落語声劇「夏の医者」
落語声劇「夏の医者」
台本化:霧夜シオン@吟醸亭喃咄
所要時間:約30分
必要演者数:4名
(0:0:4)
※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。
よって性別は全て不問とさせていただきます。
(創作落語や合作などの落語声劇台本はその限りではありません。)
●登場人物
倅:鹿島村のお百姓さんである勘太の倅。
名前はない。父や叔父とその日を懸命に生きてる。
叔父:勘太の兄。
自分の弟が倒れたと聞き、医者を呼んでくるよう言いつける。
名前は辰衛門。
叔母:叔父の嫁。叔父と共に勘太の家に見舞いにやってくる。
玄伯先生:鹿島村とは山を挟んだ向こうの一本松村に住む、
半分百姓の医者。
この時代だから免状持ってるかなんて事は聞いてはいけない。
解体新書を書いたほうの玄伯先生ではない、たぶん。
うわばみ:山に古くから住む大蛇。
人を丸のみにしてしまう。
●配役例
倅:
叔父・うわばみ:
叔母・枕・語り:
玄伯:
※:この台本は方言がもともとキツいです。
アレンジとして、自分の土地の訛りで演じてみるのも良いかと思いま
す。
当台本はある程度は自分の感覚にのっとってなるべく原作に沿った言
い回しで書き起こしてますが、耳で聞いただけで誰でも分かる内容を
目指しているので、その点においての言い回しの差替え変更はご理解
願いたく思います。
枕:医者の免許というものは、明治維新後に制定されました。
それまでは他の医者に弟子入りしたり、傷寒論などの書物で知識を
得れば誰でもなれて、僧侶と同じく身分制度の枠外にあった為、地位
とか関係なかったわけです。
他にも今と昔と違うと言えば、ものの名前、呼び方ですな。
例えば、本題に登場する萵苣という野菜ですが、これはレタスの事で
す。奈良時代に日本に入って来て、当時は乳草と呼ばれていましたが
、それがだんだん訛って「ちちくさ」→「ちくさ」→「ちさ」→
「ちしゃ」となったわけです。
叔父:おぅい、おぅいいるけぇ!?
倅:あっ、こりゃ叔父さんでねぇか!
まぁまず、あがってけれ!
叔父:どうだ、えらい塩梅が悪ぃちゅうが。
倅:あぁ、とっつぁん、良くねぇんで。
いっこうに元気がねぇで、今度ぁ事によっちゃダメかと思って。
叔父:そうか…そりゃあいかんなぁ…。
まあ、おめぇが親孝行だで、あれも幸せだろぉ。
おい…何をしてるだ、はよ上がったらよかんべ。
叔母:ごめんなせぇな、おらもちょっくら行くべぇ、行くべぇと思っとっ
たが、なんだかんだ用があって手が放せねえで見舞い
に来れねえで…。
塩梅が悪いってなぁ、それぁいけねえ。
食い物が入らねぇんでは、力尽きるでのぅ。
倅:昨日もおとっつぁんが、飯食ってみるべぇかって言うもんだから、
おらも喜んで作ってみたけんどダメだ、いっこうに食えねえ。
叔母:ぁー、ダメかぇ。
倅:ああ、でけえ茶碗で八杯しか食わねえ。
叔母:そりゃあいかんねぇ…
八杯や十杯の飯しか食わんようではそりゃ心配だの…。
そしたらなぁ、米のメシでも食わしてやったらよかんべぇに。
倅:米のメシな、それも食わせるべかと思ったんだ。
けんど、米ちゅうのは何でも精が強ぇらしいから、眼を悪くするって
言うもんで。
叔母:それもそうだよ…こないだもなんだな、うちの村の藤作の奴が、
もういけねえてんで、嫁さんが米のメシ食わしてやるべぇてなった
んだ。
んで二升も炊いて食わしたら、んめぇんめぇて、二升全部ぺろりと
食っちまった。
そんで病は治ったが、眼悪くしちまっただ。
叔父:こらぁ、医者に診てもらったらよかんべ。
倅:ダメだぁ、この村にはお医者がいねぇんだ。
よそへ行けばいるけんど、そこも月にいっぺんだけしか来ねえっちゅ
うんだ。
叔父:なに、そんなに行かなくたって、一本松の村にいるべぇ。
叔母:あぁ、おるなぁ、一本松村に玄伯ちゅう先生が。
倅:あっ、そうだ…忘れてたなぁ…名前知ってるだ。
呼んでくるべぇ!
