寝取られの神に愛されているか知りたくなり、魔法の鏡の鏡を入手してNTRについて色々質問してみるも、返ってきた答えで脳が破壊されそうになりメンタルがとってもヤバい件
寝取られが好きだ。
そう心から言えるくらい俺、杉原学は寝取られが好きだった。
いや、好きなんてもんじゃない。
好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きでたまらないのだ。
きっと、俺という人間に刻まれた、魂の性癖だったのだろう。人生の初期に己の性癖を知ることが出来た俺は、この世の誰よりも幸運な男に違いなかった。
そんな全身寝取られ人間である俺だったが、現在は高校生ながら週刊誌にラブコメ漫画を連載している漫画家だったりする。
寝取られが大好きなのに何故ラブコメを描いているのかについては紆余曲折あったので省くが、簡単に言えばまだ未成年だからというのが大きな理由である。
成人したらすぐに寝取られ漫画家に転向するつもりだったが、困ったことに割と売れてしまっているのが悩みの種だ。
出来れば知名度だけを得てそのまま成年誌にシフトするのが理想なのだが……あの見た目ロリで彼氏すらいない仕事の鬼である担当さんが、それを許してくれるとは思えない。
どうしたものかと思いながら夕食をとっていると、ふとテレビから大きな歓声が聞こえてくる。
『優勝おめでとうございます! 素晴らしかったですね。まさに笑いの神に愛されているといったところでしょうか』
『そんなことないですよ、アハハハハ!』
どうやらお笑い番組でどこかのコンビが優勝を決めたところのようだ。
そのこと自体に特に思うことはないが、俺には少しだけ引っかかるものがあった。
「……笑いの神、か」
笑いの神。そんなものがこの世に存在しているのだとしたら、もしや寝取られの神もいるのではないだろうか。
そうだ、日本には八百万の神がいると聞いたことがある。なら、寝取られの神がいてもなんの不思議もないじゃないか。
——いるのなら、知りたい。寝取られの神が、俺を愛してくれているのかを。
こんなことを考える俺は、他人から見ればちょっとおかしなやつに思えるかもしれない。
だが俺は真剣だった。最初に告げたが、俺は寝取られを心から愛している。
寝取られに人生を捧げる覚悟はとうの昔に出来てるし、実際にそういう行動を取っていた。
俺がラブコメ漫画を連載しているのだって、将来公式同人としてラブコメヒロインたちのNTRエロ同人を配布し、数多の読者を脳破壊して寝取られ道に堕とすための布石だ。
彼らは俺を恨むかもしれないが、同時に新たな性癖の扉を開いてくれたことに感謝もしてくれるだろう。革命に尊い犠牲はつきものなのである。
これは彼らの、ひいては寝取られのため。畜生と罵られようとも、俺は世界中の人間に寝取られを広め、開拓する義務があるのだ。
そう信じて行動してきたのだが、逆はどうだろう。
寝取られは、俺を愛してくれてるのだろうか。
それが急に知りたくなった。いや、愛してくれていること自体は分かっているのだ。
俺の顔は平凡そのもので、寝取られ漫画の主人公のようなモブ顔だ。
彼女こそいないものの、如何にもチャラ男さんに寝取ってもらえそうな雰囲気も醸し出しているし、運動や勉強だって人並程度。人に誇れるような特技だって、漫画を描くこと以外に特にない。
趣味は美少女である幼馴染を寝取られる妄想をするという至って普通のものだし、性癖だって言わずもがな。性格も普通すぎるほど普通のため、他人からは俺という人間はなんの特徴もなく面白味もない男に見えることだろう。
平凡中の平凡。普通の中の普通。どこにでもいて、四六時中寝取られそうなモブ男子。
それが杉原学という男なのである。こんな凡人が、寝取られの神に愛されていないはずがない。
そう理解してはいたものの、やはり確たる証拠が欲しかった。
俺だって人間だ。こんなに寝取られに尽くしているのだから、多少なりとも見返りは欲しいと思って何が悪いのか。
