6 また新たな仲間ができました
「そう言えばリリスはパーティに所属していたんじゃないのか?俺のパーティに入って大丈夫なのか?」
Sランク冒険者というとどのパーティにも欲しがられるしフリーでいるということはほぼほぼ無いからこそ気になったのだが。
「ん、あぁ、私はソロだよ。それに」
言いにくそうにしているが何とか口を開いたらしい彼女。
「デッドアビスで剣を落としてしまったんだ。だからそれを知っているパーティからの勧誘は当然来ないんだ」
「剣を落とした?!」
思わず聞き返した。
「あぁ。私はあの剣でないとダメなのだが落としてしまった。今の私はせいぜいCランク程度の力しかない」
「な?!」
突然明かされた事実に驚いてしまった。
「黙っていてすまなかった。ただ話せば追い出されると思って」
「別に追い出さないけどそういうことは言って欲しいな」
「すまなかった」
「謝らなくていいよ」
そう言って俺はリリスに目をやった。
「だから次は落とさないようにほら」
そう言ってリリスは自分の剣を見せてくれた。
その持ち手の部分には鎖が繋がっていてそれが腰の部分に繋がっていた。
「あぁ、分かった」
「むむ、何だか馬鹿にされている気がするぞ」
「いや、してないって」
出会ってから頼りになると感じていたリリスだが俺の中で頼りなさそうという評価に変わった。
「だからその、良かったら回収に付き合って欲しい」
「別にいいけどさ」
「ほんとか?!」
嬉しそうに俺の両手を掴んでくる。
それを見て対抗するようにクルルは俺の腕にしがみついてくる。
何の戦いをしてるんだお前達は。
「恩に着る!ゼノン!」
この調子では先が思いやられそうだな。
そう思いながら会話を先に進めることにした。
「デッドアビスに挑戦するに当たってだが、ある程度ジョブというものを決める必要がある。タンク役、これは囮でも構わない。とアタッカー、ヒーラー、支援職という4つが定石の構成だ」
そう言ってクルルに目をやる。
「俺は支援職、この情けない剣士がアタッカーとしてクルルには囮をやってもらいたい」
「囮、ですか?」
「うん。先日のテストの時動きを見てたけどアサシンとして見た場合の動きとしてはいいところだったから」
流石にタンクとして使うつもりは無い。
ならばアサシンとして囮役になってもらう。
タンク役も囮もターゲットを受けるという役目は同じだ。
続きを話そうとしていたその時だった。
「となると後はヒーラーだね!」
「そうそう。ヒーラー」
誰が言ったのか分からなかったがそう続いていた。
で、答えてから聞き覚えのない声だということに気付いて聞こえた方に目をやった。
「おっと!こんなところに可愛いヒーラーが落ちている!そして仲間になりたそうにこちらを見ている!」
俺の対面にその子はいた。
しかし何も見ていないようにクルル達に目をやってから話の続きをする。
「ま、というわけでヒーラーをだな」
「そうだね。ヒーラーが必要だ」
「そうですね。ヒーラーですねー」
俺の言葉に続くリリスとクルル。
「え?!そこはこの可愛い可愛いルゼルちゃんでフィニッシュの流れでしょ?!」
そんなことを口にしたルゼルという少女。
黒髪にちょこんと頭に乗ったとんがりボウシに黒いマントという如何にもな風貌だった。
「その前にどこから湧いてきたんだ?」
「受付の人に空いてるパーティないかな?って聞いたら丁度いいパーティがいるよ!あそこ!って言われたから来たの。よろしくね!」
そう言って笑顔を振りまく少女。
「よ、よろしくお願いしますルゼル様」
クルルは既によろしくする流れになっていた。
「まぁ来るものは拒まずというやつだな」
そう言って俺はルゼルに目をやった。
「いいよ。でもついでにステータスも見せてくれないかな?」
「皆から先に見せてよ」
そう言われたので俺達は自分達のステータスを公開した。
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名前:ゼノン
ランク:S
レベル:15
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俺はさっきのテストの結果を評価されてSランクになっていた。
続くのは残り二人のステータス。
───────
名前:リリス
ランク:S
レベル:45
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───────
名前:クルル
ランク:E
レベル:5
───────
それを見てルゼルが笑う。
「レベル5てwよわw」
「仕方ないだろ。俺もクルルも始めたばっかなんだから。それよりルゼルのを見せてくれ。ステータスオープン」
「ちょ!勝手に見ないで?!」
───────
名前:ルゼル
ランク:Z
レベル:1
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「何だこのステータス」
ランクZってなんだ?
「うぐっ……」
机に突っ伏すルゼル。
続いて細かくステータスを覗く。
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体力:1
魔力:1
防御:1
攻撃:1
ジョブ:怪しい商人
───────
「ヒーラーですらないじゃないか?!そもそも何だよこのジョブ?!」
「そんな!ヒーラーじゃないだけで私を捨てるの?!昨日あんなに激しかったのに!あんなに愛してるって言ったのに!」
言ってないよ。
どこの世界の話だよ。
それに
「1回受け入れたんだ。そんな簡単に追放なんてしないよ」
「ほ、ほんとに?」
ビクビクしている少女。
「ほんとだよ。だから変なこと口にしないでくれ」
正直元々泥舟みたいなものだ。
多少泥が積み重なっても問題ないだろう。
それにこういうパーティを活躍させる。
それが腕の見せどころな気がする。
「という訳でよろしくなルゼル」
そう言って手を差し出すと
「このルゼル。貴方の優しさに感銘を受けました。この身全てを捧げましょう」
「捧げなくていいから」
そう答えて握手してから再度目を合わせるとルゼルがポッと顔を赤らめた。
「あ、その……契りの証拠に今夜貴方の部屋にでも」
何を言ってるんだお前は。
とにかくメンバーはとりあえず揃ったわけだな。
「とりあえず宿に戻ろうか。これからの事について話し合おう」