なあにわけねえ、隣村だで。
そんじゃ、叔父さんと叔母さん、
すまねぇども、おとっつぁんちょっくら見ててもらいてぇんだけども
…。
叔父:おぉおぉ、いいとも。
オラたちが見ててやるから、早えとこ迎えに行ってこい。
倅:頼んます!
ええと、笠、笠は…。
語り:叔父夫婦に父親の看病を頼むと、倅は急いで出かける支度に入りま
した。
とはいえ夏の事でございますから、襦袢一枚に番匠傘をかぶると、
とっとと地面を突くような足取りで駆け出していきました。
倅:はっ、はっ、はっ…おとっつぁん、待っててなぁ…!
お医者を必ず連れて帰るで…!
語り:とはいえこの時代、道なんて主要な街道以外はほぼ整備されておら
ず、乗り物もあるわけがない。
隣村と言うからにはせいぜい五・六町…660メートル程度かと
思うかもしれません。
だが実際は山すそを回った六里先…恐ろしく辺鄙なところでござい
ます。
24キロメートルもの一本松村への道のりを、倅は駆け通したので
した。
倅:はあ、はあ、はあ…つ、ついた…。
この家だべ…。
ごめんくだい!
ごめんくだい!!
先生、いらっしゃらねぇがい!?
玄伯:? はて、誰か来たべか…?
倅:うーん留守だべか、困ったなや…
ごめんくだい!!
玄伯:やっぱ誰か来とるな…。
おうい! こっちだ! 裏だぁ! 裏の畑だぁ!!
倅:あっ、いらっしゃっただ!
【走っていく・二拍】
先生!
ありゃ、越中ふんどし一丁に被り傘ひとつで…。
先生、何をなさっとるんで!?
玄伯:草むしりだぁ。
じっとしとっても汗ぇ出るで、手ぇ動かしとったら気ぃまぎれるじ
ゃろ思ってな。
それで、どっから来たんじゃ?
倅:おらぁ鹿島村から来たもんです。
おとっつぁんの塩梅が悪いで、ちょっくら診てもらいてぇんで。
玄伯:おぉ病人かぁ。
よしよし、診てやるべ…
あ、ちょっくら待てや、もう二つめで終わるで、
そこさ座って、一服やって待つがええ。
倅:へ、へえ。
語り:のんきなもんです。
かたやしきりに草をむしって、かたや上がりかまちに腰かけて、
馬鹿なツラして煙草をのんでいようという、考えてみれば病人がい
るというのに、まこと悠長なものでございます。
やがて草むしりを終えると玄伯先生、着物を着ると何だか元の色が
分からなくなった帯を締め、セミの羽みたいな羽織を一枚ひっかけ
て支度を整えました。
玄伯:いやあ、えらく待たした。
そこに薬籠があるべ。
倅:へっ? 何です?
玄伯:あぁ、薬籠て薬箱だ。
すまねえがおめぇ、それ持って付いてきてけれ。
倅:へ、へっ、ようがす。
したらば行きますべ。
玄伯:ああ、出かけるべぇ。
語り:倅と玄伯先生、やっとのことで出発すると、鹿島村へむけて
道を急いだ。
倅:いやー、先生、暑いべぇ。
玄伯:暑いなぁ、夏は暑くなきゃダメだっちゅうが、年ぃ取ると堪えるで
。
そういやぁおめえ、鹿島の誰の倅だ?
