8 謎ジョブの正体が判明しました。それからどうしてそんなに驚くの?
俺達は最難関ダンジョンと呼ばれるデッドアビスへとやってきていた。ここはその1層だ。
「ここがデッドアビスなのですね」
クルルの言葉に頷く。
「そうだね。ここがデッドアビス。正直このメンバーで来るのも不安はあったが俺は思う。強い敵と戦った方が強くなれる、とね」
俺がそう言ったその後だった。
「ゼノーンあれ何?」
そう聞いてきたのはルゼル。
「ん?」
俺も首をひねって彼女が指さした方向を見た。
すると、岩陰にうねうねと動いている黒い塊が目に入った。
「うわー動いてますー」
「何だこれは?見たことがないね」
それを見てクルルとリリスもそう口にする。
「俺も見た事がないな」
このダンジョンにはガバル達と来たことがあるがこんなものを見るのは初めてだった。
どの層にもこんなものはなかった。
「よし、とりあえず採取してみよう」
採取してみた。すると
右上にウィンドウが現れた。
【黒い塊を手に入れた】
と起きたまんまのことが表示された。
それは分かってるんだけどさ。
この黒い塊が何なのかを知りたいんだけどなぁ。
そう思ってアイテムポーチを見て見たら
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→黒い塊
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とあったので細かく見てみる。
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謎の黒い塊。一部のジョブのみ使用できるアイテム。
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とだけ表示されていた。
どういうことだ?
首を捻りながら歩いていると
「いらっしゃい」
「うおっ!何だこれ!」
いきなり声をかけられたのでそちらを見たら
「カエルが喋ってます?!」
クルルの言う通り人型のカエルが風呂敷を広げて商人のように真ん中で物を売っているのだ。
「何だこれ。こんなモンスター見たことないぞ」
俺がそう言うと
「おやおや、この店に立ち寄る権利があるのはお嬢ちゃんだけなようだ。悪いがここは本来ならばモンスターのみが使える店だ」
カエルがそう言ってルゼルを指さした。
「え?!私だけ?!」
「あぁ、見ていきなさい」
それで気付いた。
あの謎のジョブってここで物を買えるようになるジョブなのだろうか?
たしかに商人というジョブだもんな一応。
そう思って俺も色々とアイテムを物色させてもらう。
当然買えないようだが。
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・体力最大値アップの薬
・魔力最大値アップの薬
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などがあった。
殆どの物はさっきの塊1つで買えるようだ。
しかしここには珍しいアイテムがあるな。
最大値アップの薬など見たことも聞いたこともない。
「ふっふっふ」
それを見て彼女はそう笑うと。
「ではこれにするの」
そう言ってルゼルが何かを買った。
「毎度あり。またよろしく」
そう言ってカエルは消えていった。
神出鬼没なのだろうか?
そう思いながらルゼルに聞いてみる。
「何を買ったんだ?」
「これ。ゼノンにあげるよ」
そう言って何かを渡してきたルゼル。
「俺に?」
「う、うん。初めてはゼノンがいいから//////」
そう言って赤面するルゼル。
何の話だよと思いながら受け取ると。
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・曇天穿つ聖なる浄弓
レア度SSS
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というよく分からない弓だった。
「何だよこれ?しかもレア度何これ」
「え?分かんない。ゼノンって弓使うみたいだから弓買ってみたんだけど」
「そうなんだ。とりあえずありがとう」
そう言いながら弓を構えてみた。
そして矢を放つ。試し打ちのつもりだった。しかし
その瞬間
ズキュゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!!