英雄になろうとした瞬間に英雄失格と言った弁護士や見返りを求めたらヒーローとは呼べないと言った天才物理学者もいたが、俺は英雄ではなくただの学生で変態だ。
見返りを求めたところで何の問題もない。
——会おう、寝取られの神に。そして俺を愛してくれているのかを聞いてみよう。
そう思ってからの俺の行動は早かった。
担当さんに当面連載を休止することをメールで伝えると、途端に「なにふざけたこと言ってんスか! とうとう寝取られに頭やられてトチ狂ったんスか!?」という物凄い怒鳴り声で電話が来たため、即座に着信拒否に設定し旅に出る準備を始めた。
同様に同じ学校に通っている幼馴染にもしばらく休学することを伝えたら鬼のように着信が来たためこれも無視した。人間、自衛は大切だ。
後のことを考えると怖すぎるが、寝取られの神に会うためなんだから、多少のやんちゃは許して欲しい。幸い売れっ子であったため、資金は十分にある。
元々将来的に俺の嫁を寝取ってくれる間男さんに渡すつもりの金だし、多少切り崩したところで問題はない。
「俺は寝取られの神に会いに行く……!」
漲る決意とともに、諸々の事情を置き去りにして、俺は海外へと旅立ったのだった。
♢ ♢ ♢
「ふぃー、疲れた疲れた」
それから早数週間、俺は日本に帰国していた。
世界各地を巡り、寝取られの神を探したのだが、残念なことに神に会うことは出来なかった。
まぁよくよく考えたら当然のことだ。神が外界にいるならこのSNS時代じゃとっくに話題になっているはずだからな。
どっかのジー◯アクスではないが、若さ故の過ちというか、ちょっと勢いに任せ過ぎた行動であったことは否定出来ない。
とはいえ、転んでもただで起き上がる俺ではないのだが。俺は背中に背負っていた荷物を降ろすと、ゆっくり封を解いていく。
「ククク……だが収穫はあったぜ。いいもんが手に入ったからな」
荷物の中身は豪華な装飾が施された大きな鏡だ。
無論、ただの鏡ではない。これこそが俺の旅の成果そのもの。
聞いた質問をなんでも答えてくれる魔法の鏡なのである。
「まさか童話のアイテムが実在していたなんてな……まぁ胡散臭くはあったが、本物だったから問題ないか」
道を歩いているときに惹かれるように吸い込まれた古物商の店で購入したのだが、いきなり鏡から話しかけられた時はマジでビビった。
なんでも質問して欲しいとどっかのs〇riみたいなことを聞いてきたので、恐る恐るブクマはしてなかったけど後で使おうと思っていたのにタイトルをド忘れして未だに思い出せないえっちな動画について聞いてみたところ、即答えてくれたのだ。
その瞬間、俺はこの鏡が間違いなく本物であると確信した。
男なら誰でも一度は経験のあることに躊躇うことなく答えてくれたこの鏡を即座に購入し、意気揚々と日本へと帰ってきたというわけだ。
「さて、早速だが鏡よ。改めて聞くが、お前は俺の質問になんでも答えてくれるんだよな?」
『はい、モチロンです。なんでも聞いてみてください。私の答える返事は全てが真実。文字通りなんでも答えてさしあげましょう』
自室の壁に鏡を飾り付けながら問いかけると、即座に鏡から返事が返ってくる。
そのことに大いに満足しながら、俺は一度頷くと、鏡に質問を投げかけた。
「ヨシ! じゃあ聞くが鏡よ。この世で寝取られが一番好きな人間は誰だ?」
「お答えします。それは杉原学様。貴方です。間違いありません」
「うん、だよな。知ってたわ」
当然のこととして俺は頷く。特に驚きはない。俺が世界一寝取られが好きな男であることなど、とっくの昔に分かっていたことだからな。
故に、これはジャブ。本命は次の質問だ。俺は震える声で鏡に聞いた。
「なら次の質問だ。この世に寝取られの神は存在するのか? 答えてくれ、頼む!」
『はい、存在しますよ』
「おお! やっぱりそうだったか!」
一拍の間もなく答えてくれた鏡に、俺は興奮を隠しきれなかった。
本当に寝取られの神は存在していたのか……! 俺は、間違ってなどいなかった……!
