第一章:出会いと新たな家族
森の奥深く、木々のざわめきが静寂を切り裂く中、レイ=ノヴァリアはゆっくりとした足取りで歩いていた。
背中には、銀色の長い髪を揺らす少女、セラ=ノヴァリアがか細く横たわっている。
レイ「もうすぐだ。頑張ってくれ」
レイは自分に言い聞かせるように、声を低くした。
倒れていた彼女を見つけたのは、数日前のこと。
血まみれで、意識も朦朧としたその姿に、レイの胸は締め付けられた。
何もできずにただ見過ごすわけにはいかなかった。
魔力を使い、応急手当を施し、意識を取り戻させた。
彼女を背負いながら、家までの道のりは決して楽ではなかったが、レイは力強く歩き続けた。
家の扉を開けると、暖かい光がこぼれ、家族の声が聞こえてきた。
リビングでは母と父が談笑していたが、レイの背中にいる少女に気づくと、二人の顔に驚きの色が走った。
「レイ……その子は誰?」母の声は驚きと心配が混じっていた。
レイ「森で倒れていたんだ。助けなければと思って」
レイは静かに答え、背中のエルフを家の中へと運び込んだ。
母はすぐにエルフの体を優しく洗い、傷を丁寧に手当てした。
セラは怯えた様子で目を閉じていたが、温かな家庭の雰囲気に次第に安心の色が浮かんだ。
「怖かったね、もう大丈夫。ここは安全な場所よ」母の優しい声が部屋を包んだ。
父も仕事の手を止め、セラの様子を見守った。
「無理はするなよ、ゆっくり休め」
数日が過ぎ、セラは徐々に回復した。
ノヴァリア家の新たな一員として、彼女は暮らし始めていた。
ある晩、セラは深く頭を下げた。
セラ「ご主人様、私は一生、レイ様に仕えます」
レイは静かにその言葉を受け止め、家族も温かく迎え入れた。
こうして、セラはノヴァリア家のメイドとして正式に認められたのだ。
だが、現実は甘くなかった。
セラの家事は初めこそ雑で、料理は焦げ付き、掃除は途中でやめてしまう。
母は厳しい顔でセラを見つめた。
母「セラ、家事は心を込めてやらないといけないの。基本からもう一度教えるわよ」
何度も失敗しながらも、セラは母の言葉を真剣に受け止めた。
洗濯の仕方、掃除の順序、火加減の調整。
母の手本を見ては繰り返し練習し、少しずつ上達していった。
一方、レイは魔法の指導に熱を入れていた。
レイ「今日は火と水の魔法を同時に使う練習だ」
レイの手から炎が舞い上がり、すぐに冷気がその炎を包む。
セラも魔力を集中し、小さな火の玉と水滴を作り出そうと試みる。
「お前は火と水の属性が得意なんだな」レイは気づいた。
セラは嬉しそうに微笑み、初めて自分の強みを実感した。
日々の特訓は続き、季節は5か月を過ぎていた。
セラの家事は随分と手際よくなり、家族の誰もが頼りにするようになった。
魔法も以前よりずっと扱えるようになり、レイとの絆も深まっていた。
そんなある日、家に届けられた一通の封筒。
母「これは……」
母が封を切ると、魔法学園からの入学許可証が姿を現した。
「レイ、あなたの努力が認められたわ」母は誇らしげに言った。
「これで新しいステージが始まる」レイは静かに決意を胸に刻んだ。
出発の日、家の前に家族とセラが集まった。
父は力強く言った。
父「しっかり学び、強くなれ。家はいつでもお前の帰る場所だ」
母は涙ぐみながら笑い、セラは決意のこもった表情でレイに誓った。
母「どんな時もご主人様のそばにおります」
馬車に乗り込み、家をゆっくりと後にする二人。
レイは小声で囁いた。
レイ「学園ではまだ、俺たちの力は隠しておこう」
新しい旅路の始まり。
メイドとなったセラ。今後どういうカギになっていくのか