第68章:準備
少し時を戻す。
夕暮れが落ちるころ、レイが目を開く。
「……わかった。強化完了。魔力感知も合成した」
「どうだ? 何かつかめたか?」
ヴァルゼリオが尋ねると、レイの視線が遠くの方へ向いた。
「……見つけた。かなり遠いが、魔力の癖で間違いない。ザイロスだ」
セラも神妙な面持ちで頷く。
「虐殺や襲撃じゃなくて、何か準備してる場所…って感じね」
ヴァルゼリオも不敵に笑う。
「行き先が判明したなら早い方がいい。どうせ騒ぐやつらも出てくる」
ミナが肩ストレッチしながら言う。
「じゃ、出撃準備ってことで?」
レイは全員を見渡し、小さく頷いた。
「……ああ。明日の朝、ここを出る。荷物と装備の確認だけしておけ」
「了解!」
「任せて」
「しゃーねぇな、付き合ってやる」
動き出しが決定する。
夕食後、各自が荷造りや準備を始めた。
ミナは武具を整え、セラは旅装をまとめ、ヴァルゼリオは平然と眠る支度をしている。
屋上で星を眺めていたレイに、セラが近づく。
「緊張は……してないみたいね?」
「まぁな。あいつとケリつけるチャンスだし」
「ふふ。あなた、昔からそういうところ変わらないわね」
静かな風が吹き、寮は夜の帳に包まれた。
そのころミナは部屋で髪をほどきながらぼやく。
「はぁ、また面倒に巻き込まれた……でも、放っといて死なれたら困るしね」
一方、ヴァルゼリオは眠そうに欠伸をしながら呟く。
「この世界も、もう少し面白くなってきたじゃねぇか」
その夜、誰もが翌日の出立を意識しながら眠りにつく。
そして、次の朝。
淡い光が校舎を染め始める頃、レイたちは門の前に集まる。
ミナが腰に剣を下げながら言う。
「忘れ物、なし!」
セラは白いローブにマントを翻しながら微笑む。
「準備は万端よ」
ヴァルゼリオは相変わらず肩を回しながら欠伸。
「早く終わらせて、帰って寝るとしようかね」
レイは短く言った。
「──行くぞ。ザイロスにケリをつけるために」
三人と一人の元魔王は、静かに歩を進める。
世界を揺らす因縁との決着に向けて、物語は次の章へと進んだ――
今日は短めです。




