第12話:ネコミミ調査員の一日
「おぃ〜す…」
「皆おはよ〜♪」
「翔さん、優さんおはようございます♪」
「おはよう。翔殿はまた随分と眠そうだな?」
翔と優がいつも通り挨拶して教室に入ると美里と命が一緒に挨拶を返してくる、相変わらず仲が良くて結構な事だ
「翔、そう言えば昨日頼んだ生徒会の件だけど…」
「ん?ああ、取り敢えず琴先輩に言っといた、澄も口添えしてくれたし大丈夫だろ?」
「そっか♪魔夜にも報告しとこっと」
上機嫌で何よりだ。しかし、会長に直接演説の支援をしてもらうのか…優と魔夜が生徒会に入るのは間違ないだろうな…入っても怖いが、落選したらそれはそれで八つ当たりされるしな…理不尽が過ぎる…
「生徒会…ですかぁ…」
「ふむ、私達もやって見るか…?やりたいんだろう?」
「え…いや、まぁ、その…ちょっと興味あるかなぁ見たいな…あははは…」
美里が入りたいと思うなら嫌がる理由は無い、むしろ危険な人が入ってくるよりマシだ。危険な人がどういう人かは決っている、主に優とか優とか優とか優とか色んな意味で…生徒会室でも魔弾が飛んでくるのか…
「それで翔殿、誰か頼めそうな人はいないか?出来れば会長に負けないような…」
「いやいや、会長の何に負けないんだよ!まぁ会長に勝てると言う意味では澄ともう一人…」
真夕先輩がいたなぁなどと思案する、ある意味無敵だもんな。あの純粋無垢なネコミミ少女は
「よし、その人で頼む!必ずや美里を生徒会に入れて見せる!」
「あ、ありがとう命ちゃん♪」
あ〜、そんな笑顔で言われたら断れない、まぁ断るつもりもないし。
「わかったよ、まぁたぶん承諾してくれると思うから」
「さすが翔さん、優しいです♪」
と、なると今日の放課後か…
「構わない…」
予想通り承諾、それも即答だし
「でも…翔君…聞きたい事がある…」
「聞きたい事?何ですか?」
真夕は翔の眼を見つめながら言った
「翔君…女の子の知り合い多すぎ…どこで引っ掛けてくる…?気になる…」
…なんか凄いナンパ師みたいに思われてないですか…?俺すごく傷付くんですが?特にこの無垢な先輩に言われると…
「そっかそっか…翔ちゃんが街にいたのはそういう理由だったのかぁ、私もまんまと引っ掛けられちゃったわけね♪」
「翔君の周りって女の子多いもんねぇ…優ちゃんがいなかったら毎日ハーレムだったかもね」
今までどこで聞いていたのか御島姉妹が御光臨なさりやがった、あんまり誤解を植え付けないでくれ…
「夜の街…ハーレム………鬼畜…?」
胸を抉る一撃が…
「2人が言ってる事信じないで下さいよ……というか澄まで琴先輩側につかないでくれ…」
「えへへ、ちょっとやってみたくなっちゃって♪」
「澄?妻は旦那に尽くすものなのよ?ダメじゃない旦那を辱めちゃ♪」
「お姉ちゃん!もう、私はからかわなくて良いのぉ!クラスメイトとか先生からも言われてるんだから…」
澄は反応が面白いからなぁ…
「話…変わってる…戻していい…?」
「え?あ、ごめんね。まゆまゆ続けて♪」
やっぱり琴先輩の弱点は真夕先輩か、さすが無敵のネコミミ少女…あのネコミミって何で付けてるんだ?
そんな疑問をよそに真夕は続ける
「噂で…可愛い男の子にも…興味が」
「ありません!」
「翔君…怖い…」
…さすがにそれはスルーするわけにはいかない…色々な物を無くしそうだし…
「まぁ…色々な噂ある…だから…」
一旦言葉を区切り少し考える様にしてから真夕はいった
「明日…翔君…調査する…」
土曜…学校始まってからろくに休めた気がしなかったが、グッスリと眠れた気がする平和っていいな…
「翔君…起きる……これじゃあ澄…苦労するかも…」
ん。なんだ…?今日は休みのはずだが…
「翔君…」
翔君…?その言葉に疑問を覚えて、むくりと体を起こす
「………へ…?」
「やっと……起きた…?」
状況を整理してみよう、多分…と言うか今日は土曜、休日のはずだ。
まぁ辰と出かける予定があるので、俺が遅刻して辰が俺の部屋まで迎えにくると言う可能性はあるが、時計を見る限りまだ9時30分を少し過ぎたくらいだ。待ち合わせまでは時間がある。優が突然訪れる可能性が一番有力だな。きっと目の前にいるこの人は優で、俺は寝ぼけて真夕先輩と見間違えているんだ。そうだ、そうに決定。
「何ぶつぶつ言ってる…?今日は一日…翔君の行動を調査…」
「…はい?今何と?」
翔がそういうと真夕は少しも表情を変えずに言った
「…今日は…一日一緒…拒否権は…無い…」
…調査か…そんな事言ってたが、まさか本気だったとは…辰になんて言おう…てか何の調査なんだ?