「な、なら聞くが、寝取られの神は俺のことを愛してくれているのか? それがどうしても気になるんだ! 答えてくれ! 頼む!!!」
『はい、寝取られの神は貴方のことを愛しています。間違いありません』
「うっひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! マジかああああああああああああああああ!!!!!」
今世紀一番の雄たけびとともに、俺は腕を天へと突きあげる。
寝取られの神は、俺を愛してくれていた。そのことをようやく確認できたのだ。
これまでの苦労が全て報われた気すらする。天にすら届くだろう咆哮をあげていると、隣の家のドアが盛大に開かれる音が聞こえた気もしたが、これはきっと気のせいだろう。
「帰ってきたの学!」という、隣に住む幼馴染の声も聞こえた気がするが、これもきっと気のせいだ。寝取られの丘で勝利に酔っている俺には、現実と向き合うにはまだ早すぎるからな。
「ふぅ、聞きたいことは聞けたんで満足してるんだが、ついでだし聞いておくわ。俺って世界一の寝取られ漫画家になれるよな? 世界中に寝取られの輪を広めることが出来る男になるんだろ?」
現実逃避も兼ねて、俺は質問を鏡に投げかけた。
質問とは言ったが、実際はただの確認事項だ。
世界一寝取られが好きな男である俺が、世界一の寝取られ漫画家になれないはずがないからな。
だから本当に軽い気持ちで聞いてみただけだったのだが……
『いえ、貴方はなれません。最高の寝取られ漫画家には別の人がなります』
「ほへ?」
『貴方は寝取られ漫画家にはなれないと言ったのです、杉原様。代わりに、貴方はラブコメ漫画家として大成します。最高のラブコメ漫画家の地位を不動のものとし、後世まで伝説のラブコメ漫画家として歴史に名を刻み……』
「な、なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
鏡がまだ何かを喋っていたが、それを遮るように俺は絶叫した。
鏡が言っていることが理解出来なかったからだ。俺の理解の範疇を大きく逸脱している。
「学帰ってきたの? 鍵を開けて。旅ってどういうことなの。答えて学」
「おいこら鏡! 俺が寝取られ漫画家になれないってどういうことだよ! 今すぐちゃんと質問に答えろ! 俺は今、冷静さを欠こうとしている!」
「鏡? 鏡って子と旅行に行ってたの? 浮気だったらそれはダメ。学には私がいる。それを分からせてあげるから、今すぐ鍵を開けて。明日の朝は裸ワイシャツで朝チュンしよ?」
『あの、杉原様。扉の向こうで貴方に質問を投げかけてくる方がいるのですが、私より先にそちらの方に答えたほうがよろしいのでは?』
「うるさい! そんなんどうだっていいんだよ! 答えろ、鏡ぃっ!」
小賢しい策で質問から逃れようったってそうはいかない。
怒りの形相で鏡を睨んでいると、ようやく観念したのか鏡はふぅとため息をつき、
『……言いたいことは色々ありますが杉原様。何故貴方が寝取られ漫画家になれないのかについて答えましょう。理由はふたつありますが、まずひとつは貴方が寝取られの神に愛されているからです』
「はぁっ!? なんで愛されているのに寝取られ描けねーんだよ! 意味わかんねーんだけど!?」
鏡の返答に、俺は思わず困惑する。
そんな俺の表情を見て取ったのか、鏡は言葉を続けた。
『それは簡単なことです。貴方は現在、ラブコメ漫画を連載している。本心では寝取られを描きたいにも関わらずです。それは言うなれば、寝取られがラブコメに寝取られているということ……即ち、寝取られの神からすれば、愛する貴方をラブコメの神に寝取られているも同然なのですよ』
「なん、だと……」
お、俺がラブコメに寝取られているだと?
か、考えたこともなかった……だが、言われてみれば確かにそうなのかも……あれ? ということはもしかして……。
「も、もしや寝取られの神はそのことに興奮している、とか……?」
『ええ、その通りです。愛する貴方をラブコメに寝取られて神は毎日泣き腫らしています。杉原様も寝取られを愛してくれているのが分かっているのに……でも、同時にその胸の痛みが心地いい……痛みと快感の狭間を交互に行き来し、心の底から寝取られを堪能しているのが現状です。それは貴方が生きている限り続くでしょうね。だって気持ちいいんだから』
「」
ゆ、歪んでいる……。なんてろくでもないやつなんだ、寝取られの神。
もっとこう、真っ当な愛し方ってもんがあるだろ! 神としてさぁっ!?
