第23話 見つけられたり、見つけたり
「そっ、そんな人がわたしたちになんのご用でしょうかっ!」
家麗さん、声が固いわね。なんか声裏返ったままだし。
「女の子みたいな可愛らしい少年――つまりあなた方が現れたとの報告を受けましてね。こうして自分が参上した次第です」
私は家麗さんにニコッと笑いかけた。
「ほらね、言ったとおりでしょ。よだれ垂らした食いしん坊が干し肉に食いついてきたわよ」
「もっ、もうっ。そんなことおっしゃって……」
家麗さんが顔を赤くする。
眼鏡の男、趙世臣さんは眼鏡をくいっとあげた。
「ですが驚きましたよ。まさかあなただとはね……」
「へぇ。私のこと知ってるの?」
「ええ。……誰かまでは申しません。それは言わない方があなたの身のためですし、私の身のためでもあります」
一応、私たちは禁を犯して後宮を出て来ている。だからここでキッパリと言い当てられるのは、確かに都合が悪いのは事実だった。
「お心遣い感謝するわ、世臣さん。じゃあこの設定のままでいくわね。私は後宮商人の従者をしている者で、名は――」
「それは、知っています」
「え?」
「後宮の女性たちがそういう設定を使っている、ということは。偽名も把握しております。ですから目的の少年もそのうちの誰かなのではないかという予測はありました。ですが誰かまでは分からず……だからこうして火をつけてみたのです」
なるほどね。けっこうな情報通ってことか、この武官さんは。
「へぇ、作戦通りにいぶり出されちゃったってわけか。ねえ家麗さん、私たちって干し肉じゃなくて燻製肉だったみたいよ?」
「もっもうっ。いい加減そこから離れて下さいましっ」
家麗さんが真っ赤になる。
……私、そんなにおかしなこと言ってるかしらね?
「そっ、それより世臣様。これだけは言わせてくださいませ。後宮の女性たちが怖がっているのです。これ以上の後宮への詮索はやめていただきとうございます」
「……そうですね。自分としても目的は叶いましたし、これ以上の火付けはいたしません。それはお約束しましょう」
「ねえ、世臣さん。誰に私を捜せっていわれたの?」
私の脳裏にはあの朱い瞳の男が浮かんでいた。
だが世臣さんは龍帝陛下の御前随身だ。
御前随身といえば龍帝陛下直属の武官で、そんな人に命令を下せるのは龍帝陛下くらいだろう。
だが龍帝陛下には私を捜す理由なんかない。もしかしたら世臣さんは、龍帝陛下以外の誰かにお金で雇われているのかもしれない。
「それとも私を捜していたのはあなた自身かしら?」
「お答えすることはできません」
「龍帝陛下に頼まれたか、他の誰かに頼まれたか。その二択を答えるだけでいいわよ?」
「……言えません」
「そう。じゃあいいわ。そのかわり……一つ約束してくれる?」
「……なんでしょうか」
「男装して外に出ているのは私だけだと、その人に伝えておいて」
「氷水様……!」
「後宮のみんなは無実ってことよ。単に私がワガママなの。一つのところに閉じこもるのって性に合わなくてね」
「それは、分かりました」
「ありがとう。言いたいはことそれだけよ。……じゃあね」
これ以上の情報は得られそうにない。目的も済んだし、後宮に戻ろう。
「ありがとうございます、氷水様!」
「どういたしまして。なんか私がヘマしたからこうなっちゃったみたいだし、責任はとるわよ。さ、みんにそう伝えて安心させてあげましょう」
「はいっ!」
なんて放しながら世臣さんの横を通り過ぎようとした時、彼が口を開いた。
「……君。最後に一ついいかな」
「なに?」
「いえ、あなたではなく……」
彼は家麗さんを見ていた。
「そちらの従者……らしき方です」
「ひゃっ、ひゃいっ」
とたんに顔が真っ赤になる家麗さん。
……家麗さん、世臣さんのこと意識しすぎじゃない?
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