「女関係…」
「うわ…だから何もありませんよ…」
「それは…調べれば明らかになる…楽しみ…」
…まぁ一日くらいならいいか…眼の保養が常に隣りにいると思えば…
「それじゃあ…朝ご飯出来てる…早く着替えて…降りてくる…」
「へ…?朝ご飯?」
真夕の発言につい声が裏返ってしまった、料理とかしそうに無かったからな意外だ
「何か…だめだった…?」
「え…いや、そんなことは…」
「そう…?なら降りてくる…」
真夕はそう言って部屋を出て行った
「んじゃ…さっさと着替えて行きますかね」
「おお…」
どんな物が出てくるのかと思っていたがなかなか旨そうだ、少なくとも俺が作るよりは確実に旨いだろう
「うむ、この卵の半熟具合が何とも言えんのぉ…ところで、お嬢さんはどなたかの?」
爺ちゃんいつの間に…てか誰だかわからないのに家に入れたのか?
「うんにゃ?散歩から帰ったらお嬢さんはいつの間にか入っていたんじゃ。」
「鍵空いてた…不用心…」
それは不法侵入だよ先輩…大体いつ家を調べたんだ…
「乙女の…秘密…」
「……」
「まぁそんなことはどうでも良い…翔坊、このお嬢さんを紹介しなさい、いつの間に朝飯を作ってくれるような美人を捕まえたんじゃ?」
うわぁ…嬉しそうだな爺ちゃん…まぁ何考えてるかは手にとるようにわかるけど。
「別に?生徒会の先輩で今日一日俺に付いて回るそうだ。なんでか知らないけどな。爺ちゃんが考えてるような事はないからな、安心しろ」
「ふむ、生徒会の…」
「渚真夕です…」
心なしか爺ちゃんが寂しそうだ…だがそう思ったのも一瞬で、すぐにいつもの眼に戻り質問を始めた。
「生徒会なら…翔坊のパートナーについて…」
うわ、一番危険な話題を…爺ちゃんが変な発言して真夕先輩が誤解したら…うん、逃げるか…
「あ、そうだ真夕先輩、辰と出かける約束してるんで行きましょう」
「む、そうか?今日は翔坊の部屋に泊まるのかの?」
「泊まらねぇよ!ほら、真夕先輩行きますよ」
「またきます…」
「うむ、いつでも来なさい」
「はぁ…」
ニコニコと手を振る爺さんを無視して翔は深い溜息をついた
「よう辰、待ったか」
少し早めに出たのだが、辰は約束の時間の30前には確実にいたりするのでいつもなんだか遅れたような気分になる
「いや、少し早く来たかし…それより翔…俺は翔を待ってたんだが…」
「まぁ、言いたい事はわかる」
辰の興味は明らかに自分より身長が10cmは小さいだろう人物へと向けられていた
「あ〜生徒会の真夕先輩だ。なんでここに居るかは…まぁ気にするな」
「…翔の周りはホントに女っ気が多いな…」
「質問…」
いきなり真夕が辰に声をかけた、質問?
「な、何ですか?」
辰も優や美里を見てアプローチをかけるほどには男子だが、流石に真夕が出す独特の空気に押されてしまっている
「翔君が…ハーレム作ってるって…本当…?」
いやいやいやいや、まてまてまてまて、澄の言葉を噛み砕いて変形させないでくださいよ
「翔、本当なのか…?前から天然の女殺し的な所があったがまさか…」
あれ?辰までそういう事いうの…?
