合わされてる知ってるよ。まぁパートナーになった記念みたいに思えばいいって」
「翔君…うん、わかった」
「よし、それじゃあちょっと待ってろよ」
そう言ってワンピースを澄から受け取りレジに並んだ。
「ふぅ…あんなに楽しく買い物したのも久し振りだなぁ♪」
澄はすっかりご機嫌な様子でワンピースが入った袋を大事そうに持っている、空いている方の腕を絡めて…って澄は俺を誘惑してるのか?
「そんなに喜んでくれるんなら薦めたかいがあったな」
翔がワンピースの入った袋を見ながら言う
「うん、なんだか凄く気に入っちゃった♪とっても可愛いし♪」
「それは良かった、そこまで喜んでくれるとは思ってなかったんだけどな、似合いそうだから薦めただけだし」
「でも翔君とパートナーを組んだ記念なんでしょ?嬉しいよ…」
翔君からのプレゼントだし…と小声で付け加えたが翔にそれは聞こえなかった
「…さてと♪どっかでご飯食べよ?私お腹空いちゃった♪」
「そうだな、ここら辺は喫茶店が沢山あるから場所には困らないし」
そう言って近くにある喫茶店に入った
喫茶店に入って、席に案内された翔と澄は向かい合うように座った
「ここは私に奢らせてね?さっきお金使わせちゃったし」
「それじゃあ頼むとするかな」
事実さっきの買い物で手持ちが寂しくなっていたし、ありがたく奢られよう
「それじゃあ、やって見たかった全メニュー注文を…」
「翔君…?止めてね…?ここのお店にこれ以上トラウマ残したくないから…」
「そういえば、そんなこと言ってたな…」
ここの店は歓迎会でも使った。確か澄も琴先輩に色々やらされてたんだっけ…と前の澄の発言とその時の表情を思い出す
「あの時は本当にびびったからな…あの生徒会のトップ2人は…」
「特にお姉ちゃんはねぇ…でも、あれで成績も学年トップだし、何でも起用にこなしちゃうし。我が姉ながら凄いと思うわよ…」
澄がふぅ…と溜息をつきながら言う
「ははは…そうなんだ。でも琴先輩は優と魔夜の事を簡単に引き受けてくれたし、取っ付き易いし、やっぱり良い人なんだよな」
あの親しみやすい人柄のは生徒会長になる理由の一つなんだろうと思う
「そうね、要領も良いし……私とは大違い…」
「へ…?どうした?」
一瞬、澄の顔に影が落ちた気がした
「え…?う、ううん!何でも無いよ♪」
「そうか…?」
しかし、すぐにいつもの笑顔に戻ったので翔は不審に思いつつも特に気にはしなかった。しかし、その笑顔はヒソヒソと聞こえた声に崩れた
「あれって御島さんよね?」
「あ…本当ね。向かいは…彼氏?相変わらずモテてる見たいで結構な事ねぇ」
「告白されても皆断ってるって聞いたけど?」
「さぁね?あの外面で男騙して遊んでるんじゃない?」
2人の女は口々にそんなことを言うが、澄は黙ったままだ。それをいい事にその二人組みの話はどんどんエスカレートしていく。翔はその2人が何で澄の事を知っているかや、何故澄が何も言わないのかなどの疑問が浮かんだがそれを聞く前に体が動いていた
「おい、あんたら。澄に何か言いたい事あんのかよ…!」
「翔君…!?」
翔は女…恐らく同じ年齢らしい2人に近付くと吐き捨てる様に言った。澄はそんな翔を呆然と見つめている。すると茶髪の明らかに澄を批判していた方が眼をそらす
「…別に…?詰め寄られるような事した覚えはないけど?」
「なんだと…?」
茶髪の女は嘲笑うように言った。相手が女で助かった、男であったなら自分は暴力を行使していたかもしれない。そしてその女は続けて言った
「あんたもおめでたい人ね?その女にいいようにされて、その紙袋はプレゼントかしら?やっぱりただの…」
パンッ!!