倅:勘太でがす。
玄伯:勘太…、
!あぁあぁ、辰衛門さんの弟だ。
こぶの勘太さんてな、へへへ…おらと若ぇうちゃ、道楽こいたもん
だ。
おぉいおぃ、どっちさ行くだ。
そっちさ行ったら山のすそ回って六里もあるべ。
倅:へえ、行きはこっちを来たんで。
玄伯:それじゃ間に合わねぇかもしれねぇ。
登りはちょっくらきついが、山ぁ越えたらよかんべ。
扇山越えれば…そうやな、一里ちょっとは得するだが…どうだ?
倅:そりゃあ、早ぇほうがええ。
玄伯:そうか、そんじゃぁおらが案内してやるべ。
語り:そうと決まると玄伯先生、道案内で山をどんどん登って行きました
が、頂上へ着いた時は二人とももう、滝を浴びたような汗をかいて
おりました。
倅:あー、しょっぺぇ、しょっぺぇ。
はぁ汗しょっぺぇ。
玄伯:いやあ、きつかったなぁ。
ここまでは上りだが、あとはもう下りだから楽だ。
ちょっくらここで、一息入れるべ…ああ、この松の下がええだ。
はぁ~やれやれ……あ、とんだことしただ。
倅:? 先生、なんとしたべ?
玄伯:いやぁ忘れ物した。
火道具持たねえで来ただ…。
倅:先生、おらさ持たせたの忘れてるべ。
玄伯:あぁあるか、あぁ良かった良かった。
煙草入れ持ってきて火道具なきゃ、のめねえからな。
あんまり慌てたからな…。
【キセルをくわえた状態で】
あぁすまねぇ、火ぃもらうで。
うわばみ:【つぶやく】
ん…?
昼寝の邪魔をするなぁ誰かと思ったら、人間でねえか…。
しかも二人だ…。
玄伯:【一服ふかして】
うぅ~、良い風ぇくるなぁ。
はぁあぁ~~気持ちいいだね。
汗かいた後に、風ぇ入れて一服やるちゅうのはァ、
なんとも言えねえ良い心持ちなもんだ。
【もう一回ふかす】
あぁ~、極楽の風ちゅうな…ははは…。
…ほう、でけえトンボがいるだね。
【もう一回ふかす】
今年はなにか、おめぇの方の麦は、出来はどうだ?
倅:あぁ、麦はぁあんまり出来が良くねえで。
うわばみ:【つぶやく】
お前らは出来良さそうだな…うまそうだで…。
玄伯:なに、良くねえ? ほぉ…。
おらの方は、今年は悪くねえなぁ。
いやあ、ちっとばかしの違えだが、土の性質が違うでな、うん。
【キセルをくわえたまま】
…野菜ものはどぉだ、野菜ものは…ダメだぁなぁ…。
雨が降ればええが、こんなに、
【またキセルをくわえたまま】
日照り続きじゃぁダメだ、ん。
【もう一回ふかす】
スイカはえらく儲かるから、やってみねえかなんて言うが、
今年ゃもう、おらのとこじゃあ間に合わねえなぁ。
来年は、スイカ作ってみるべかと思ってな、うーん…
倅:【↑の語尾に被せて】
先生ぇ、もうそろそろ行きますべぇ。
出かけべぇ。
玄伯:出かけるて、もう行くか?
…まだ早かべぇ。
はぁ~…いい風だべぇ、ここぁ。
たまんねえなぁ、えぇ気持ちで…。
そんなにおめぇ、ガチャガチャ言うことねぇよ。
おらが行って診てやるだで、間違ぇねえ。
倅:そんだけど、気にかかってなんねぇでよぅ。
うわばみ:【つぶやく】
おぉっと、せっかくのお八つだぁ、逃がさねぇど。
玄伯:気ぜわしねぇ男だなぁ…
【キセルの灰を落としながら】
もっとも、無理もねえな。
病人かかえていちゃ、気も急くべ。
よしよし、汗も引いたで、そんじゃ行くかぁ。
倅:へぇ、そんじゃ出かけーー
うわばみ:【↑の語尾に喰い気味につぶやく】
いだだぎまぁず。
倅:【↑の語尾に喰い気味に】
うわっ?
