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「どう思う?」
「樹くんのイケメン度が上がったと思います」
「賛成」
「わたしもそう思う」
「いや、森川くんのイケメン度も健在だと思う」
「それな」
「そこは高校時代からの安定だから。殿堂入りだから」
「何年連続首位獲得してると思ってんの」
「森川くんは別格でいいと思う」
「別格別格」
久しぶりの高校の集まり。
お酒も入っていい感じになっていた頃
女子たちは男子たちを見てひそひそと話し合っていた。
「それにしても樹くん…かっこいいね」
「ほんとに」
「何かが開花したねあれは」
「いわゆる大学デビュー?」
「いや、元がいいからね彼は」
「確かに」
「…そんなに、かっこいいかなぁ」
誰も聞いてないだろうと思ってぽろり、とその言葉を落とせば。
「は?」
「何いってんの」
「真奈美頭大丈夫?目みえてる?」
「お前の目は節穴か」
散々な言われ放題だった。
「(くそう……みんな聞いてるのかよ……)」
「樹くん彼女いるのかなー」
「どうかな、なんか女の子苦手っぽかったよね」
「あんまり話してないイメージ」
「でも彼女いるんじゃない?」
「いやいない、と思いたい」
「それはただの願望」
「ってことで、真奈美聞いてきてよ」
「……は?」
飲んでいたソルティードックを吹き出すところだった
なぜ、よりによって、私なんだ。
「いやいや、みんなが聞きにいきなよ。私無理無理」
「いいじゃん、かっこいいと思ってないんでしょ?」
「私らじゃ緊張しちゃって話せないもん」
「お願い!女子代表!がんばれ!!」
「無理だって!……わっ、」
無理だと主張しているのに。
そんなことは華麗にスルーされ、私は男子たちの席……、
樹くんの目の前に押し出された。
突然現れたわたしに驚く男子たち。
そりゃそうですよね。私男子と仲いいほうでもなかったし。
助けてよ!と思ってみんなのほうを向くけど、がんばれーという目線しかもらえなかった。くそう。
「相川さん、どうしたの?」
そう天使のような声かけをしてくれたのは、殿堂入りを果たした森川くんだ。
うん。かっこいい。別格でかっこいい。高校時代よりもさらにかっこいい。
染めてないさらさらの黒髪、いいですよね。ほんとに。
もう森川くんに彼女がいるのかどうか私はぜひ聞きたいですはい。
「相川、誰かに用でもあんの?」
次に声をかけてきたのが、目的である樹くんだ。
樹くんのくせに森川くんの隣キープしてるなよ!仲良しかよ!仲良しだったねそういえば!
「……、女子たちを代表して聞くんですけど、」
じっ、と樹くんの目を見ながら言うと樹くんは不思議そうな顔をしていた。
……くそ、やっぱりかっこいい、のかもしれない彼も。わかんないけど。森川くん派だけど。
なんてこと伝わらないように、できるだけ無表情で。
「樹くんは、彼女いるんですか」
わたしの言葉の意味を理解したとたん、ぷは、と大爆笑し始めた樹くん。
でしょうね。そうですよね。わかってましたよそんな反応するんだろうなってことぐらい。
だからイヤだったのに!
大爆笑している樹くんになんだなんだと不思議そうな顔をする男の子たち。そうですよね。
「それ、女子たちからの質問?相川自身からの質問?」
「女子たちからの質問です!」
ははは、と笑いながら聞いてくる 樹くん。
私が興味あるのは森川くんの彼女の有無です。
「いるよ、彼女。すっげー可愛い彼女が」
今までの爆笑していた笑顔とは違う、ふにゃ、っとした笑顔でそう答える樹くん。
なんてことを言うんだ君は。
そんなことを言ったら、わたしの後ろにいる人々が、
「え!樹くん彼女いるの!?」
「しかも可愛いの!?」
「どんな子!?どんな子!?写真ないの!?」
黙っているわけないじゃないのよ。
「うん、いるいる。写真は本人怒りそうだから見せられないけど」
そういいながら怒っている姿を想像したのか、またふにゃりと笑った。
……なんて顔して笑ってるんだ。いらっとする。
「えぇー、じゃあ、どんな子か教えてよ」
「年上?同い年?年下?」
「どんな系の子?」
私の後ろに控えていた女子たちが猛攻を始める。
そんなに勢いあるんだったら最初から自分たちで聞きなさいよ!まったく。
「んーとね、同い年の子。どんな系?うーん、たぶん、可愛いっていうより綺麗系なのかな?
でも俺から見るとすげー可愛い」
樹くんもお酒が入っているせいか、ぺらりぺらりとしゃべりだす。
それにつられてさらに攻める女子たち。怖い怖い。酔っ払い怖い。
「綺麗系!?へぇ!」
「俺からみるとどんなとこが可愛いの!?」
「いつから付き合ってんの!?出会いは!?」
「つんつんしてるけど、それ全部照れ隠しなんだよね。ぜんぜん隠れてないんだよね照れが。
普段はそんなことないけど俺の前とかだとそうなっちゃう感じがもう可愛くって可愛くって。
付き合ってもーすぐ一年になりまーす。出会いはないしょ。」
ふにゃふにゃ、幸せそうな笑顔でしゃべる樹くん。滅びろ。聞きたくない。
その幸せオーラにやられたのか赤面する女子たち。自爆か。
その後もぐいぐい女子たちは樹くんに攻めていった。
周りにいた男子たちも一緒になって攻めていってて、ぐいぐい祭りになってた。
ついでにお酒もぐいぐい進んでた。
もう樹くんののろけ話ばっかり。
私はそっとその場を離れ、黙々とつまみを食べていた。
山本樹はげてしまえ、と思いながら。
みんな出来上がったところで時間がきてしまい、カラオケに行くか、帰るかってところで
とりあえずお店の前でうだうだしてたときだった。