金蔓とでも言おうとしたのかもしれない。しかし、その女が次の言葉を発する事は無かった。女が言葉を紡ぐ前に澄がその女の顔に平手打ちをしていた
「っ…!何を…」
女が反発する
「私の事を悪く言うのは構わない…でも、翔君と…この服の事だけは…絶対に許さない…!!」
「……」
2人は澄に怒鳴られて身が竦んでいるようだ。眼に涙を滲ませ、声を荒げる澄に翔までもが呆然としてしまった
「翔君…行こ…?」
「え…?ああ…」
翔がうなずくと澄は翔の手を引き、そのまま店をでた。店内はシンと静まり返っていた
澄に手を引かれて翔は近くにある公園まで来ていた。翔は澄を公園のベンチに座らせると自分もその隣りに座る。しばらく座っていると澄の方から口を開いた
「ごめんね…」
「え…?」
いきなり謝られて翔は困惑したが、さっきの事で謝っているのだとわかった
「何謝ってるんだよ、澄が謝る事なんて何も無いだろ?」
「うん、でも…ごめんね…」
「……」
澄は俯いたままだ。そして、話だした
「さっきの子達は多分…中学校の同級生だと思う…」
「だと思うって…」
淡々とした口調で澄は続ける
「私が知らなくても中学校の同級生は皆私の事知ってたから…」
「まぁ、澄は勉強も出来ただろうし、学校での人気も高かっただろうしな…わからなくは無いけど…」
澄は性格も良いし容姿も文句なしに美人だと思う、別に疑いはしなかった。
「そんなんじゃない……私…」
少し迷ってるようだったが、澄は言った
「苛められてたの…皆に…」
「え…?」
いきなりの事にそれは無いだろうと思ったがさっきの事を思い出し、澄に訪ねる
「苛められてた…?澄がか…?」
「うん…」
澄は、さっきから繋いだままの翔の手に力を入れた
「私…小学校の頃から、結構モテてたんだよ…?」
澄は苦笑する
「まぁ、それは…そうだろうな…」
「…でも、男の子が可愛いって言ってくれたり、告白したりしてくれても別に嬉しくなんかなかった…皆、私の事怖がってたから…」
澄の眼には悲しみの色が広がり、また涙が浮かんできていた
「ほら、私って結構魔力高いでしょ…?小さい頃から魔法は得意だったし、皆の前や授業でも使ってたしね。でもね、魔力が強すぎた見たいで…」
「なるほどな…」
魔法は強大な力だ。この前の魔法を見る限りでは小学校の魔法を専門としていない教師の魔力など軽く凌駕しただろう
「先生よりも強い魔力に怖がられちゃって…だから、告白されても容姿だけで決められてるんだってすぐわかった。怖がるなら告白なんかするなって感じよ…」
澄が吐き捨てるように言った
「でも、それが苛めにどう関係してるんだ?」
澄が翔の問に答える
「うん…だからね?さっきあの子が言ってた通り、誰とも付き合わなかったの。だって嫌なんだもん…。でも、そんなことしてる内に最初は女の子から生意気な奴だって思われて陰口とか言われるようになったの…元々怖がられてると思ってたてて自分から友達を作ろうともしてなかったから、すぐに女の子の中で孤立しちゃって…そしたら、告白してもダメな女より、って思ったのかもしれないけど男の子も皆向うについた。魔法は相変わらず一番だったから皆怖がって直接の害は無かったけど…陰口と無視とかは続いてね。同性の上級生にはお姉ちゃんがいたからそうでも無かったんだけどね…?」
お姉ちゃんは私とは違って要領良くできるからと付け加えた
「そんなことがあったのか…」
正直信じられない。今の学園での澄からは全く感じ取れなかったから。でも、澄の眼からこぼれる涙が本当にあった事だったと訴えている。翔は自分の不甲斐なさを悔やんだ
「謝らなきゃいけないのは俺の方だな…」
「え…?」
「澄…そんなことがあって、今までの学園生活も…怖かったんだろ…?苦しかったんだろ…?いつまた同じ様になるかわからなくて……一番側にいたのは俺なのに…」
知らなかったなどと言うつもりは無かった。気付かなかったのは事実だ
「う…ん、怖くて、わ…たし…明るく…しなきゃ…嫌われちゃう…って…翔君…にも…」
澄は翔の腕にしがみついて嗚咽を漏らしている
「澄、ごめん…」
翔の言葉に澄は更に強くしがみつく
「翔…くぅ…んっ…でもっ…嬉しか…ったの…プレゼント…翔君も…一緒に…いると、…楽しくて、初めて…で…プレゼントも…楽しい…のも」