い、いきなり真っ暗に…?
先生! 先生ー!
【二拍】
玄伯:はい…はいはい。
ここだ、ここだぁ。
倅:どこおらっしゃる!?
玄伯:ここだよ。
倅:なんだか…えれぇ暗くなっただ!
玄伯:あぁ、暗くなったな。
いっぺんに日ぃ暮れたわけじゃねえな。
うわばみ:ははは…二人もたぁ、もうけたでぇ。
倅:なんか…えらく温いでねえか!?
玄伯:ふうむ…温いな…。
ただ事でねえな、こりゃ。
いったいなんだ………あ。
倅:なんとしたべ、先生!
玄伯:これぁいかんな。
この山にゃあ年ふりたうわばみが住んでるてぇ話は聞いとったが…
。
ことによるとこれァ…呑まれたかな?
倅:呑まれたて…そんじゃあ何けえ、うわばみの肚さ入ったんだか!?
玄伯:あぁ…もう入ってるかな。
倅;入ってるかなって…それじゃどうすんだ!?
玄伯:どうするったって…もう肚に入っちまってるわな。
じっとしてりゃ、そのうち俺もおめえもじわじわ溶けるべな。
倅:やだなぁ!
やだぁ先生ぇ、おら溶けるのやだァ!!
どうすべえ!?
玄伯:どうすべえって…おめえみてえにそう騒いだって出られるもんじゃ
ねえ。
ああ、困ったな…刀ぁ持って来るんだった。
肚ぁかっ捌いて出られるのに…。
うーん……。
【二拍】
待てよ……あ、そうだ、おめえさ預けた薬籠があんべぇ。
それをこっちに出すんじゃ。
中に下剤が入っとるからな、腹下しさせてみるべえ。
うまくいけば、腹下しと一緒に外さ出られるべ。
語り:そう言って玄伯先生、倅に持たせてた薬籠の引き出しから大黄の粉
という昔の下剤を取り出すと、そこいらへぱらぱらぱらと振りまき
ました。
薬てのはあまり飲まない者ほど効果はてきめんに効くわけで。
うわばみは生まれて初めて飲まされたであろう大黄の効果に、
腹はギリギリギリギリ痛んでくる、苦しみのあまり七転八倒するわ
でもう大変な騒ぎです。
うわばみ:うぎぎぎ…い、いったいなんだぁぁああ!?
倅:うわあああ、先生ぇ!
うわばみの奴、えらい暴れとるわ!
玄伯:っととと、いい塩梅だ、薬が効いてる証拠だ。
ほれほれ、あれ見ろ。
向こうに灯りが見えるべ。
あれぁ尻の穴に違ぇねえ。
もうちっとだ。
語り:そうこうしてるうちに二人とも下されて、尻穴から草の上にどーん
と放り出された。
倅:あ、そ、外だ! た、助かっただか!?
うわばみ:うぐぐぐぐ、いでえ、いでえええ…!!
倅:うわーっ、せ、せんせえ! どこだぁ!?
玄伯:おお、ここにいるだ、早く来い!
語り:腹を下して苦しむうわばみを尻目に、ふたり手を取り合って転がる
ように山を駆け下りると一目散に家へ戻った。
倅:叔父さん、叔母さん!
ただいま戻っただぁ!
叔母:おぅおぅおかえ———うぐっ。
叔父:おお帰って——っくせえな!
どうしたんだおめえ。
倅:いやあ、玄伯先生が山越えしたらよかんべ、て言うもんだから、
登ってったら、頂上でうわばみに呑まれてしまってよぅ。
叔母:ありゃ、扇山のうわばみが出ただか!?
叔父:言い伝えばかりだと思っとったが…。
それが、そのくせえのと関係あるんか?
