容疑者K取調べ中の発言
はい、霜田を殺したのは僕です。いや、殺したと言うのは妥当ではないかな。僕が行ったのは殺人ではなく自殺補助です。霜田、死にたがってたんです。僕はそれを手伝っただけだ。本当ですよ。
僕と霜田は悪友でした。あいつは、霜田は根っからの勝ち組だったんでしょうね。何をしても上手くいく。故に刺激がないって言い出したんです。だからわざわざ僕に声をかけてきた。何で僕に声をかけてきたかって? なんか、僕が同級生の中で一番倫理観が薄そうに見えたかららしいですよ。失礼極まりないですよね。
霜田とは、放課後よく二人で遊びに出かけました。僕は普段学校では地味生徒として通っているので、髪をワックスであげて服をちょっと派手にすれば誰も僕だと気づきませんでした。
……どんな遊びをしたかって? 色々やりましたよ。例えば満員電車に乗ってリーマンのおっさんを痴漢の冤罪で捕まえて金奪ったり、援交目的のおっさんを霜田使って捕まえてバラされたくなかったら金払えって脅したり、特に楽しかったのは、いろんな店に行って会計の済ませていない商品を他人の鞄に突っ込むゲーム。一回それで同級生が捕まったことあって、その時は霜田にフォローしてもらいました。楽しかったなぁ。
え、それを遊びとは言わない? 犯罪? 知りませんよそんなこと。僕たちにとってあれらは楽しい遊びだったんです。僕はそういう遊びにのめり込んだけど霜田はそうじゃなかった。もちろん最初は刺激を楽しんでましたよ。でも三ヶ月もする頃には飽きてましたね。でもあいつはこれ以上悪いことをする勇気も度胸もなかった。だからといって現状維持も耐えられなかった。
何で現状維持が嫌だったのかって? いやぁ僕には到底理解できないんですけどね、今が本当に幸せすぎて不幸が起こることに耐えられない。それなら不幸が起こる前に死にたいと、そう言っていました。本当に理解不能です。
だから殺してあげたんですよ。もちろん同意の上ですよ。というか、むしろ向こうから頼んできたんですよ、殺してくれって。僕なら倫理観薄いから殺しても心痛まないでしょって。本当に失礼なやつですよ。死ぬ時のロケーションまで聞いて実行してあげたんですよ。むしろ褒めてもらいたいですね。人助けですよ。
え? あぁはい、〇〇山で死にたいって言ったのは霜田ですよ。あの死体見ましたか? 綺麗だったでしょ? あの青のワンピース、あれは僕のリクエストです。わざわざ山に登って死ぬ前に着替えてもらったんですよ。似合ってたでしょ。あいつもいいね、と言ってくれました。
だからね、僕のあれは殺人じゃない。自殺補助だ。殺人と言われるのは心外ですね。
……そうだ、あいつはこの事件、僕が捕まるのかを最後まで気にしていました。いえ、申し訳なく思っていたとかそういうわけではなくてですね、明らかに殺人だと思われる事件に被害者が協力していたら犯人は捕まるのかどうか。要するに好奇心ですね。あの世から見れたら見てるね、あの世なんて信じてないけど、と笑ってました。……今この様子も見られてるんですかね?
警察の皆さんだって、ミューチューバーの金魚さんの動画に僕が映ってなかったら、僕のこと捕まえられなかったんじゃないですか? あの人結構失礼な人でしたけど、今や僕のおかげで人気ミューチューバーですもんね。刑期満了したら殺しにいこうかな。
……冗談ですよ。とまぁ、こんな感じです。これ以上話すことはありません。本当ですってば。ずっと喋ってたら疲れたなぁ。ちょっと休みますね。これ以降は黙秘ってことで。
おやすみなさい。
こちらは、様々な人のお話を聞くことにより一人の人間の人格がわかっていくという構想になっています。楽しんでいただけたなら幸いです。
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。