「澄…」
片手を澄の背中に回し、もう片手で、澄の髪を梳くようにする
「だからっ…あの時…許せなくて…翔君と…私達の…記念…」
さっき怒鳴った時の事だろう。似合うと思って買ったプレゼントだったが、澄がそこまでに思ってくれて素直に嬉しく思った。澄が自分の事で怒ってくれた事にも
「澄がそんな風に思ってくれて嬉しいよ…もうこれからは怖がる必要はないから…パートナーなんだろ?他の奴等が何て言おうと、俺は澄の味方でいるからさ」
「…うん…」
翔がそういうと澄は疲れたのだろうか、翔の腕の中で眼を閉じた。翔はそんな澄をあやすように撫で続けた
「うぅ…ん…あれ?私寝ちゃったの…?」
澄が眼を覚ます、あれから何時間も過ぎていて辺りは夕焼けに染まっていた
「ああ、全然起きないから取り敢えず帰ろうと思ってな」
澄は翔の背中に背負われている。
あんなに気持ち良さそうに寝られたら起こせないし、だからっていつまでもあそこに居てもしょうがないので背負って帰ろうとしたのだ
「うう…翔君重くない…?」
「他に女を背負った事が無いからわからないけど重くはないんじゃないか?」
翔がそういうと澄はギュッと翔にしがみつく腕を強くする
「ぐぇ…な、なんだよいきなり!!」
「もう!私は絶賛傷心中の女の子なんだよ!そういう時はそんなことないよって優しく言う物なんだから!」
「なんじゃそりゃ…」
翔は呆れたような顔をして溜息をついた。あんな事があったあとだからと心配していたがどうやら大丈夫なようだ
「…翔君の背中って落ち着くなぁ…ずっとこうして居たいかも…」
澄は再び眼を閉じる
「……」
澄は翔の背中に頬を擦りよせ、さっきとは違う柔らかい力で翔の首を包み込んだ。
「翔君は何でこんなに安心させてくれるのかな?不思議だよねぇ…最初に会った時からそうだった…」
翔は何も言わない、ただ澄の紡ぐ言葉を聞きながら歩く
「魔法の波長が近いと気があったりするって言うじゃない?私も最初はそう思ったの…けど、そんなのじゃないの…何かあるの…翔君だけが持ってるの…私を安心させてくれる何かを…」
澄は眼を閉じてそういった。だがすぐに眼を開けて次の言葉を発した
「なんてね。…翔君、私忘れないよ?ずっと味方でいるって言った事。ずっと忘れないから…側にいてくれなきゃやだよ…?」
翔はそんな澄の懇願に微笑を含ませた顔で答えた
「澄が忘れても俺が覚えてるよ、心配しなくても俺は澄の側にいるって。」
「うん…」
澄は安心したように笑みをこぼし、もう一度頬を擦りよせた。
「…そういえば澄の発言って客観的に聞くとかなりあれだよなぁ?」
「あれ…?」
澄は翔の発言の意味が全くわかっていないと言う様に首を傾げた。
「だから、澄の言ってるのって客観的に聞くと完全に愛の告白だぞ?」
翔の言葉を聞いて澄が硬直する。そして硬直した澄が徐々に真っ赤になっていく。耳の先まで真っ赤になったが澄は固まったままだ
「おーい…澄さんやぁ…」
その言葉で澄が我にかえる
「あ、え、ち、違うんだよ!?そんなんじゃなくて!私はただ!と、とにかく、違うの!」
澄はわけがわからない感じでまくし立てた。翔はそんな澄がおかしくてつい笑ってしまった
「もう…笑わないでよぉ…」
「悪い悪い。ちゃんとわかってるって、それより家についたぞ?」
話ている間に家についてしまったようだった。そこで背中に背負った澄を降ろす
「背負ってくれてありがとね♪そうだ!ご飯くらい食べてってよ!ね、翔君?」
「まぁそうだな、じゃあご馳走になるかな、ちょっと興味あるし」
翔はそういって再び澄と共に家に上がった
こんにちは八神です。自分的にはかなり久し振りのUPな気がします。 恋:「今回はなんだか少しシリアス混じってるがこの小説では珍しいな?」 そうですねぇ…こういうのが嫌な人はごめんなさい。けど最初から決めてたんですよね。 恋:「枠にハマったやり方しか出来ない作者か…」 またそういう事言う…性格悪いと独身から脱出できませんよ? 恋:「ふふふ…八神…許さんぞ…」 あ…ヤバい、それじゃあそろそろここら辺で… 恋:「あ、待て!…チッ、逃げるの上手くなったか……さて、良ければ感想、評価を頂けると嬉しいです♪それではまた次回お会いしましょう…」