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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第10話:神の器

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第97章:蒼の覚醒 ― 封印された真実

 ギルドでの報告を終え、夜の街は静まり返っていた。

 仲間たちはそれぞれ休息を取り、マリーナは医務室で深い眠りについている。

 ただ一人、レイだけが学園の屋上に立っていた。

 夜風が髪をなで、遠くで鐘の音が響く。

 彼は空を見上げ、無意識に右手を握りしめた。


 ――この胸のざわつきは、何なんだ。


 戦いの最中、闇の神影が消える直前に放った言葉が頭から離れなかった。

 『お前もいずれ、我らと同じ領域に至るだろう』

 その意味が、今になって重くのしかかる。


 右の掌が微かに光を帯びた。

 蒼い魔力が皮膚の下を流れ、血管のように輝いていく。

 最初は微弱な光だったそれが、鼓動と共に強まり、周囲の空気を震わせた。


 「……またか。」


 呟いた瞬間、空間が歪む。

 空気が悲鳴を上げるように震え、周囲の魔力が勝手にレイへと吸い込まれていく。

 まるでこの世界そのものが彼を中心に動こうとしているかのようだった。


 「落ち着け……俺は、まだ――」


 深呼吸をした。だが、魔力は止まらない。

 制御不能なほど膨れ上がり、蒼い光が夜空を裂く。

 学園中の生徒がその異変に気づき、窓を開けて見上げた。


 屋上には、蒼炎の柱の中に立つレイの姿があった。

 風が吹き荒れ、周囲の瓦が浮き上がる。

 彼の瞳が淡く光り、何か――別の意識が流れ込んでくる。


 『……目覚める時が来たか。』


 頭の中に、確かに声が響いた。

 聞き覚えのない声。だが、どこか懐かしい。

 “神”のような威圧と、“人”のような温もりが共存していた。


 「お前は……誰だ。」


 『我はかつて、この世界を創りし“蒼の神”。

 お前の内に宿る、始まりの力の残滓だ。』


 レイは息を呑んだ。

 それは、自分が前世から持っていた違和感の答えに近い気がした。

 生まれた瞬間から全属性を操れた理由。

 誰よりも魔力が安定していた理由。

 ――そのすべてが、この存在に繋がっていたのか。


 「俺が……神の力を?」


 『正確には、“神の欠片”。

 お前の魂がそれを受け継ぎ、成長と共に融合を始めている。

 だが、このままでは身体が耐えきれぬ。』


 痛みが走る。

 全身の血が蒼に染まるような熱。

 心臓が爆発しそうな鼓動。

 それでもレイは倒れなかった。

 魔法の研究で、限界を超える経験を幾度もしてきた。

 この程度で負けるわけにはいかない。


 「……融合を止める方法は、あるのか。」


 『ある。だが――止めれば、二度とその力は得られぬ。

 お前が“神”に至る道を、自ら閉ざすことになる。』


 選択を迫られていた。

 普通の人間として生きるか。

 それとも、世界の理を超える存在になるか。


 夜風が一瞬だけ止まった。

 彼はゆっくりと空を見上げる。

 星々が流れ、まるでその答えを待っているようだった。


 「……俺は、人として生きたい。でも――」


 唇が微かに笑う。


 「守るためなら、“神”にでもなってやる。」


 その瞬間、蒼の光が爆発した。

 屋上全体が包まれ、学園中に蒼い波紋が広がる。

 その光は、夜の街の端まで届いた。

 セラたちが駆けつける頃には、屋上の瓦礫が静かに落ちていた。


 レイは立っていた。

 息を整え、掌を見つめる。

 そこには“神紋”のような模様が刻まれていた。

 蒼い光が脈打ち、鼓動と共に穏やかに明滅している。


 「これが……俺の、選んだ力。」


 セラが駆け寄り、心配そうに問いかけた。

 「レイ! 大丈夫!? 何が――」

 彼は振り返り、いつものように微笑む。


 「ちょっと、世界の声を聞いてただけさ。」


 軽口の裏で、胸の奥に確信があった。

 闇の神を止める戦いは終わっていない。

 むしろ今、始まったばかりだということを。

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