時の行方 その2
大広間へ続く襖を勢いよく開けると、ちょうど楠田先生がチョークで金の襖に書いている途中だった。
「だー! 遅刻だーー!」
「ハハッ。遅刻ってわけじゃないよ。風ノ助くん。ここは学校じゃないからね。今から海賊船を一つずつ離れ離れにする作戦を書いていこうとしているんだよ」
「そんな作戦が?!」
「ああ……ええと……風ノ助くんは陽動作戦という作戦を知っているかい?」
陽動作戦?
確か……?
確か、おじいちゃんから聞いたことがあるんだ。
あ! そうだ!
敵の目をごまかして、こっちは本来の目的をし、相手を派手な行動で混乱状態にしてしまう。だったっけ?
「多分、風ノ助くんなら容易にできると思うんだ……この作戦ならいいかなっと……よし、できた!」
「へ??」
楠田先生は立夏ちゃんや豊子ちゃん。煤野沢の目の前で、想像を絶するとも言える作戦を書いた。
「台風で混乱させる……?」
俺は混乱した。
「先生。意味がわかりません?」
「???」
「……この時代を台風が襲う時があるのか? じゃあ、じっとしていていいんだな」
皆が、混乱していて、俺には煤野沢だけが正解に思えた。
この時代に台風が来る日を歴史の先生である楠田先生は知ってておかしくない。
廊下から垂れた杉の木から緑の葉が舞った。
「いや……違うんだ。この時代にも台風がくる日はあるけどね。これは風ノ助くんの能力で……」
「へ??」
「風ノ助くん。君は小さい頃から風を自由に操れるんだ。今まで風をすごく意識した時はないかな」
「へ???」
俺は頭を抱えた。
俺に異能の力が?!
「いや、風ノ助くん。……まだ、その力は……潜在能力を目覚めさせないといけないし、子供の頃を思い出してごらん。それに……残念だけど、そんなに大したことはないんだね」
「う?!」
……俺って……? 焦ってしまうぞ……。
「なあ、風ノ助。台風が起こせるんなら、それはそれで強いんじゃねえ?」
煤野沢の一声。
「風使いってな、俺でもできるんですか? 先生?」
「いや……風ノ助くんだけだよ。だから風を操れるから風ノ助と名付けられたようだ。風ノ助くんの祖父とは仲がとても良くてね。そう……遥か昔からね」
楠田先生は無言でカリカリと襖へ書いていった。
それは、台風が中心になって方々へ海賊船が散らばるような図になった。
「うん?」
俺はただひたすら唸る。
「先生! 質問です!」
立夏ちゃんが挙手した。
「ああ。いいよ」
「先生の図では、真ん中にも海賊船がたくさん集まっています。それでは陽動作戦の意味がありません!」
立夏ちゃんは鋭い。
「うん。そうだね。その通りだね」
カリカリ。カリカリ。
「よしっと。これでいいんだ」
楠田先生は手についたチョークの白い粉をパンパンと叩いた。
「う! ピキーン!!」
真ん中の海賊船は……そうか! 全部が大型の海賊船だ!
そうだ! クラスのみんなを助けるため小型船だけ蹴散らそうということだ!