第二章:魔法学園の門をくぐって
セラ「着いたみたいですね、ご主人様……!」
馬車の扉が開き、セラがそっと顔を覗かせる。
彼女の目に映ったのは、堂々たる石造りの門と、奥にそびえる白亜の建物だった。
「王立エレメンタリア魔法学園」
建物は城のような外観をしているが、周囲には制服姿の少年少女が行き交い、どこか現代的な学校の雰囲気もある。
掲示板、広い中庭、見回りをしている先生らしき人たち。すでに春の新学期が始まろうとしていた。
レイ「想像してたより……ずっと大きいな」
レイ=ノヴァリアは淡々とした口調で呟き、馬車から降りる。
隣ではセラが目を輝かせていた。
セラ「ほ、本当に学園なんですね……制服の人がいっぱいいる……うわっ、空飛んでる人まで……!」
彼女が興奮気味に話すのを、レイは横目で見てから小さく笑った。
レイ「テンション上げすぎて転ぶなよ」
セラ「う、うぅ……気をつけます」
受付を済ませると、二人は入学者説明会の会場へと案内された。
広い講堂には新入生がずらりと並び、壇上には教師らしき人物が立っていた。
セラ「ふぅ……緊張しますね……」
レイ「大丈夫だ。普通の学校と同じだ。ただし“魔法”があるだけ」
レイはそう言いながら、壇上の話を黙って聞いていた。
先生「では新入生の皆さん、実力に応じたクラス分けのため、簡単な魔力テストを行います。緊張せずにリラックスして臨んでくださいね」
案内されたのは、運動場のような広いエリア。数十人の新入生たちが列を作っていた。
セラ「魔力テストって……あまり見せすぎない方がいいんですよね?」
セラが少し不安そうに聞くと、レイは静かにうなずいた。
レイ「ああ。俺たちは“平凡”ってことにしておく。目立ちたくない」
セラ「はい……!」
並んでいる生徒の中に、やけに派手な笑い声が響くグループがあった。
いじめっ子「おい、見ろよ。あの銀髪の女、エルフじゃねーか?」
いじめっ子2「マジ? 平民のくせにメイドとか連れてんの? 何者だよアイツ」
いじめっ子3「超ウケる……はははっ」
ひときわ大きな声で笑っていたのは、大柄な赤毛の少年。
名札には「ドラン・マードック」と書かれていた。貴族系らしく、自信満々な立ち振る舞い。
セラは視線に気づいて、小さく身をすくませる。
それに気づいたレイは、ちらりとドランたちの方を見るが――
レイ「……行こう」
それだけ言って、何も言い返さず列に戻った。
セラが少し不思議そうに尋ねる。
セラ「……怒らないんですか?」
レイは前を向いたまま答える。
レイ「怒る価値もない。吠える犬ほどよく吠えるだろ?」
魔力テストは簡易的なものだった。
手のひらに魔力を集中させて、魔力球を生成する。
周囲の生徒たちは、火球、水球、風球など、それぞれ得意属性の球を出す中、
レイは静かに手を上げ――ごく小さな、ほとんど色のない球体を作り出した。
魔力の気配は抑えられていたが、その球は「全属性」の気配を含んでいた。
担当官は一瞬だけ眉をひそめたが、メモに「適性:複数属性」とだけ書き、次へ進めた。
セラも順番が来たとき、小さな火の玉を作り――次に水の滴を浮かせた。
生徒「えっ、火と水!? 両方!?」
後ろの生徒たちが驚いて声を上げた。
セラは顔を赤らめながら、そそくさとレイの元へ戻る。
セラ「ちょ、ちょっとやりすぎましたか……?」
レイ「いや、それぐらいならちょうどいい。二属性くらいの生徒はそこそこいる。隠すなら“程よく”な」
テストが終わると、入学者たちは学生寮へ案内された。
制服の受け取り、部屋の案内、そして仮クラスの発表がホールで行われる。
レイとセラは、同じ「1年A組」に配属された。A組は実力上位のクラスらしい。
レイ「……これはまた面倒なクラスに入れられたな」
セラ「でも、ご主人様と一緒なら安心です!」
レイ「そういう問題か?」
夜、寮の部屋で荷解きをしながら、セラがぽつりとつぶやく。
セラ「……やっぱり、エルフって珍しいんでしょうか」
レイ「まあな。でもそれだけだ。エルフがどうとか、気にすることじゃない」
レイはベッドに腰掛けながら、静かに言った。
セラは小さく笑って、ベッドのシーツを整えながら言った。
セラ「ご主人様が言ってくれると、不思議と安心します」
レイ「それはよかった」
その日の夜は、窓から月明かりが差し込んでいた。
これから始まる魔法学園での生活が、どんなものになるのか――
二人はまだ、知らない。
馬鹿にするやついる系多いよね!だから入れてみた!!