ヤドカリ~初めてのお家
なんだかボロボロのお家の貝が近づいてきました。
よく見るとデンデンやナメオと姿が違います。さっきの貝とも違います。
その貝は体がお家と同じくらい硬くて、刺さったら痛そうな手と長い足を持っていました。
ボロボロの貝の動きはとても早くて、あっという間に通り過ぎて行きました。
ナメオとデンデンはびっくりして、ずっとその貝を見ていました。
ボロ貝は、ちょっと先に居たキレイで大きめの貝を挟んで持ち上げたり、硬い手を中に突っ込んだりしてました。
そして、おもむろにボロ貝から体が抜けて、ささっとキレイな貝の中に入ってしまいました。
二人はさらにびっくりして、声も出ず立ち尽くしていました。
キレイな新しいお家になった貝がこちらに戻ってきます。
ナメオは意を決して話しかけました。
「あなたはお家から出る事が出来るのですね?」
「俺はヤドカリだからなぁ。何度でも、どんどん引越しするさ」
「古いお家は…どうするの?」
「お前にやるよ。ヒッヒッヒ」
ヤドカリはそう言うと、すごい速度で行ってしまいました。
「行こう!」
デンデンがヤドカリの古いお家を指差します。
ヤドカリの古いお家には扉はありませんでした。誰も住んでいないお家です。
でも最初に見た通りボロボロでした。
「デンデンのお家も、そのうちボロボロになっちゃうの?」
「僕のお家は、まだ傷がついたり壊れたりした事は無いなぁ」
ナメオは自分のお家がボロボロなのは恥ずかしいかな? と思ってしまいました。
「でもね、ちょっと傷がついでもヒビが入ったりしても、自分でなおすことが出来るんだよ。だからナメオもこのお家なおせるんじゃないかなぁ」
デンデンは自分のお家を撫でながら言いました。
とりあえずお家に入ってみよう…
ナメオはボロボロのお家に、そろりそろりと足を入れていきます。
顔までお家に入ってみました。
初めての自分のお家です。
背負って歩き出そうとしましたが、するりと抜け出てしまい、背負うことが出来ません。