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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第2話:ザイロスは何者

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第15章:日常の隙間に潜む牙

魔王軍の陰謀を退け、学園と街に一時の平穏が戻ってきた。


季節は春。柔らかな陽光が校庭を包み、校舎のガラスには青空が映っていた。


「ねぇ、今日のお昼、パン屋の新作いこ!」


元気なセラの声が響く。カナリアも小さく頷き、微笑んだ。


「甘いやつ、買いたい……」

「レイも来てよ!最近いつも本ばっかだし」


「……別にいいけど」


そんな何気ないやり取りすら、レイには貴重に感じられた。


激戦の記憶が薄れていく。だが、それを「忘れてしまっていい」と思えないのは、自分がこの世界で背負ってしまったものの重さゆえだった。


午後の授業は、魔法史の演習。

セラは相変わらず真面目にノートを取り、カナリアはウトウトしながらも要点を押さえていた。


レイはというと、授業の合間にも周囲の気配を探っていた。


「……今日は何もないな」


その小さな違和感は、ずっと胸の奥に残っていた。


戦いが終わったわけじゃない。

あれは、ただの“序章”にすぎなかったのではないか――


放課後、街へ向かう三人。寮の備品や食材を買い出しに行く、ただの日常。


「はい、これ荷物持ち」

「……セラが持て」

「むー、メイドだからって全部任せないでよっ!」


そんな他愛ない会話が、街に響く。

風に混じる焼き菓子の匂い。商人の呼び声。道端で演奏する音楽家。街は平和だった。


だが、帰路の途中――その空気が一変する。


「……止まって」


レイが突然立ち止まった。


路地裏、建物と建物の狭間に、異様な気配がある。


――殺気。


一瞬後、そこから影が躍り出た。


「ッ!?」


フードを深く被った男。赤い目が光り、手には魔力の宿った短剣。


「対象、ノヴァリア・レイ。抹殺開始」


低く唸るような声。レイは即座にセラとカナリアを庇う。


「刺客……!」


「“水盾アクア・ウォール”!」

「“風突ウィンド・スラスト”!」


セラとカナリアが連携して魔法を放つも、男は素早く跳躍し、躱す。その動きはまるで獣のようだった。


「貴様、魔王軍の……!」


「名乗るほどの者ではない」


刺客の目が不気味に光ったその時、レイは地を蹴った。


「詠唱なし……っ!」


その言葉が出るより早く、レイは風を纏った一撃を放つ。


「“風刃穿フウジン・セン”!」


だが、男は受け流し、反撃してきた。


「……強い」


レイは冷静に分析する。短剣の扱い、体術、そして魔法……すべてが高水準。これは、ただの刺客ではない。


――もしかして、ザイロスの命か?


「……お前、何者だ」


「……それを知る必要はない。お前はここで終わる運命だ」


次の瞬間、男の全身から黒い瘴気が噴き出した。


「闇の魔力か……!」


周囲の空気がどす黒く染まっていく。セラとカナリアも顔を強張らせた。


「レイ……!」


「下がってろ」


一歩、前へ。


「“雷閃崩ライセンホウ”!」


雷の奔流が地を割り、刺客を吹き飛ばす。呻き声と共に、刺客の身体が瓦礫に叩きつけられた。


「……クク……流石……だな……」


その瞬間、男の体に展開された黒い魔法陣。


「自己転送……!」


レイが動いたが、間に合わなかった。刺客の身体は闇に溶けるようにして消えた。


静寂が戻る。


「……逃げられたか」


セラとカナリアが駆け寄る。


「レイ、大丈夫!?」

「怪我……してない……?」


「平気だ。だが……完全に狙われていた」


レイの目が細くなる。あの瘴気――明らかにザイロスに通じるものだった。


その夜。


レイは寮の屋上に立ち、夜風を浴びながら空を見上げていた。


「あの黒い目……躊躇いのない殺気……あれが“敵”の本気か」


何もない日常を望む自分と、それを壊そうとする存在。

二つは、必ずぶつかる運命にある。


気配を感じ、後ろを振り返ると、セラがココアを持ってやって来た。


「……どうせここだと思った」


「……感謝する」


「無理しないで。守られてばっかじゃ、私も嫌だよ?」


その言葉に、レイは少しだけ笑った。


「期待してる。……頼んだぞ、セラ」


夜風に、ふたりの影が揺れる。


まだ嵐の前。

けれど、確実に闇は近づいていた。

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