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第13話 助けられる水氷

「おい、どうしぎゃあっ!!」


 続けて、私を押さえつけていた男が宙を舞った。


「え……?」


 いくらなんでもまだ真琉は来ていないし……。


 何が起こったのか分からず呆然としてしまうる……が、すぐに誰かが私を助け起こしてくれた。


「ほら。大丈夫か?」


 聞いたことのない、優しい男の声がした。


 誰だろうと思って見上げると、知らない男がひざまずいて私に手を貸してくれていたのだ。


 美しい刺繍の入った黒い服を着ているが、分かるのはそれだけ。顔は布をぐるぐると巻いた頭巾で隠しているのだ。だがなによりもその朱い目が印象的だった。


「立てるか?」


「は、はい」


 彼は私を立たせてくれた。

 あたりを見ると、私を襲おうとしていた男たちが気絶している。この人が助けてくれたんだ……。


「あ、ありがとうございます」


 私はなんとか立ち上がって礼を言う。

 朱い瞳の男……。顔は見えないけど、声や体格からするとまだ若いみたい。それに、目しか見えないけど顔がすごく整っているんだろうな、という雰囲気がある。


「ほら、これ。大切なものなんだろ」


 彼は短刀を拾い上げ、渡してくれた。


「あ、ありがとうございます……」


 私は再び礼をいったのだが、すぐに、


「あっ」


 と手を引っ込めた。


 短刀を手渡された時、一瞬手が触れ合ってしまったのだ。


「あ、すまんな。……ていうのもおかしいか。男同士なんだし」


 彼は笑って短刀を渡してくれる。


 その笑顔に――朱い目しか見えていないけれど。……私の胸は、何故かどきんとした。


「あ、あの。これ、母の形見なんです」


 なんだか恥ずかしくて男の朱い瞳が見れず、そんなことを言いながら短刀を懐にしまう私。それでももじもじしてしてしまう。


 私、なんでこんなにドキドキしているんだろう……?


「そうか、取り返せてよかったな。大切にしろよ」


 そういって男は朱い目だけで微笑む。


 ……背が高い人だった。

 それに、すごくいい体つきをしている。着ている服は高級そうだから貴族か豪商の子弟だろうか。


「はい。ありがとうございます」


「……あのさ。お前、男、なんだよな?」


「え? えっと、はい」


 私はこくりと頷いた。

 そうだった、今の私は男に変装しているのだった。


 男は納得したように何度も何度も頷く。


「うん……、男だよな。うん、それでいい。お前も大変だな、こんな奴らに絡まれて」


「いえ、その、助かりました。男でもこういう輩って絡んでくるんですね」


 私は意識して低い声でそういう。


 男は気の毒そうに目を細め、

 

「すまんな、ほんと……」


「え?」


「あ、いや。世の中ってのは思いのほかいろんな奴がいるからさ……。まったく、人間の性欲ってのは底なし沼だよな」


「そ、そうですね」


「特にお前は綺麗だし気をつけないとダメだぞ」


「き、きれいって、そんな」


 顔が熱くなる。

 それからはっとして、私は頭巾で髪だけではなく顔の方まで隠した。


 見られた……ってことよね。白い髪とか、顔とか。


「あ……悪い。なんか変なこと言っちゃったらすまん。俺、そっち方面疎くてな」


 そういうことではないんだけど……。

 だいたいそっち方面ってなんなのよ。まあいいや、深掘りはしないでおこう。


「うっ……」


「うう」


 そのとき、気絶しているはずの男たちのうめき声が聞こえた。


 目が覚めようとしているのだ。


 ……やばい。気がつかれたら面倒になる。


「あ、おい――」


 私は咄嗟に朱い瞳の男の手を引くと、その場を離れた。








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