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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第9話:ザイロスとの決戦、そして平和な世界

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第90章:黒の姿

夜の帳が落ちた街を、レイとセラはゆっくり歩いていた。

昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、灯火がぽつぽつと石畳を照らしている。

ギルドでの報告を終えた後も、二人の胸の中には重い靄が残っていた。


「ねえ、レイ」

セラが口を開く。

「さっきのグラウスって人……ただ者じゃなかったね」


「だな。力を隠してる気がした」

レイは短く答えた。

「ただの冒険者って感じじゃない。多分……裏で何か掴んでる」


風が吹き、夜空を流れる雲の隙間から月がのぞく。

その淡い光の下で、セラは真剣な瞳でレイを見つめた。


「私たち……また戦いに巻き込まれるのかな」


レイはしばらく黙っていたが、やがて苦笑した。

「平和なんて、案外長く続かないもんだ。ザイロスがいなくなっても、世界が全部救われたわけじゃない」


そう言って歩き出す。

だがその瞬間、レイの表情が変わった。

「……っ、魔力の揺らぎ?」


路地の奥から、異様な波動が漂ってきた。

ただの魔力ではない。世界の理そのものが歪むような、冷たく濁った気配。

レイは即座に詠唱を始め、光の結界を展開する。


「セラ、下がれ!」


次の瞬間、闇が弾けた。

黒い靄が渦を巻き、そこから人影が一つ現れる。

人間のようでいて、人ではない。

顔を覆う仮面、そして身体から漂う、異質な魔力の圧。


「……誰だ?」

レイの声が低く響く。


仮面の男は一歩踏み出し、まるで笑うように言った。

「“神の座”に最も近づいた男、レイ=ノヴァリア。やはり興味深い」


「神の座……? 何の話だ」


「ザイロスが“世界の支配”を望んだように、我々は“世界の再誕”を望む。滅びではなく、理の上書きだ。貴様が神になると叫んだあの瞬間……我らは確信した。次なる鍵はお前だと」


その言葉に、レイの瞳が鋭く光った。

セラも杖を構える。


「お前……ザイロスの仲間じゃないのか?」


「奴は旧き時代の残滓に過ぎぬ。真に“新しい世界”を作るのは、我ら《創誓のそうせいのと》だ」


「創誓の徒……?」


男は笑い、闇に溶けるように姿を消した。

まるで最初からそこに存在しなかったかのように。


静寂が戻る。だが、その余韻だけは確かに残っていた。

まるで世界の根幹に“手を加える者”の気配。


「レイ……どうするの?」

セラの声が震える。


「どうもしねぇよ。あいつらが何を企んでるか知らねぇけど……放っとけないだろ」


レイは空を見上げた。

月光が彼の瞳を照らし、決意の光が宿る。


——ザイロスを超える脅威。

——理そのものを書き換えるという狂信的な集団。


その夜、レイの中で再び炎が灯った。


***


翌朝、ギルドは異様な静けさに包まれていた。

昨日の報告を処理していたはずのマリーナの姿が、どこにも見当たらなかったのだ。

受付の机には、彼女の筆跡で一枚のメモだけが残されていた。


「探さないでください。私は、真実を知ってしまいました。」


その文を見た瞬間、レイとセラの背筋が凍りつく。

まさか、昨夜の男と関係が……?


そのとき、背後から声がした。

「お前たち……また面倒なものを引き寄せたな」


振り向くと、グラウスが腕を組んで立っていた。

「マリーナは恐らく《創誓の徒》に関係している。俺も昔、少しだけ関わった。奴らは神話を研究し、“世界の再構築”を本気で狙っている狂信者だ」


レイの拳が握られる。

「つまり、放っておけないってことか」


「そういうことだ。……だが気をつけろ。奴らの目的は、単なる破壊じゃない。

お前のような“神格に近い存在”を取り込もうとしている」


その言葉に、セラの表情が一瞬で固まる。

「レイを……?」


グラウスは頷いた。

「お前は彼らにとって“完成された鍵”なんだ。ザイロスが倒された今、世界を変える力はもうレイしかいない。——次はお前が狙われる」


沈黙。

だが、レイの瞳は恐れよりもむしろ静かな怒りで燃えていた。


「……なら、こっちも動くしかないな」


彼はゆっくりと立ち上がる。

「マリーナを助ける。そして、創誓の徒の目的をぶっ壊す」


セラが小さく笑う。

「まったく……休む暇ないね」


レイは苦笑しながらも頷いた。

「それが俺の運命らしいからな」


窓の外、朝日が昇る。

その光が二人の背を照らし、まるで新たな戦いの幕開けを告げるようだった。


——そして、静かに新章が始まろうとしていた。

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