もしも
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バンッ…!
泣き叫ぶ奴隷商たちを見ていると扉が開く音がした
「シャル!大丈夫、か…………これは…」
「あ、帝王様!皇子様も…!助けに来てくれたんですね…!」
帝王様だけではなく皇子様まで助けに来てくれたとは
その後ろにいるのは……銀のフェンリル
近衛騎士か
ボクだけの為に近衛騎士をだしてくれるとは…
帝王様はやっぱり優しいなぁ
でも、もう必要ないか
だって、ボク一人で片付けられるから
後で謝っておこう
そんなこと考えていると帝王様は強張った顔でボクに話しかけてきた
「何をしている」
「え?」
………?
見てわからない?
「殺そうとしています」
「なぜだ」
なぜって…
「だって、この人たち殺したんです、サフィアを。サフィアが倒れてたのは見たけど生きていたのでしょう。でもこいつらに捕まえられて奴隷にされそうになって弱ったからといって捨てられた。あの魔物の生みの母と呼ばれるルテリケルの森に……」
あぁ、どんどん湧き出てくる
胸の奥からドロドロした黒いなにかが
憎しみ、憎悪、怒り、恨み………
分からない
分からないけど…
これがボク
「それって殺したのと同じですよね?だから殺すんです。復讐の為に………サフィアと同じ…いや、それ以上の恐怖を味わえばいい」
皆目を見開いている
帝王様も皇子様も驚いている
ボクがこんなに喋っているから?
それとも表情?言っていること?
でもこれがボクなんだ
すると帝王様は意外なことを言った
「やめろ」
「なぜ?帝王様は復讐に協力してくれるのでしょう?」
「そいつらはまだ情報をはいていない」
「今はかせましょうか?」
「嘘をつくかもしれん。それに今は駄目だ」
これは帝王様がボクを止めるための嘘
分かってる、分かってるけど…
止められない
「な、んで…なんで!こいつらはボクの唯一を奪った!ボクの大事な、大事な……こいつらを殺して何が悪い…!サフィアはボクに仕えてくれた…ボクに仕えて幸せだって言ってくれた……ボクの大事なサフィアを、親友を奪ったんだ……止めないでよ……」
大好きだった
年が近いからとボクに仕えさせられたのに嬉しそうに仕えてくれた
叱ってくれることさえ嬉しかった
同い年のルーシーよりも仲が良くて
神子としてではなく、自分を見てくれた
そんなサフィアが大好きだった
「そうか、お前の気持ちは余には分からん。余はサフィアという者を知らんからな。だがシャルよ。サフィアとやらは弱ったからという理由で捨てられたと言ったな。もしもだ、もしサフィアとやらが生きていたとしたらどうする」
え…?
もし生きていたとしたら…?
ルテリケルの森に捨てられたのに?
生きているなんて無きに等しい
………でも
確実に死んだとは言い切れない
証拠がないから
「もし生きていて再会できたら、お前は以前と同じように話せるか?……人殺しとなったお前は」
「!?」
人殺しになったボク?
復讐をするのだから人殺しになる運命なんだよ?
今更何言っているんだ
帝王様の言っていることは全て確証がない
全て出鱈目だ
でも……
どこか心に引っかかる
「お前が信じないでどうする。サフィアとやらを知っているのはお前だけだ」
ボクだけ……か
サフィアの事を一番知っているのはボクだ
サフィアは強い
魔法に関しては敵わないぐらい
でもルテリケルの森に…
「でも…復讐しなきゃ」
「言っただろう。生きている可能性を。生きていたらそいつらは殺してない。復讐には入らない」
「でも傷つけた」
「殺していないのに殺されるのはそいつらの代償が大きすぎるだろう」
だけど…
「それに復讐は殺すだけではない。他にも方法はいくらでもある。死よりも苦しませる方法だってある。殺すのはサフィアとやらの死の確認がとれたらでもいいだろう。それまでは生きていることを信じろ」
………ははっ
帝王様は余程ボクに人を殺してほしくないらしい
それには理由があってのことだと思う
帝王様はボクの復讐を認めてくれた人なのだから
でも……そっか
復讐はいくらでも方法がある
うん、確かにそうだ
でもそれ仮にも皇帝が言っていいことなの?
まぁでも、それがボクが信頼した帝王様だから
信じよう、生きていると…
「……そうだね、確かにそうだ。復讐はいくらでも方法がある。それにボクがサフィアを信じないでどうする……うん、ありがとう帝王様。ボク、希望を持ってみる」
「あぁ、そうしろ」
ボクは檻の中の進む針を止め、檻を溶かして輪を作り奴隷商たちの手と足を縛った
これで逃げることができないだろう
ボクは奴隷商たちに近寄って耳元で呟いた
「悪人さん。もしサフィアが生きていなかったら………ふふ、どうなるだろうね」
「ヒィッ」
うわ、失神してる
「シャル、行くぞ」
「はい、今行き、ま………あれ?なんだ、か目がグラグラ、す……る………」
身体から力が抜けるように倒れてしまった
次回から少しの間クリスティル目線の話になります