「もうそのネタ疲れた…てか信じるな…カズが聞いたら確実に広まるから誰にも言うな…」
俺の周りの奴は色恋が話題になるとそろいもそろって敵に回るよな…友人関係何とかした方がいいのかな…
「冗談だって、そんな目するなよ。俺は翔との友情は続いて欲しいと思ってるんだからさ」
「意味深…」
真夕が辰の言葉に反応する
「あ〜真夕先輩!いちいち気にしない!ほら、辰行くぞ、服買いに行くんだろ」
翔は無理矢理話題を終わらせると真夕の手を取って歩き出した
「こういう行為がなぁ…本人意識して無いってのがまた…」
辰はそう言って苦笑する。
取られた手に戸惑いつつも少し顔を赤くする真夕に気が付いたのは辰一人であった
「う〜む、やっぱり迷うよなぁ…」
辰は二着の上着を手に持って悩んでいた
「なぁ、翔…どっちのが似合うかな?」
「ん〜そのストライプのはどうだ?俺は派手なのはちょっとな…」
「翔君…派手な服…嫌い…?」
隣りにいる真夕が質問をしてくる
「ん〜なんていうか黒とか地味な色の方が安心するな、真夕先輩はいつも今みたいな服着てるのか?」
真夕は純白のワンピースで人形の様な雰囲気だ、学園でみる服とは違うので何となく新鮮だ
「白は好き…でも黒は…喪服くらいしか…持って無い…」
喪服ときたか…まぁ何となく予想通りだな。真夕先輩自体真っ白なイメージがあるし、実際白いワンピースは似合っている、黒と言えば澄の制服は黒いか…白も似合いそうだが…
「翔君…どうしたの…?」
「へ…?あ、ああ、何でも無いですよ?ただ真夕先輩は白が似合いそうだなぁと」
澄に何が似合うかを考えてたなんて言ったら、後でどんな攻撃をされるかわからないからな、嘘は言ってないし。
そう言うと真夕は困ったような照れたような表情をする
「翔君…さっきから…ずっと…」
「さっきから、何です?」
「……何でも無い…」
なんなんだ?辰がニヤニヤしてるのも気になるが…
「あれれぇ?篠原君…?奇遇ね♪」
翔が辰と真夕の顔を見比べていると、軽い口調で名前を呼ばれた
「ん?げ…魔夜…なんでここに…」
「何がげ…よ!ふぅ…ただの買い物よ?それより篠原君がここに居る事の方が意外…あら?」
「…また…翔君の知り合い…?今度は女の子…」
くそ、不都合が重なりやがった…
「篠原君…幼女誘拐は不味いんじゃ…?」
誘拐ときたか…まぁ確かに見た目はそうだが…
「あ〜もう!違う!生徒会の真夕先輩だよ…先輩に見えないかもしれないけど…」
「副会長…」
「魔夜、翔の言う事は本当っぽいぞ?俺も未だに信じられないけどな」
辰の加勢がありがたい、普通信じられないだろうし…
「生徒会の副会長…?って事は会長のパートナーって事!?」
「いえす…」
会長のパートナーはそのまま副会長となる。光明は、片方が休みになったり急用が出来たりするともう片方がフォローに回るシステムとなっているのでそういう事になったと歓迎会で説明された
「あわわ…失礼しました…」
「気にしない…琴から聞いてる…よろしく…」
「ああ、そういえば琴先輩が魔夜と優を推薦する事になったんだよな、美里と命を合せると全員同じクラスからって事になるのか…」
「それに…翔君以外…女の子…」
「優は男ですよ…」
もう周りが優の性別を女だと認識してしまっている…まぁ普通は気付かないけどさ…
「まぁ、翔は鬼畜で決定でいいな?」
「優が新しい魔法の実験台を探してたな…辰、やってみるか…?」
「え。ちょっと待った…それは死ねと言ってる…?」
辰の事は後で優に連絡しよう
「それで…?篠原君はその真夕先輩と何してるの?倉田君もいるしデートって線は無いと思うけど…」
「ナンパしてないか…調査…」
と言うか、もう調査としては十分な気がする
「ふぅん…あ、優ちゃん待たせてるんだった!」
「優がきてるのか…!?」
今、真夕と優を接触したら真夕に変な誤解を与える可能性がある。
「あ、辰の買い物も終わったみたいだしそろそろ…」
「そう?それじゃあね♪」
「それじゃあ早く帰りましょう!今すぐ!」
「翔君…強引…」
翔は真夕を連れて急いでその場から逃げ出した
「はぁ…」
あの後、辰と解散して今は真夕と2人だ
「溜息は…幸せが逃げる…」
「ははは…それで、調査は済みましたか…?」
今日はもう勘弁してほしい、精神的にも体力的にもヤバい…
「翔君も疲れてる…だから…終わり…」
「そうですか…」
翔はほっと溜息を付く
「…翔君……?」
「え?はい、何ですか?」
「…えっと……」
「…?」
真夕は俯きながら言った
「今日…迷惑だった…?」
「へ…?」
まさか真夕がそんな事を言うとは思わなかったので、少し困惑してしまった
「…翔君……」
「あ〜いや、別にそんなこと無いですよ?辰と2人より楽しかったですし、その…朝飯も旨かったですし」
「そう…」
真夕は安心した様に息を付く
「……なら…また…遊びに来てもいい…?」
「え…」
「…ダメ……?」
そんな顔をされるとなぁ…
「…そうですね、調査とかは勘弁願いますけど、遊びにくるくらいなら全然いいですよ」
「……うん…」
そういうと真夕は緩めてうなずいた
「さてと、それじゃあ家まで送って行きますよ」
「翔君…送り狼…?」
こういう言葉だけは知ってるんだな…琴先輩の影響か…
「琴先輩みたいな事言わないでくださいよ…」
「パートナーのせい…しょうがない…」
真夕と翔はそんなことを話ながら帰路についた
こんにちは八神です。少し間が空いての更新となりました。恋:「全く怠けてるからこういう事になるんだよ」 相変わらず厳しいですね… 恋:「遅くなるのは感心しないなぁ?何やってたんだ?」 いや…その…買ってそのまま堪ったラノベとか読んでました… 恋:「…もう少し計画的に買い物をした方が良いと思うぞ…?」 ごもっともです…次回の更新はなるべく早くします… 恋:「それでは、今回も評価感想をお待ちしています」