再会
男性が再び、彼に会いにあの通りに行くよ。
後藤大喜、年齢37歳、埼玉県在住、都内勤務、ごく普通なサラリーマンだ。普通に暮らし、普通に昇進し、家族は持たないが生活に困ることのない普通な生活を送ってきたのだ。
だというのに、なぜ私は満たされないのだろうか、別に女性にモテたいだとか、豪遊したいだとか今の生活に対する不満的な欲求なんて私の平凡な人生において一度も感じたことのない考えだ。
しかしなぜなのだろうか、雨の中寝転んでいる人間よりも生活が恵まれていて、精神的にも平和な日常が保障されているのだから優位であるといえるというのに、なぜ彼という人間に会いたいと惹かれてしまうのだろうか。
このような衝動に来る日も来る日も駆り立てられ、私はついにあの場所に行くことにした。
彼に会った当日は興奮して寝ることができなかったが、彼に会おうと決断した今日というのはなぜか安心して熟睡することができたのだ。
私は、あの日以来会いたいという衝動もあるが、心のどこかで彼に会うともう戻れないような恐怖から、あの道を通るのを避けてきた。
今日私は彼に会うのだ。
そう思うと不安とあの情景に対する歪んだ愛情が私の心をあの雨のように打ちつけた。
せっかくの休日だというのに、普段の私なら行くこともない会社への電車に揺られ、あの通りの駅に着いた。会社の道から少しそれ、あの通りへと向かう。
違う道だというのになぜかあの光景が私の手を引くように足早と向かわせるのだ。
あの通りにたどり着き、あたりを見渡す。そこには私より一回りは若い人たちが座っていたり、タバコや酒をたしなみ、バカ騒ぎしているひとたちもいた。
私は日本とは思えないこの情景に動揺が隠せなかった。この裕福で社会福祉に満ちた国家にも救われることのない若者がいるのかと戦慄したのだ。
近くを通るたちはだれも集まっている若者たちに見向きもせず、話しかけることもなく、ただ現実逃避をするように仮想空間を眺めながら、違う場所へと足早に立ち去っていった。
ここに来ることで社会の縮図を見ることになるとは思いもしなかった。私は新たな側面のあの異様な世界との交信の正体が分かったような気がした。
あの興奮は何だったんだろうか、馬鹿馬鹿しいと思い、あのときのように足早に若者連中に気づかれないように足早に去ろうとした。
「アッ、雨の時の人っすよね?」
そのとき、私は再びあの世界に引き込まれるような気がした。そう、あのときの彼が私を呼び止めたのだ。
今回は長いこと書いちゃった。
次回も読んでくれよな!!!