『名探偵・おにぎりドラゴン』と華麗なる戦い
「落ちた……」
先輩方の部活引退により、たった一人となってしまった文芸部の部室で、私はガックリと肩を落とす。
小説サイト『小説家になるでござる!』。略して『ござる』。
そのサイト主催の公募である『ござコン』。その一次選考にも私の作品は通過していなかった。
私史上最高の出来だったというのに。
「どうした田中。 そんなに肩を落として」
「せ先輩ッ?! どうしてここに!」
「俺もう推薦で進学先決まってっし。 暇つぶしに」
東堂先輩は私の憧れの人であり、それ以上に妬み嫉みの対象でもあった。
なんと先輩は、書籍化作家様なのだ!
しかも左右対称である『田中』に比べ同じく対称な筈の『東堂』のなんと華やかな事か。そのままPNとして使えるのに『フォーミュラー☆東堂』などというふざけたPNなのも妬ましい。
私は素早く鞄から取り出したハンケチを、これみよがしに噛みながら先輩に対峙した。
「いいご身分でしゅわね~……ふぁっ!?」
先輩は胸から取り出した万年筆をシュッと投げつけると、私の噛んでいたハンケチを弾き飛ばした。黒板に刺さる、万年筆。
「なん……だと!?」
「フッ……これが書籍化作家の力だ。 さあ、悩みを言うがいい……この書籍化作家、フォーミュラーが全て解決してしんぜよう」
「──ぬかせ! 万年筆手裏剣如きで書籍化作家の代表みたいな顔をしおって!!」
「ふふ、口ばかり回りおるな。 アマチュア風情が」
アマチュア風情──その言葉は私の怒髪天をついた。
「私とて伊達に文学少女ではないわ!」
「ほほう……」
今こそ必殺技を出す時……私はアナログで原稿用紙に手書きした第一稿の束を取り、円を描くようにばらまいた。
「必殺・文学少女原稿乱舞!!」
ばらまいた原稿用紙が目くらましとなる中、素早く宙に舞った私のローリングソバット。
これにはいくら書籍化作家の先輩とはいえ、一溜りもない筈!しかし──手応えは全くない。
「ふっ……それは……残像だ!」
私は崩れ落ちた。
必殺技が通じなかっただけでなく、『一度は使ってみたい台詞』を言われてしまうなんて。
「そうか、選考に落ちたか。 見てやろう」
渋々私は原稿を拾い集め、先輩に見てもらう事にした。
「阿呆かああああ!! もう少し需要を考えろ!」
「ああっ!! 酷い!!」
──数秒後、私の最高傑作『名探偵・おにぎりドラゴン』は再び宙を舞った。
☆☆☆☆☆(´・ω・`)ショボ-ン
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★★★★★(*´∀`*)ヤッター♡