倅:いやあ、医者てのはえれぇもんだ。
大黄ちゅう薬をまいて、腹ァ下したうわばみの尻から出て来れただ。
叔母:はあぁ、腹下しの薬かけただか。
叔父:そうかぁ、そりゃまあ良かった。
で、先生もか?
倅:あぁ、先生もーー……あれ?
いねぇ…?
……溶けたかな?
いやいや、さっきまで一緒にいただよ。
叔母:ああ、先生だったら、井戸で身体ぁ洗ってるだ。
倅:あ、なあんだ、井戸端にいなさったか。
叔父:おうおう、ざあざあ水かぶってなさる。
玄伯:いやぁははは…、うわばみの糞でえらいくせぇでな。
ちょっくら水浴びしてただ。
いや、こんななりですまねえが、お久しぶりで。
あんたも変わりねえでええね。
弟さんの塩梅が悪いちゅうからな、よしよし、診てやんべぇ。
どれ……。
…ふむ。
……ふむふむ。
叔母:せ、先生ぇ…どうですだ…?
叔父:弟は…助かるべか…?
倅:おとっつぁん…!
玄伯:うむ、こりゃあ案ずるこたぁねえ。
食あたりだ。
なんぞ、えらいもん食ったんでねえか?
倅:うーん……、あ!そうだ、萵苣の胡麻よごし食ったなぁ。
玄伯:なに、萵苣の胡麻よごし?
倅:えぇ、おとっつぁんのえらい好物だで。
玄伯:そりゃあいけねえ。夏の萵苣は腹へ障ることあるで。
まぁわけねぇ、薬を二、三服でも飲みゃあ元気になるべ。
こさえてやるから、薬籠出してくれ。
おめぇさ預けたろ。
倅:えっ、肚ん中で先生さ渡したべ。
玄伯:! …あぁ…そうか……。
うわばみの肚ん中さ忘れてきた…。
これは困っただ…あれがねえんじゃ、商売にならねえでなあ。
さて、どうすべぇ……。
倅:せ、先生…。
玄伯:しょうがねえ、ちょっくら行って来るか。
叔父:先生、どこさ行きなさる!?
玄伯:あぁ、ちょっくら行ってな、もういっぺん呑まれてくる。
薬籠取り返したら、また戻ってくるでな。
語り:玄伯先生、元気なものでどんどんどんどん山を登って頂上へ着き、
ひょいっと向こうを見ると、うわばみは夏の土用のさなかに下剤を
掛けられてすっかり衰弱しちまい、顔の肉は落ちて頬はこける、
大きな松の木に首をだらーんと下げて、ぜぇぜぇ喘いでいる。
玄伯:おぉおぉここさいたか、あぁ良かった良かった。
雨でも降っちまったらどこ探していいかと思って案じていたが、
安心した。
うわばみ:お前ぇは…さっきの人間か…。
いったい何者だぁ…?
玄伯:いやぁ、こう見えて医者なんだがな、肚ん中さ忘れ物しただ。
すまねぇが、もういっぺん吞んでくれんかな?
うわばみ:ダメだぁ。
玄伯:え?
うわばみ:誰が呑むかよぉ。
玄伯:んな事言わねえで、もういっぺん吞んでくれよ。
うわばみ:いやあ、もう嫌だ。
夏の医者は腹へ障る。
終劇
参考にした落語口演の噺家演者様等(敬称略)
三遊亭円生(六代目)
●用語解説
・チシャの胡麻よごし
チシャは「萵苣」と書き、萵苣筍と葉萵苣がある。
この噺のはおそらく葉萵苣。西洋ではレタス、日本では小松菜が同族の品
種です。上方落語に「ちしゃ医者」という噺がありますが、別の話です。
・ばっちょう笠
「番匠笠」が訛った言葉です。
竹の皮を張った、浅く大きな笠で、駕籠屋がよくかぶっていました。
・下剤
大黄の粉末を用いて作られる薬です。
・薬籠
医者の携帯用薬箱。
桐の小箱で引き出しがあり、中は細かく仕切られていました。
普通、往診の際は供に持たせます。