『脳破壊されている杉原様には悪いのですが、さらに残酷な話をしなくてはいけません。杉原様が寝取られ漫画を描けないもうひとつの理由。それは杉原様以上に、寝取られの神に愛されている存在がいることです』
「!!??」
あまりの事実に驚いている俺に、鏡は更なる追い打ちをかけてくる。
俺より寝取られに愛されている存在がいる? なんだそれは。全くもって意味が分からない。
『その方の名前は、聖場リア。金髪碧眼のハーフ美少女でありながら、男運に恵まれず好きになった男子を常に周りの人間に寝取られ続けるという、幸運E-のステータスと寝取られの祝福というギフトを授かって生まれた、ド級の寝取られ体質人間です』
「寝取られ体質人間だと……!?」
なんだその羨ましすぎる体質は!?
俺なんて彼女が出来たことはおろか、付き合ったことすらないっていうのに……!
『聖場リアの初恋は近所の優しいお兄さんでした。いつも自分に優しくしてくれる彼に、リアは幼い恋心を芽生えさせていたのですが、そんな彼の本命はリアの母親でした。遊びに行っていたリアがたまたま早く家に帰ったところ、リビングで母親とお兄さんがくんずほぐれつしている現場を目撃。この瞬間彼女の初恋は木端微塵に砕けます。傷心のうちに中学に上がるリアでしたが、同じクラスの優しい男子に心を癒され、やがて惹かれあったふたりは付き合うように……ですが、ここで話は終わりません。リアの親友もまた、彼のことを好きだったのです。親友は男子を振り向かせようと己の身体を使って誘惑するのですが、たまたま忘れ物を取りに戻った教室でふたりが合体している現場を目撃。ここで更に脳が破壊され、完全に性癖が歪んでしまいます。ぶっ壊れた状態で高校に進学するのですが、そこで出会った教師に心を癒され付き合うように……ですが、今度は教育実習で来ていたリアの姉が教師を……』
「ちょっ、えっ、おおっ!? か、鏡さん、ストップ! ストーップ!」
一度に情報の洪水を浴びせられても受け止められない。
ただ、情報量が、情報量が多い……! しかも全部が寝取られだと? しかもほぼ身内による裏切りを受けての脳破壊とは……なんという羨ましさ。
変われるものなら変わってほしいが、これだけでもリアが俺よりも寝取られで圧倒的上位にいることが分かってしまう。
『……どうやら理解したようですね、杉原様。今のリアは大学生ですが、既に幾たびの寝取られを経験し、脳を破壊されてきた強者です。そんな彼女はペンを手に取り、寝取られ同人を現在執筆しています。過去の経験からこの世を呪い、己が経験してきた寝取られの地獄を多くの者に味あわせるために……』
「なんだと……」
寝取られが地獄? 違う、寝取られは救いだ。全ての性癖の頂点に立つジャンルだとDL〇iteも言っていた。寝取られとは人に与えられた祝福そのものなんだ。
「う、あ……」
そう主張しようとしたのだが、声が出ない。
何故だ。いや……本当は分かっている。俺が言おうとしていることは、実際に寝取られたことのない男の戯言に過ぎないのだと。
本当の寝取られを経験したことがない俺には、中身と言えるものがない。
ただ寝取られに対する妄想と盲信を膨らませただけの拗らせ童貞。それが俺という人間の本質だ。
そんな人間が、数多の寝取られを経験してきた英雄を、否定出来る要素などどこにもない。
『彼女の寝取られに対する憎しみは本物です。そしてそれは、圧倒的なリアリティを生み出す。何故なら自分の経験を糧に描いているのですから。匂い、声、音、そして愛する者を寝取られる光景が、彼女の脳に焼き付いている。貴方の偽物の妄想では、本物に勝てる道理はない。寝取られの神が寝取られ漫画を描く者として選んだのは、貴方ではなくリアだったのですよ、杉原様』
鏡の声が重く響く。
……鏡は俺の質問になんでも答えると言っていた。それは全て真実だとも。
だから鏡の言っていることは正しいのだろう。俺はリアに、寝取られにおいて絶対に勝つことは出来ない。
それは間違いなく、この世の真実なんだ。
『……これで分かったでしょう、杉原様。貴方はラブコメ漫画を描くべきなのです。そうすれば、貴方には明るい未来が待っている。貴方を愛する少女と将来添い遂げ、寝取られることなく裸ワイシャツで朝チュンする。そんな毎日が待っているのですよ。リアはそんなリア充な生活を送りながらラブコメ漫画家として名声を轟かせる貴方に嫉妬しまくりさらに拗らせ、数多くの寝取られ漫画を量産する卑屈系ド陰キャ処女漫画家となります。ある意味ざまぁも果たせるわけです。それでいいじゃないですか』
鏡の声は優しかった。
俺を慰めようとしてくれているのだろう。確かに鏡の言う通りなら、俺は社会的には成功者。勝ち組になれるのだろう。寝取られで勝てなくても、それ以外では全て俺の方が上。なら、それは実質リアに勝ったと言えるんじゃないか?
