新事実~ウミウシの魔法~海中~プレゼント
ナメオはウミウシに、お家が欲しいと訴えました。
「あなたはお家が欲しくないの?」
ナメオはおずおずと聞いてみました。
「笑止千万! お家って…クスクス」
「その後ろに居るお友達が背負ってる殻でしょ? いらないわよ!」
美しい仲間は言います。
「教えてあげるわ。海の仲間も、陸に上がった仲間もそうなんだけどね…殻のある貝族が進化して、殻を脱ぎ捨てて今の私達になったのよ!」
「殻のお家で身を守る種族は、古いタイプなのよ。あなた、自分の姿に誇りを持ちなさいな」
「ええええ?」
ナメオもデンデンもビックリ仰天、顔を見合わせます。
進化してお家を捨ててしまった? なんでそんなバカなことを?
それは進化じゃなくて、退化じゃ無いの? ナメオは考えました。
「……でも僕は、やっぱりお家が欲しい…僕はそんな進化なんてしたくなかった…」
「なんておバカで頑固な子なのっ。その地味な姿がいけないのね…ちょっとコッチ来なさいっ。魔法をかけたげる」
ウミウシが、チョイチョイと手招きしました。
どうしよう…浅瀬ですが、ウミウシは海の中に居ます。お家探しの時も海の中までは入っていません。
昔、池に落ちた時の事を覚えていたからです。
「は・や・くっ!」
ウミウシの怒ったような声に、ナメオは咄嗟に飛び込んでしまいました。
ウミウシは器用にナメオを捕まえて、包み込むように海の中に連れて行きます…
「あああっ苦しいっ」
目の前が真っ青です…ナメオは後悔しながら気が遠くなっていきました。
「ナメオ〜〜〜〜っ!!」
デンデンは、どうすることも出来ません。
ウミウシは海より碧い液体を撒き散らして、ナメオを包んでいきます。
ナメオが青く染まっていくのが分かります。そしてどんどん体が縮んで、青が濃くなっていきました。
「ほらっソコのお友達っ!」
ウミウシがデンデンに、小さな塊を投げて寄越します。
ナメオは、花の種のような硬い小さな青黒い塊になっていました。
「私のプレゼントはコレでおしまいよ。海はあなた達の住むところじゃ無いわ…元居た場所に帰りなさい」
ウミウシは海の深い方へ行ってしまい、見えなくなってしまいました。