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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第4話:危険な冒険を求めて

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第40章:七人の魔将との遭遇

 鐘の音が鳴り響く街を駆け抜け、レイたちは冒険者や兵士の群れに混ざって北門へと急いだ。

 広場にたどり着いた瞬間、その場の空気が異様なものに変わっているのがわかった。


「……な、なんだ、あいつ……」

「魔力が……重い……息が……」


 冒険者たちは剣を構えながらも足がすくみ、兵士たちは盾を握る手を震わせている。

 門の前に立つその存在──全身を黒い甲冑で覆った長身の男。

 だがただの鎧武者ではなかった。纏う魔気が周囲の空気を歪ませ、視線を浴びただけで魂を削られるような圧迫感を与えていた。


「……魔王軍……!」


 誰かの震える声で、その正体が広場に響いた。

 絶望が人々を走り抜ける。


 だが、男は剣を抜くでもなく、悠然と立ち、低く響く声を放った。


「俺は人間どもに用はない。……ただ一人、探している者がいる」


 その声は濁った雷鳴のようで、聞くだけで胸が圧される。


「……レイ、と呼ばれる者だ」


 その名が告げられた瞬間、周囲がどよめいた。

 冒険者たちは一斉に視線をレイに向ける。

 セラとミナも目を見開き、驚きに息を呑んだ。


「レ、レイ……?」

「なんで……あんたの名前を……」


 人々のざわめきが広がる中、レイは一歩前に出た。

 他の冒険者が制止の声をあげる。


「お、おい! やめろ! お前が狙われてるんだぞ!」

「近づいたら殺される!」


 だがレイは静かに笑みを浮かべ、彼らをかわして前へ進む。

 足取りには一切の迷いも怯えもなかった。


「俺がレイだ。わざわざ探して来てくれるとはな」


 黒甲冑の男は、しばし無言でレイを見つめ、やがて低く笑った。


「フハハ……なるほど……ザイロスの言っていた通りの眼だ」


 ザイロス──その名が再び告げられ、冒険者たちが息を呑む。

 つい先日、彼らを震え上がらせた存在の名が、魔王軍幹部の口から自然に語られたのだ。


「貴様の名はすでに我らの主の耳に届いている。ザイロスとは気の合う友でな……。わざわざ俺が伝えに来たのだ」


「……何をだ?」


 レイの問いに、男の瞳が紅く光った。


「──魔王が復活なさる」


 その瞬間、広場の空気が凍りついた。

 兵士も冒険者も顔色を失い、セラとミナも立ち尽くす。


 魔王。

 かつて世界を壊しかけ、人類の歴史に最も深い傷を刻んだ存在。

 その名は禁忌そのものであり、ただ想起するだけで胸を締めつけられる恐怖を呼び起こす。


「ま、魔王……? あの、伝説の……」

「終わりだ……もう人間には勝ち目がない……」


 兵士の一人が膝をつき、冒険者たちの中にも剣を落とす者がいた。

 街を覆うのは絶望と恐慌。


 ──だが、ただ一人だけ。


 レイだけは違った。


 彼は恐怖どころか、むしろ心の奥から熱を帯びていくのを感じていた。

 胸の内で燃えるのは、絶望ではなく闘志。


「……そうか」


 静かに口を開いたレイの声は、驚くほど落ち着いていた。


「お前をぶっ飛ばせる日が来るんだな。楽しみにしてる」


 その言葉に広場の空気が一瞬で変わる。

 誰もが絶望に押し潰されそうになっていた時、ただ一人、青年が敵に笑みを見せたのだ。


 黒甲冑の男は一拍の沈黙の後、低く笑った。


「フッ……面白い。恐怖で震えると思っていたが……なるほど、噂以上だ」


 そして男は剣を掲げ、名乗りをあげた。


「俺の名はガルドゥス。魔王直属の七魔将の一人にして、黒き鋼を司る者だ」


 七魔将──それは人類に伝わる最悪の伝説のひとつ。

 魔王に仕えし七人の将は、一人ひとりが国家を滅ぼす力を持つとされる存在。


 その一人が今、目の前に立っている。


 セラもミナも、息を呑んでレイを見た。

 だがレイはただ、いつもの調子で肩を竦める。


「ガルドゥス、ね。いい名前じゃないか。……その名、覚えておいてやるよ」


「ハッハッハ! 楽しみにしているぞ、レイ。次に相まみえる時は、我が刃でその心臓を穿つだろう」


 そう言い残し、ガルドゥスの姿は漆黒の霧と共に消え去った。


 残されたのは、静まり返った広場と、胸に刻まれた恐怖。

 だがレイの瞳には、逆に燃え上がるような情熱が宿っていた。


(……魔王、か。ようやく本番ってわけだな)


 心の火を燃やし尽くすほどの情熱を抱きながら、レイは静かに拳を握りしめた。

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