表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

EP.4 綺麗な。

 開発課の私がいつも見てないといけない、命が吹き飛んでく光景。その光景の中に今私はいる。硫酸の試験管を不気味なエンジン音の中にに投げては、すかさず銃を撃つ。幸いなことに、後ろは転生者が止めてくれているが、こんな量、

「っと、危な」

油断も隙もない。まずは前の、魔獣を処理しないと。こんなんじゃ生存者を探せない、四方八方からゴキブリみたいに、しかも、早い、こんなん探す前に体力がつきる。どうすれば、どうすればいいの?ダメ、前に集中しなきゃ。でも、こんな量じゃ、いや、地区長の期待に応えないと、地区長が私を信頼してくれたんだから。


って、え?


気づけば前には転生者が前に立っていた。どんどん魔獣の方へ一人で進んでいく。

「何やってるの!」

咄嗟の言葉もエンジン音に遮られてしまう。試験管を投げて投げて、撃って撃って、もうキリがない。なんで一人で、気でも狂っ

ダメだそんなことを気にしてる余裕がない!早く切り抜けないと。


ばりっ、ぼりっ


エンジン音それに紛れ、砕けたような異様な音が混じる。同時にその景色から彼の口が見えた。その度、転生者の方が心配だけど、今はそんな暇は、もう、彼を置いて逃げいやそんなことダメ!何考えてんの!犠牲は極力出さないって決めたでしょうが!


ばん


銃声、その音と同時に赤い液体が目に映る。彼が、彼が、自分の喉を、

「何、やってるの……」

見れば、彼の先には歯形がついた魔獣。彼は真っ赤な喉から


「モクシロク」


確かに、そう言った。それに呼応して壁にヒビが入りぱっくりと開く。

なん、なの。なに、あれ。目、目だ。目が、彼をじっと見てる、無数の目が彼を、じっと。目を離せなかった。そして、鼻をつんざくような焦げた匂いがした。無数の触手、タイヤが彼に傷をつけても彼はそれに構わず、体制を変えず、撃った。その姿は人よりも魔獣そっち側を彷彿とさせた。でも、これならなんとかなるかもしれない。今のうちに、上に上がって生存者を探せば。そう考えると自然と足が階段のほうへと向かった。私が離れるのは生存者を探すため、そう探すため。怖いからなんかじゃない。パッと後ろを見た。彼の後ろ姿は、なぜか思っているよりも数倍小さいものに感じた。


足音と心臓の鼓動が響く中、肉が刺される音、裂かれる音はずっと聞こえてるけど、それが止む気配もなく、ただただ遠ざかっていくだけで、それがなんだか、こう、なんとも、言えなくて、駆け足で階段を駆け上がった。いつしか音は私の足音だけになっていた。それでも焦げ臭い匂いだけは鼻にずっとこびりついていた。……私、彼を置いて逃げちゃった。仕事なのに、


* * ♤ * * ♤ * * ♤ * * ♤ * *


駆け上がって、目にしたのは普段と何一つ変わらない、いつもの駐車場だった。なのに、車がここまで恐ろしく見える。そんな駐車場に


どん


音が響いた。階段の方からだ。


どんどん


どんどんどんどん


生存者だろうか?あれ、鍵かかってない。


「開いてますよ」


がちゃ

ドアが開いた。誰もいない。周りを見回しても誰も。


ぼとっ


私はその音に反応する。ドアから、どろりと緑の液体がたれ、塊となって落ちた音だった。それは一つの車ほどの大きな塊になって、その姿を見せる。

不定形でまぶしいほどの蛍光色で、透き通ったその体の中には、


骨とまだ動いている人の体があった。

ぶるるるっぐ

ぶるぐあああ!!!!

動きが速い!避けきれないほどじゃないけど、避け続けたら、体内の人の体力と息が続かない。銃は?ダメだ、もし中の人に当たったら、ってなると硫酸も使えな

「危ないな!」

どん

その音の次には、ボンネットがボロボロになっている車があった。こんなのが自分に当たっ、いやそんなの考えちゃいけない。どうする、どうすれば

「しまっ」

頬にべっとりと蛍光色のものがついた。考える隙もない。


どうすれば、一旦、一旦落ち着こう。一旦。広い駐車場、消火器、火災報知器、蛍光灯、防火シャッター、消火栓、現実的に考えると駐車場あるものといったらこれぐらい?あとは車を開けられれば、荷台に何か入ってるかもしれないけど。こんなんで、中の人を助ける?無理じゃいややるんだ、やらなきゃ。考えて、考え。そうだ。倒す必要なんてない。生存者だけ出せばいいんだ。

なら、やることはひとつ。


走ってその場所まで誘導する!


大きな体とは想像できないほどに動きが素早い、息が、息が吸えない、とりあえず、三角コーン、三角コーンあった!バーだけもらう、もう後ろに、距離が、いや、振り返るより走る!んで、んで。そのあとはえっとなんだっけ、えっと、んで、そう防火シャッター。防火シャッター。防火シャッター、あった!

違う、これじゃ防火シャッターが下げる前に、内側にきちゃう、だから一回、見極めて、見極めて。正面から奴が来る。その鈍重とは思えない素早さもっ!

避ければ意味なし!

あとは走る!振り返らずに、走って走って走りまくる!

んで、落ち着いて、シャッターを、下ろす、ハンドルハンドル、っ差し込んで、回す。挟まれ挟まれ挟まれ、挟まれ!


とにかく挟まることを祈ってハンドルを回し続けた。目を開け、そシャッターの重さで動かなくなっていた蛍光色を見て安堵した。動かなくなったそいつにバーを差し込み、少女に声をかける。

「掴まって!」

その少女はバーを掴み、私は無理やり引っ張った。

「げほっ、げほっ」

「ごめんね、遅くなちゃって」

その少女の目はまだ怯えたままだったが、ゆっくりと安堵の目に変わっていった。


私はその目を羨ましいと思ってしまった。私も怯える方(そっち側)でいたかった。その時、携帯から0時のアラームが鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