「………………い」
『……杉原様?』
そうだ。それでいい。それで……。
「…………………ない」
『杉原様。なにを……?』
それでいい、はずなのに……。
「リアには負けない。間男さんに負けるのはいい。けど、寝取られでは負けられない……!」
俺の喉から出たのは、絞り出すような決意だった。
「誰もが寝取られを好きであって欲しいと。その感情は、きっと誰もが想う理想だ。だからラブコメになんて走らない。例え俺の寝取られが偽物で、未だに童貞であっても! この想いは、決して間違いなんかじゃないんだから……!」
そうだ、これは意地だ。プライドだ。
寝取られを憎んでいるやつに、寝取られを愛する者として、寝取られで負けるわけには決していかない。
例えそれが気持ちだけであってもだ。気持ちよくなる寝取られで、憎しみが勝っちゃいけねぇんだよ……!
『杉原様。貴方は……!』
「俺が寝取られの素晴らしさをリアに伝える! あと、リアは大学生って言ったよな!? なら成人しているはずだ! 俺はリアとコンビを組んで、今からエロ同人界に乗り込むぜ! 同人界に性杯戦争を巻き起こし、この世全ての寝取られをリアと一緒にばら撒くんだぐへぇ!!??」
鏡の前で決意をあらわにしていると、急に横から吹っ飛ばされた。
な、なんだなんだ!? ここは俺と鏡だけしかいないはずなのに、これは一体……。
「学。言ったよね、浮気はダメって。リアって誰? さっきからコソコソとなにを話していたの。答えて」
「帰ってきたと連絡を受けてきてみれば、随分と愉快なことを話していたっすね先生。なんスかエロ同人とか性杯戦争とか。勝手に連載に穴開けたり、先生は今が大事な時期だって分かってます? いや分かってないっすよね。分かってたら海外逃走とかしませんよねぶっ殺すぞおい」
「ひいっ!」
そこにはふたりのバーサーカーが立っていた。
無様に床に尻もちを付く俺を見下しながら、じりじりと一歩づつにじり寄ってくる。
「お、おい鏡! どうして言ってくれなかったんだよ! こいつらが来るって!」
『いやだって聞かれませんでしたし。私魔法の鏡ですから、基本聞かれたこと以外は答えませんよ?』
クソが! これだから道具風情はよぉっ!
「誰かとの相談は済んだ? なら始めちゃっていい? じゃあ犯すね」
『ちなみに、これから杉原様がどうなるか知りたいです?』
「もうこいつら先に言っちゃってるから! おせえよおおおおおおおおお!!!」
「やっちゃえ編集さん」
「UGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
バッドエンドを迎え、俺の叫びは空しく家に響くのだった。
「しくしく……」
「へー、質問になんでも答えてくれる鏡っすか。便利っすね」
「とりあえず私たちが学と幸せになる未来について聞いていい? あと学に一番似合う裸ワイシャツについても知りたい」
『いいですよ。ちなみにそこに転がってる人は近いうちに公式寝取られ同人を描くことを未だに諦めていないので警戒しておいた方がいいです』
……その後のことは語りたくもない。
マスターである俺をあっさり裏切り、強いほうに付いた鏡によって俺は寝取られをロクに描けなくなることが確定し、裸ワイシャツ姿でさめざめと泣くことになった。
なお、そんなことで諦めるわけのない俺はこっそりと漫画の方に綿密な伏線を仕込み、脇役だった主人公の親友にハーレムを形成して数多のサブヒロイン推しの者たちの脳を破壊することに成功したとだけ言っておく。
久しぶりに勢いで書きました。リア編もそのうち書きます。
リアは出ないけど続編書いたのでよろしくです
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