「………」
声が出ない。
俺の立っている場所から矢は真上に上がり、全方位に分裂、やがてそれが雨のように全域に降り注ぎ。
ウィンドウが表示された。
───────
シャドウウルフレベル95を倒しました。
シャドウウルフレベル88を倒しました。
シャドウウルフレベル89を倒しました。
シャドウゴブリンレベル92を倒しました。
シャドウゴブリンレベル87を倒しました。
・
・
・
───────
と以下ログが続いており最終的に
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経験値986,523を獲得しました。
エネミー殲滅ボーナス100,000
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と表示されて
レベル15→87になった。
そしてそれはクルル達も同じで
「え、何?!今の?!」
横で驚いているルゼルのレベルも1→78まで上がっていた。
「何?この武器」
「流石ゼノン様です!こんな事まで出来てしまうなんてやはり天才なのですね!」
クルルははしゃいでいるが完全に武器の性能だ。
「何なんだこれ」
俺は思わず武器の説明を見ていた。
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・曇天を穿つ弓。人の身では1度しか使えず使用後は消滅する。
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そう書かれており
パリーン。
と音を鳴らして砕け散った。
「あぁ!折角の武器が!」
ルゼルは名残惜しそうに見ているが
「下手をすればダンジョン壊れそうだしね」
あんな威力の弓連発してるだけでダンジョン自体が崩壊しそうだし消えてくれて正解だと思った。
「ぐぬぬー」
ルゼルはしばらくの間そうやって悔しそうにしていたが
「あれ?あれは」
そう言って岩の陰に歩いていった。そこで見つけたのは
「ゼノン!また黒い塊見つけたよ!」
そう言ってニコニコ笑顔で戻ってくるルゼルだった。
暫く店を探してみたが見つからなかったので次の階層へ移動した。
2階層にたどり着いて暫く歩いていた俺達。
「た、大変です!ゼノン様!」
先行していたクルルが戻ってきて俺にそう報告する。
「どうしたの?」
「この先から100を超えるモンスターの大群が!」
「それは大変だね」
そう言いながら弓を構えた。
弓をギリギリと引く。
ギリギリまで待つ。
今モンスターが見えた。
「距離500メートルくらいだよ!ゼノン、あの数は無理だ!一度撤退しよう!て、さっきから何で弓を構えてるんだ?こんな距離当たるわけがないだろう?!それに距離があるせいで威力が下がって有効打にならない、1ダメージも入らないはずだよ!やめるべきだ!」
何やらリリスが言っているが弓を構え続ける。この距離で当たらないって何を言ってるんだろう?普通に当てられる気がするけど?
それとも何か理由があって撤退したいのだろうか?まぁいいや。俺は撤退する必要性を感じないし。
それに確かに普通に当てては有効打にならないかもしれない。でもどんなモンスターだって柔らかい部分が存在する。
エグイことかもしれないが眼球だ。ここは大抵柔らかい。
その柔らかい部分から脳を狙い破壊し生命活動を停止させる。
ここだ。
ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!
丁度100発放った。
それと同時に聞こえるのは
ズゥゥゥゥゥゥゥンと何かが沈む音。
その何かは言うまでもなくモンスターの大群だった。
「よし。当たったみたいだな」
呟きながら構えていた弓を下ろした。
その瞬間表示されるウィンドウ。
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経験値1,000,325を獲得しました。
エネミー殲滅ボーナス100,000。
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レベルが上がりました。
ゼノン
レベル97
クルル
レベル85
リリス
レベル99(MAX)
ルゼル
レベル83
それを見てから皆に目をやって歩き出そうとしたけど
「皆俺の顔だけ見てどうしたの?俺の顔に何か付いてる?」
誰も動かない。
「な、何これ!?」
ルゼルがそう呟いた。
「俺なんかやっちゃったか?」
そんな驚くって何かやってしまったか?
「そうだよ!やっちゃったよ?!」
「すまない。何をやったのか分からないんだが。あ、もしかして討伐したかった、とか?」
ラストアタックボーナスと呼ばれる物があるしラストアタックを1人でかっさらったのが不味いのかもしれない。
「な、なぁゼノン。その武器は?も、もしかしてレア度Sの武器だったりするのか?」
リリスにおそるおそるといった感じに聞かれて
「え?ただのEランクの木の弓だけど?俺もこのダンジョンに挑むにあたって武器変えた方がいいかなぁって思ったんだよね」
でも、俺がそう答えてから気付いた。
「あ、それは俺がこの最高難易度って呼ばれてるダンジョンにEランク武器で来た事についての皮肉なのかな?それならごめん」
素直に俺が悪いのかもしれないと思って謝っておく。
でも俺には武器を買うお金すらなかったしリリスには武器を早めに回収させたかったという思惑もあった。
そう思いながら顔を上げると
「「「え、えぇぇぇぇぇぇ?!!!!!」」」
とクルル達が叫び出した。
どうしたんだろう?