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28 神業ですか?

 デッドアビスから戻ってきた俺たちは回収した素材をギルドに提出していた。

 多くは鉱石。


 10層などのいわゆる低層と呼ばれる場所のものと50層以上のものは質が違った。


「こ、これはすごい鉱石ですね」


 ギルドに所属している鑑定士が呟いていた。


「え?そんなに?」

「は、はい。こんな鉱石見たことがありませんよ。かなりの硬度を持っています。Sランクの冒険者数人で攻撃しても恐らく壊れないと思いますがどのようにして採取したのですか?」

「あーそれね。確かに抜けなかったね」


 普通の鉱石は引っ張ると大抵は普通に外れるのだがこれは普通ではなかった。

 だから


「壁の方を壊したよ」

「か、壁をですか?!」


 そう言って両手をカウンターについて乗り出してくる彼女。


「え?そうだけど。俺もしかして怒られてる?ご、ごめん。やっちゃだめだったのかな」


 とはいえダンジョンの壁を壊してはいけませんなんて話は聞いたことがない。

 だから壊してきたんだけどダメだったのだろうか?


「い、いえ、問題ないと思います」


 そう言っている彼女。

 そうか。なら良かった。


「というかダンジョンの壁って壊せるんですか?!」

「壊せたよ?」


 俺はそう言って続ける。


「耐久値999,999だったけど壊せたよ」

「ど、どうやって壊したんですか?!そんな数値!」

「え?普通に弓を撃って」


 そう言って俺が使った魔力で作る矢を作り上げた。

 前と同じで先端が別れて槍のようになるあれだ。


「これ先端が100万本に別れてて1ヒット1ダメージだから1発で壊れたよ」

「え?わ、私には1本の矢にしか見えないのですが」


 うーん。

 そう思って鉱石を返してもらうと俺はそれに向かって矢を振りかざした。


 ダメージ999,999。


 鉱石にそれだけのダメージを与えた。

 しかし壊れない。

 やっぱり耐久値が高いみたいだね。

 根元だけ捨ててそれ以外を採取しようとダンジョンで試したが出来なかったから壁の方を壊したのだ。


 と、少女に目を戻したが


「な、何ですかこのダメージ」

「え?1ヒット1ダメージだから」


 そう続けようとしたが少女はこう口にした。


「あ、あの、壁を壊すのはいいのですが、ダンジョンは壊さないでくださいね?絶対に攻略するの面倒だからって壊さないでくださいね?!」

「え、うん」


 そんなに言われなくても壊さないよ?

 どうしたんだろう?



 ギルドへの報告も終わり今日の活動を終えた俺は1人で酒場に来ていた。

 クルル達はパフェを食べにいった。

 俺も誘われたが甘いものは得意では無いので断ってこっちにきていた。


「うーん。いい感じの依頼はないか」


 小遣いでも稼ごうかと思ってクエストボードを見ていたが特にいい感じのものがない。

 今からいっても終わらなさそうなものばかりで


「宿に帰るか」


 そう思って帰ろうとしたその時だった。


「あ、あのゼノンさん、ですよね?」

「ん?」


 後ろからの声に答える。

 そこにいたのは少女だった。


「え、そうだけど」

「よ、良かった」


 人違いじゃないことに安堵しているらしい少女。


「君は?」

「私はニーナと言います」


 そう名乗った少女。


「今お時間空いていますか?」

「空いてるけど」

「あ、あの。私に支援職としての極意を教えてくれませんか?」

「え?俺に?」

「は、はい」


 そう頷く少女。

 うーん。別にいいけど


「上手く教えられるか分からないよ?」


 その返事に頷くニーナを連れて草原に向かうことにした。

 話を聞く限りSランクになったけどまだ自信がないから俺に見て欲しい。というお願いだった。

 久しぶりにナイフを握る。


「俺が前に出るからいつも通り援護してくれる?」

「は、はい!分かりました!」


 いい返事をしてくれたニーナに頷いて俺は前に出た。

 相手はゴブリン。

 俺がどんな風に動いているのかを教えて欲しいだけだから敵は何でもいいらしい。


 ゴブリンの攻撃が見えてそれを躱す。

 しかし援護射撃はない。

 その後も色々と試して見たが俺がやっているようなことはやってくれなかった。


 ニーナがやっていたのはただ俺が避けて空振りさせた所に矢を打ち込む。そんなことだけだった。


 俺も支援職として正しい立ち回りをしているのかは分からないからとりあえず助言程度に留めておくけど。


「ごめん。気になったところを言わせてもらうけど敵の攻撃は隙を狙うんじゃなくて中断させた方がいいよ」


 そう伝えると


「ちゅ、中断?」


 不思議そうな顔をするニーナ。

 俺は思い出しながら口にした。


「俺が前に出てたよね。あの時ニーナは攻撃後の隙を狙ったよね」

「は、はい」

「俺が避けられなかった時の事を考えてあぁいう場面は中断させた方がいいよ。じゃないと無駄なダメージを受けてしまうことになる」

「え?」


 更に不思議そうな顔をするニーナ。

 すごく呆然としていた。


「あれ、何でそんなに不思議そうな顔をするの?俺何か変なこと言った?」

「え、は、はい。言ってると思います。というより言ってることがよく分かりません」


 え?そうなの?どの辺が分からないんだろう。


「ごめん。どの辺が変だった?」

「そもそも攻撃の中断って何ですか?」

「例えば今のゴブリンなら俺を攻撃するのに腕を振り上げる。それから振り下げるって2段階のモーションがあるんだけど振り下ろす前に攻撃することによって攻撃の中断ができる」

「え?」


 呆然としたような顔をするニーナ。


「ん?」

「な、何を言ってるんですか?そ、そんなこと出来るわけないじゃないですか」

「あ、ごめん。俺の立つ場所が邪魔だった?」


 ちゃんと射線が通るように俺は動いていたはずだけど邪魔だったかな?


「そ、そうじゃなくて。……そんな一瞬の隙に攻撃出来るわけなくないですか?」

「え?」


 そう言われてそんな反応しか出来ない。

 出来ないなんて言われるとは思っていなかった。


「き、基本じゃない?これ」

「い、いえ!私は誰に聞いても攻撃後の隙を狙えと言われていましたよ?前衛が攻撃を避けるから空振りで出来たその隙を死んでも逃すなって」

「え?」

「は、初めて聞きましたよ?!中断させる、なんて。そ、そんなこと出来るわけないじゃないですか!さっきのゴブリンだってそうです。腕を振り上げてから下ろすまでに攻撃って神業じゃないですか!」


 そう言ってくるニーナだが


「え?これが普通の事じゃないの?」

「ふ、普通じゃありませんよ?!」


 そう言われるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無自覚チートが段々とつまらなくなって来た
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