朝起きたら、君になっていた。
しいなここみさんの
朝起きたら企画に、参加させていただきます。
『朝起きたら、〇〇になっていた』というタイトルで作品を書くという企画です。
知り合いの戯言士さんにすすめてもらって、参加することにしました。
恋愛ものは、初めてなのですが、頑張って書いてみました。
朝起きたら、僕は君になっていた。
え、なんで??
僕は確か男だった。でも、今鏡に映っている姿は、クミだ。
何が起きたのかはわからないけど、昨日寝る前に、クミのことを考えていたのは確かだ。クミというのは…名前は堂本 久美子、女子大生である。
ちなみに僕はリョウ。田中 涼、ごく普通のサラリーマンだ。
ちなみに、クミと僕の関係はというと、彼氏彼女…
だった関係なのだ。そう、今は別れている。だいたい1年前くらいだったかな。クミと出会ったきっかけは、友人が誘ってくれたコンパ。そこで気が合って連絡先を交換した。すごく可愛かった。というか今でも可愛いけど。
でも、なんで別れたクミに、僕がなってるんだろう?とりあえず起きようかな。えーと…き、着替え…。
自分で自分の姿を見て恥ずかしくなる。クミの体だもんな。そっと、胸のふくらみを確認してみる。うん、女だ。そして柔らかい。
唇も念のため、指で触ってみる。うん、やっぱり柔らかい。あの時のままだ。これ、あとで戻って、怒られるやつなんだろうか。んーでも、どうしようもないし。自分の部屋…じゃない、クミの部屋を見渡す。2〜3回くらいしか来たことないけど、僕が知ってるクミの部屋だ。
クミはまぁまぁいいとこのお嬢さんで、すごく広い家に住んでいた。お父さんお母さんとクミの3人家族だと思う。でもお父さんの姿は見たことがない。ふかふかのベッドに、天蓋がついている、もろお嬢様仕様のベッドだ。部屋自体は広くなく、学習デスクと、横に洋服ダンスが並んでいる。
ぶ、ブラジャーはどこだろう。
◇◇
10分ほど格闘した末に、無事着替えに成功した。学校ていつ行ってるんだっけ?
僕は土日祝が休みのない仕事だから、クミとはいつも休みが合わなかった。まぁそれも別れる原因のひとつだったんだけどね。今日が何曜日かもわからない。あ、携帯電話…僕の、じゃなくてクミの携帯が充電器につながれて置いてあった。
土曜日。休み…かな?あ、僕は仕事だ。あれ、そういえば僕はどうなるんだ?僕はクミになったけど、逆にクミは僕になってたりするのか?
携帯を開く。メール画面をひらいて、僕のメールの履歴を探してみた。なぜか、僕のメールは消去できないようにプロテクトがかかっていた。これは覚えてる。僕が送ったきり、返事もなかったメールだ。
『もう2度と連絡しないでくれ。そして、あいつにもそう伝えてくれ。クミのことは好きだったけど、厄介事に巻き込まれるのはごめんだ』
バカだな。僕は大バカだ。
別れた理由は、ひとつの原因は休みが合わなくて、なかなか会えないこともあった。あともうひとつは、クミが同じ大学で、男を作ったからだ。名前聞いた気がするけど覚えてないな。別れの言葉はクミからだった。
「ごめん、同じ大学で好きな男の人ができたの…」
僕は何も聞かなかった。少し前から、メールしても返って来るのが遅かったり、電話がつながらなかったりが増えていた気がする。結局はそういうことだったのだ。
ペアリングをその場で外して投げ捨てた。
そして、すぐその場を去ろうとした。クミは僕の腕をつかんで、泣きそうな顔をして見てきたけど、僕はそれを振り払った。
僕は、悔しかったんだ。僕が大好きだったクミの、1番になれなかったことに。
付き合った当初、僕は浮かれていた。クミが僕の職場にお弁当を持ってきてくれたこともあった。そして、仕事の帰りにも、会いにいった。
でも、僕はきっとクミの気持ちをちゃんと考えてあげれてなかったんだ。もっとゆっくり会いたい、って言ってたっけ。
クミがいっぱい示してくれた愛情に、僕が答えてあげれなかったのかもしれない。同じ大学で、できた彼氏なら、いつでも会えるし、休みも合うだろう。きっとすぐ僕のことなんか忘れてしまう。
クミに最後のメールを送った晩の、その日の日中のことだったと思う。アイツから電話があったのは。僕は仕事中だったかな、着信通知はクミ。そして、出てきた声は男の声だった。
「あのさー、お前がクミの元カレ?」
なんとなくは想像ついた。
「いきなりなんですか?これはクミさんの携帯じゃないんですか?」
「あー。俺、クミと今付き合ってるんだけど。なんでお前がクミの初めての相手なの?処女じゃねえっていうから聞いたら、お前が初めてだって言うからさ。どんなやつなのか話してみたくなってさー」
めちゃくちゃ気持ち悪い。こんなやつとクミは付き合ってるのか。
「ちょっと…クミと変わってもらえますか」
「え〜、まぁいいや少しだけだぞ」
まぁまぁムカついていたけど、なるべく冷静を保つように努力する。
「ごめん、リョウくん…ホントごめん。リョウくんに迷惑かける気、全然なくて。ユウサクが電話かけさせろ、ってうるさくて…あっ」
「はい、終わり〜。まぁそういうことで、クミはこれから俺がいただくから。リョウくんは仕事がんばってね〜」
電話が切れた。いったいなんなんだ。新手の嫌がらせか。
そして、その晩にさっきのメールを送った。そして、電話とメールを拒否設定に変えた。
◇ ◇ ◇
1年くらいぶりに見た自分が送ったメールを、クミの携帯で見ている。
…!!
なぜか。頬に涙が伝っていた。
僕は悲しくない。何も感じていない。
この涙は、クミの感情が流しているのだろうか。
『リョウくん、大好き!なーのだ!」
少しクセのある語尾も好きだった。 いつもお風呂あがりみたいないい匂いがしていた。照れるとピンク色に染まる頬も好きだった。笑った時に見える八重歯も好きだった。あんなやつと別れろと何で言えなかったんだろう。別れたくないと何で言えなかったんだろう。
僕は、自分の身体に手を回して抱きしめた。
なぜか涙が止まらない。
◇◇◇◇
気づくと、僕は。僕に戻っていた。今のは、夢だったんだろうか。近くに転がっていた携帯をつかむ。
そして、電話をかけた。
「もしもし。クミ…?僕…今でもクミのこと、大好きだ」
おわり




